5 / 63
「あまがみのみこと」第五章:王族の安らかな旅立ち
しおりを挟む
「あまがみ」は案内されるまま城の最深部、幾重にも厳重に閉ざされた扉の向こう息を潜めたかのような最も静かな一室へと足を踏み入れた
そこは豪華な調度品で飾られていたが奇妙なほどに空虚で栄華の気配はなく
ただ淡く沈む死の影が薄く漂って生気の抜けた空間に感じられたベッドに横たわる王族は
やつれ果てた顔色で、もはや意識もなく呼吸は糸のようにか細く頼りなく時折
全身を震わせて激しい痙攣に見舞われていて痛ましい
その傍らに立つ影は先ほどすれ違った兵士で黒き瞳の男がただ一人
固い表情で今は何ひとつ為すことができず立ち尽くしていた彼の表情は苦悶と無力感が刻まれる様に彩られ瞳に宿る深い憂いを湛えていた
それは王族への深い心配からくるものなのだろう
この王族は彼にとって、ただの主君以上の忠誠と絆を越えた何か家族にも似た存在なのだろうと見受けられた
「あまがみ」は深く息を吸い込んだ老人会の時よりも何倍もの鉛のような重い空気を感じる胸に大きな重圧を感じながら
けれど目の前の苦しみを見過ごす事など出来はしなかった覚悟を決め彼女は王族の枕元にそっと歩み寄り跪き
この人の苦しみを少しでも和らげてあげたいと
そう強く願い両の手を組んで祈るように目を閉じ静かに、そして慈しむように歌い始めた
「時が止まるまで~君を忘れない~」
その瞬間、歌声はひそやかな祈りのように始まり空気を震わせ部屋に響き澄み渡ると先日の老人会の時と同じように柔らかで温かい光が「あまがみ」の体から溢れ出し薄靄のように病室を満たす
その光は、まるで黎明の霧を溶かす陽光のように霧が晴れ王族の痩せ細った体を優しく
そして柔らかく包み込んだ、それは、これまで目にしたどの光よりも強く
しかし慈愛に満ちた輝きだった苦痛に歪んでいた顔の筋肉が
ふっと緩み始め表情は驚くほど速く穏やかになっていく荒かった呼吸は次第に静かな潮のように整い口元には穏やかな淡い微笑みが浮かんだ
それは深い眠りに落ちたというよりは、この世の苦しみから解き放たれ
まるで遠い安らぎの大地に迎えられ満ち足りた表情で
あまりにも安らかな旅立ち魂の帰還それは星に帰っていった
「あまがみ」は限界だった歌い終えると同時に糸が切れたように全身の力が抜け膝が崩れ落ちようとし倒れ込んだ意識が遠のき闇に沈みかけた
その時そばにいた、あの深き瞳を持つ兵士が素早く力強く
しかし優しい腕で彼女を支えるのを感じた彼の瞳は王族の死に涙を流しながらも驚きと深い感動に満ちていた
「……これは、まさしく奇跡だ……ありがとう……」
耳元で聞こえたその声はあの兵士のものだった震えていたが静かに
しかし確かな声でそう呟きが響いてきた「あまがみ」を見つめる瞳には深い敬意
そして自分と同じ痛みを分かち合う者への共感が芽生え輝き宿っていた
「あまがみ」は彼の腕の中で、この出会いが、これからの自分の人生に深く関わってくることを漠然と
しかし確信的に感じた彼の眼差しはもう憂いを帯びてはおらず
そこには純粋な驚嘆と「あまがみ」への強い信頼が築かれていた「あまがみ」は彼と視線を合わせた言葉はなくても
お互いの心に、これまでになかった確かな繋がりが生まれたことを感じた
それは運命の糸これからの「あまがみ」の旅路に深く静かに絡み合ってゆく糸の証であった
そこは豪華な調度品で飾られていたが奇妙なほどに空虚で栄華の気配はなく
ただ淡く沈む死の影が薄く漂って生気の抜けた空間に感じられたベッドに横たわる王族は
やつれ果てた顔色で、もはや意識もなく呼吸は糸のようにか細く頼りなく時折
全身を震わせて激しい痙攣に見舞われていて痛ましい
