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4話
しおりを挟む柳が穴へと吸い込まれて行ったのを見送った橡は、すぐに元いた位置にまで戻り、背中の大きな翼を急いで畳んだ。
そして橡が再び懐中時計を確認し、閉じたタイミングで真っ白な神殿の一部がぐにゃりと歪み、そこから白い服を身にまとったグレーの髪の美しい男が現れた。
体のラインがハッキリと分かるスリットの入った白いチャンパオのような、
しかし見ようによってはキャソックにも見える不思議な服を纏い、白銀のストラを下げた男は、ふわりと橡の前に舞い降りると、その琥珀色の瞳を動かしてなにかを探すような仕草をした。
「あれ、コチラにお招きした方がいらっしゃるはずなんだけど、まだ来てないのかな?」
『……お客様でございますか?』
橡は男の言葉の指す人物が誰なのかすぐに理解したが、敢えて戸惑ったような声を出した。
こんな時ばかりは鴉頭で良かったと思わざるおえない。
表情の読みにくい鴉の顔を、男は穏やかな笑顔で覗き込んでくる。
「橡…ほんとうに知らないのかな?」
『ええ。恐れながら、私はずっとここで待機しておりましたがお客様と思わしき方はお越しになられておりません』
試すような口調と視線で橡にじわじわと距離を詰めてくる美しい男に、橡は無意識に固く、背中の翼をすぼめた。
表情の読めない橡に、男は諦めたのかパッと橡から離れると、くるりと踵を返す。
男が踵を返した瞬間、男の服はあっという間に上質な執事服へと変わる。
「まぁ、来てないならしかたないね」
男は革靴をコツコツと鳴らしながら橡から一旦離れると、再び橡の方を振り返って不敵に微笑んだ。
「次は逃がさないけどね?」
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