ホワイトアフターデー

春山 一貴

文字の大きさ
7 / 7

第七話

しおりを挟む
 今すぐにも二人の胸からその胸を叩きつけ痛ませているものが出てきそうなほど、緊迫した空気が漂っている。山下は意を決して舞桜の瞳の奥に心の声を響かせた。

「実は俺…、前からずっと木下のこと気になってたんだ」

「…えっ。」

「俺、木下のこと、好きなんだ。」

「え、、山下くん…」

「初めて見たときから可愛いなって思ってた。去年同じクラスで、ずっと同じ教室で過ごしてたのに緊張して話しかけられずにいて、ラインも交換してなかったから連絡もとれないし…。二年になってクラスが別々になったときは、正直寂しかった。」

「…私も…。」

「…ほんと?良かった…、同じ気持ちだったんだ」

「私…まさか、山下くんがそんな風に思ってくれてたなんて…」

「やっぱ伝わってなかったよな…笑」

「私のこと知ってるか…それさえ不安で」

「そんなわけ無いよ!!」

「えっ…」

「そんな訳、ないよ。ずっと知ってたよ、木下のこと。」

 ドアの向こうでは、今にも教室に入って説教したそうにうずうずしている愛奏がいた。何を勿体もったい振っているの、早く付き合って欲しいと告白しなさいよ、と心の中で何度も叫んでいた。とその時…


「木下、」

「うん」

「もし良かったら、今日一緒に昼飯食べない?」

「……。えーーーー!!」

 廊下で悲鳴が聞こえた。愛奏だ。彼女は咄嗟とっさに近くの柱に背中をつけて隠れた。やばいやばいと口だけを動かしながら。

「だ、誰かいるのかな…」

 不安そうに舞桜が呟く。山下は焦りを必死に誤魔化しながら、一度廊下の方をじっと見つめ、再び彼女の方を向いた。

「大丈夫、でも、そろそろ教室に戻ろうかな。」

「うん、わかった。」

「昼休みに中庭で待ってるから良かったら来て。じゃあな」

 そう言い残すと山下は廊下の方へ歩いていった。

「あ…」

 絞り出すように出した舞桜の声が彼の体を振り向かせた。

「校舎裏でも、いい?…恥ずかしいから」

 山下は爽やかで優しい溜め息を軽く吐いて、彼女の緊張をそっと解いてあげるかのように微笑みを浮かべ、良いよと返事をした。

「じゃあ、理科室の裏で待ってる。」

「うん…ありがとう…。ちゃんと行くね」

「そっか…!! じゃあまたあとで!」

「うん…!!」

 緊張と喜びと初々しさの混じった空間が二人の距離が遠くなるにつれて、広がって行く。それは決して薄れることなく引き伸ばされることもない。ただ、所々濃淡が見え隠れするところがいかにも青く澄んだ恋に揺れる二人の心が互いに寄り添おうと不器用ながらも必死にもがいているようだった。

 そのあとすぐに、山下と愛奏は廊下で対面する──。

「あんたやるねー笑」

「予定通りには行かないもんさ。」

 二人は見つめ合い、お互い思わず嬉笑し、軽く握手を交わした。山下は愛奏に礼を言い、出来るのなら最初から一人でやれと愛奏は冗談で返した。

「今度、三人で遊びに行こうぜ」

「それ、舞桜のほっぺがぷっくぷくになるやつだよ笑」

「え、どういうこと?」

「山下くん。笑 もうちょっと女心分かった方がいいよー」

「えー…!! 三島さん、教えて…」

「あの子に教えて貰いなさい!」


END
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

☆MIKI☆
2019.03.16 ☆MIKI☆

面白かったです!
よかったら、続きかいてください!

2019.03.16 春山 一貴

読んで頂きありがとうございました!
続編、良いですね!リクエストありがとうございます!
夏特集のときに書いてみようと思います✋
(夏休み、夏祭り、林間学校、海、etc...)

解除

あなたにおすすめの小説

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。