1 / 53
第1話 退職願
しおりを挟む
「ベテランや、おぬしみたいな中堅どころの仕事はあるんだよ。
だけど若い連中の仕事がないんだ、全くないんだ。」
雨の中たどり着いた会社近くの喫茶店の中、上司の業田課長が会社の現状を話していた。
「それで、おぬしの話は?」
話が一段落したときに、俺に振ってきた。
「実は7月15日付けで退職させていただきたいと思いまして」
15日は給料の締め日だったので、この日なら経理が少しは楽かなと思って選んだだけで、とにかく1日も早く辞められればいつでもよかった。
セーラムライトの煙をはきだしながら、業田課長がつぶやいた。
「まあ、しかたがないか」
30歳を過ぎた男が退職を願い出るという重要な話だ、喫茶店でする話ではない。
しかし徹底した経費削減で社内には会議室などなくなっていた。
お互いに淡々と穏やかに話は続き、7月25日で退職することになった。
「まあ、おぬしの人生のことだし今の状況だと慰留するといってもな」
業田課長の言葉の中に、今の、そして今後の会社の見通しの暗さが見えていた。
俺は紫煙の向こうに入社した10年前を思いうかべていた。
入社当時、社員数はまだ50人程度と今の半分以下でコピー機も一台しかなかった。
ソフトウエア開発業のくせにコンピュータもなかった。
いや、正確にいえば一台だけあった。
それは漢字は全く使えない上にOSも貧弱で、英数字のテキスト入力程度しか使い道のない使えない業務用パソコンだった。
ワープロも導入されておらず、書類は全て手書きだった。
俺が入社して2年後にワープロ専用機を導入、ようやく会社の文書が手書きからワープロに変わった。
その第一号が給料袋に同封されていた忘年会のお知らせで、文末には「このお知らせはワープロで作りました」と誇らしげに書いてあった。
やがて業務用パソコンも漢字が使える機種に買い替えて、遅まきながら給与計算もパソコン処理になった。
市販ソフトを買ってカスタマイズしたのはいいが給料日までにプログラムミスを取り切れず、残業単価が間違っていり会社名の後ろが文字化けして!マークが印字されていた。
ソフト屋がカスタマイズ失敗とは情けない話だが、それでも嬉しかった。
ようやく会社らしくなってきたことが嬉しかった。
だけど若い連中の仕事がないんだ、全くないんだ。」
雨の中たどり着いた会社近くの喫茶店の中、上司の業田課長が会社の現状を話していた。
「それで、おぬしの話は?」
話が一段落したときに、俺に振ってきた。
「実は7月15日付けで退職させていただきたいと思いまして」
15日は給料の締め日だったので、この日なら経理が少しは楽かなと思って選んだだけで、とにかく1日も早く辞められればいつでもよかった。
セーラムライトの煙をはきだしながら、業田課長がつぶやいた。
「まあ、しかたがないか」
30歳を過ぎた男が退職を願い出るという重要な話だ、喫茶店でする話ではない。
しかし徹底した経費削減で社内には会議室などなくなっていた。
お互いに淡々と穏やかに話は続き、7月25日で退職することになった。
「まあ、おぬしの人生のことだし今の状況だと慰留するといってもな」
業田課長の言葉の中に、今の、そして今後の会社の見通しの暗さが見えていた。
俺は紫煙の向こうに入社した10年前を思いうかべていた。
入社当時、社員数はまだ50人程度と今の半分以下でコピー機も一台しかなかった。
ソフトウエア開発業のくせにコンピュータもなかった。
いや、正確にいえば一台だけあった。
それは漢字は全く使えない上にOSも貧弱で、英数字のテキスト入力程度しか使い道のない使えない業務用パソコンだった。
ワープロも導入されておらず、書類は全て手書きだった。
俺が入社して2年後にワープロ専用機を導入、ようやく会社の文書が手書きからワープロに変わった。
その第一号が給料袋に同封されていた忘年会のお知らせで、文末には「このお知らせはワープロで作りました」と誇らしげに書いてあった。
やがて業務用パソコンも漢字が使える機種に買い替えて、遅まきながら給与計算もパソコン処理になった。
市販ソフトを買ってカスタマイズしたのはいいが給料日までにプログラムミスを取り切れず、残業単価が間違っていり会社名の後ろが文字化けして!マークが印字されていた。
ソフト屋がカスタマイズ失敗とは情けない話だが、それでも嬉しかった。
ようやく会社らしくなってきたことが嬉しかった。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる