俺達のヴォーカルが死んだ

空秋

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4話

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生徒指導室からやっと解放された町田は、廊下で待機していた朝陽を見て相変わらずの生意気な笑顔を浮かべる。



「…お前…町田の内申点傷付けてそんなに楽しいか?」


「あ?だってコイツ、死のうとしてたんだぜ?今更内申点なんて気にしねーって」


隣でため息を着く朝陽に、町田の顔をした晶は昨日染めたての髪に黒い頭髪スプレーをかけられたというのに楽しそうに笑っていた。


「まあ…そうかもしれねーけど…ソイツの親は?」


「?コイツの親?ああ、昨日会ったけど別になんも反応なかったよ」


「は!?なんで!?そんな過激なチェンジ、気付かない訳ないだろ!?」


「と、思うだろ?けど気付かなかったんだよな~。んなことより、透ピ持ってね?全部ピアス取られちった」


「取られちったって…お前ピアスまで開けたのかよ…体返した時、ソイツはどんな反応するんだか……」


「とか言ってる朝陽だって派手髪ピアスじゃん。なんで俺だけ急に呼ばれた?」


「そりゃあ、昨日まで校則厳守してた奴が突然そんななったら流石におかしいと思うだろ…」


「ふーん、の癖に一番大事なことには気が付かないのな」


「一番大事なこと?なんだよ」


晶の意味深な言葉に、朝陽は首を傾げた。


「コイツ…町田航平はどうやらイジメられてるらしいわ」


「は?イジメ?なんで?」


「知らね。それに加えて親からはネグレクト。そりゃ死にたいわな」



「……なんだよそれ……意味わかんねー…」


衝撃を受ける朝陽を横目に、晶は通りかかった調理室へとおもむろに入っていく。


「おまたせー、いんちょー遅れてごめんー」


「は?おい、晶?なんで料理部なんかに?部活はどーすんだよ、暖も樹も待ってんだぞ?」


「あー、ごめん今日の夕飯作ってから行くわ」


「はあ?」


朝陽の呆れる声に、晶は改めて朝陽を振り返った。


「帰っても飯ねーんだわ。かと言って金もねーし。だからここで作ってく。いーだろ?新譜は暖に渡してあっから先に始めてろよ。ヴォーカルはお前な」


「だから…その件も俺はまだ納得してないんだぞ」


食い下がる朝陽に、晶は三角巾を頭に付けながら「まあまあ、とりあえず今は俺の飯問題先だから」とあっという間に朝陽を調理室から追い出してしまった。




町田航平。


晶は自分が死んだその日に始めて彼を認識した。


青い血管が透けるほどの白い肌に、癖のない真っ黒な髪と目。


黒い目は大きく、白目の面積が極端に少なく、じっと見つめられると思わず目を逸らしてしまうほどの眼力があった。



男にしては薄い体だが、小柄という程小さくもない。


晶は183cmほど身長があったが、町田は179cmとまあまあの高さな為、視点の高さにさほど違和感はない。


町田の家は築25年ほどのアパートで、母親と二人暮し。


母親は水商売らしく、晶が町田の姿で初めて町田の家へと帰った日も派手に着飾って家を出て行った。


家の中は物が散乱しており、その散らばっている物全てが母親の物だった。


(コイツ、学校にも家にも居場所ないんだな)


晶は散らかった部屋を片付けながら、普段町田がこの家で生活している風景を想像した。
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