その傍らに立つ影は先ほどすれ違った兵士で黒き瞳の男がただ一人
固い表情で今は何ひとつ為すことができず立ち尽くしていた彼の表情は苦悶と無力感が刻まれる様に彩られ瞳に宿る深い憂いを湛えていた
それは王族への深い心配からくるものなのだろう
この王族は彼にとって、ただの主君以上の忠誠と絆を越えた何か家族にも似た存在なのだろうと見受けられた
「あまがみ」は深く息を吸い込んだ老人会の時よりも何倍もの鉛のような重い空気を感じる胸に大きな重圧を感じながら
けれど目の前の苦しみを見過ごす事など出来はしなかった覚悟を決め彼女は王族の枕元にそっと歩み寄り跪き
この人の苦しみを少しでも和らげてあげたいと
そう強く願い両の手を組んで祈るように目を閉じ静かに、そして慈しむように歌い始めた
「時が止まるまで~君を忘れない~」
その瞬間、歌声はひそやかな祈りのように始まり空気を震わせ部屋に響き澄み渡ると先日の老人会の時と同じように柔らかで温かい光が「あまがみ」の体から溢れ出し薄靄のように病室を満たす
その光は、まるで黎明の霧を溶かす陽光のように霧が晴れ王族の痩せ細った体を優しく
そして柔らかく包み込んだ、それは、これまで目にしたどの光よりも強く
しかし慈愛に満ちた輝きだった苦痛に歪んでいた顔の筋肉が
ふっと緩み始め表情は驚くほど速く穏やかになっていく荒かった呼吸は次第に静かな潮のように整い口元には穏やかな淡い微笑みが浮かんだ
それは深い眠りに落ちたというよりは、この世の苦しみから解き放たれ
まるで遠い安らぎの大地に迎えられ満ち足りた表情で
あまりにも安らかな旅立ち魂の帰還それは星に帰っていった
「あまがみ」は限界だった歌い終えると同時に糸が切れたように全身の力が抜け膝が崩れ落ちようとし倒れ込んだ意識が遠のき闇に沈みかけた
その時そばにいた、あの深き瞳を持つ兵士が素早く力強く
しかし優しい腕で彼女を支えるのを感じた彼の瞳は王族の死に涙を流しながらも驚きと深い感動に満ちていた
「……これは、まさしく奇跡だ……ありがとう……」
耳元で聞こえたその声はあの兵士のものだった震えていたが静かに
しかし確かな声でそう呟きが響いてきた「あまがみ」を見つめる瞳には深い敬意
そして自分と同じ痛みを分かち合う者への共感が芽生え輝き宿っていた
「あまがみ」は彼の腕の中で、この出会いが、これからの自分の人生に深く関わってくることを漠然と
しかし確信的に感じた彼の眼差しはもう憂いを帯びてはおらず
そこには純粋な驚嘆と「あまがみ」への強い信頼が築かれていた「あまがみ」は彼と視線を合わせた言葉はなくても
お互いの心に、これまでになかった確かな繋がりが生まれたことを感じた
それは運命の糸これからの「あまがみ」の旅路に深く静かに絡み合ってゆく糸の証であった
0
あなたにおすすめの小説
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
自由を愛する妖精姫と、番にすべてを捧げた竜人王子〜すれ違いと絆の先に、恋を知る〜
来栖れいな
ファンタジー
妖精女王と精霊王の間に生まれた特別な存在――セレスティア。
自由を愛し、気ままに生きる彼女のもとに現れたのは、竜人族の王子・サイファルト。
「お前は俺の番だ」
番という名の誓いにすべてを捧げた彼は、王族の地位も未来も捨てて森に現れた。
一方のセレスティアは、まだ“番”の意味すら知らない。
執着と守護。すれ違いと絆。
――これは、ひとりの妖精姫が“特別”に気づいていく物語。
甘さ控えめ、でも確かに溺愛。
異種族の距離を越えて紡がれる、成長と守護のファンタジー。
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる