「あまがみのみこと」

あまがみのみこと

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「あまがみのみこと」第五章:王族の安らかな旅立ち

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「あまがみ」は案内されるまま城の最深部、幾重にも厳重に閉ざされた扉の向こう息を潜めたかのような最も静かな一室へと足を踏み入れた

そこは豪華な調度品で飾られていたが奇妙なほどに空虚で栄華の気配はなく

ただ淡く沈む死の影が薄く漂って生気の抜けた空間に感じられたベッドに横たわる王族は

やつれ果てた顔色で、もはや意識もなく呼吸は糸のようにか細く頼りなく時折

全身を震わせて激しい痙攣に見舞われていて痛ましい

その傍らに立つ影は先ほどすれ違った兵士で黒き瞳の男がただ一人

固い表情で今は何ひとつ為すことができず立ち尽くしていた彼の表情は苦悶と無力感が刻まれる様に彩られ瞳に宿る深い憂いを湛えていた

それは王族への深い心配からくるものなのだろう

この王族は彼にとって、ただの主君以上の忠誠と絆を越えた何か家族にも似た存在なのだろうと見受けられた

「あまがみ」は深く息を吸い込んだ老人会の時よりも何倍もの鉛のような重い空気を感じる胸に大きな重圧を感じながら

けれど目の前の苦しみを見過ごす事など出来はしなかった覚悟を決め彼女は王族の枕元にそっと歩み寄り跪き

この人の苦しみを少しでも和らげてあげたいと

そう強く願い両の手を組んで祈るように目を閉じ静かに、そして慈しむように歌い始めた

「時が止まるまで~君を忘れない~」

その瞬間、歌声はひそやかな祈りのように始まり空気を震わせ部屋に響き澄み渡ると先日の老人会の時と同じように柔らかで温かい光が「あまがみ」の体から溢れ出し薄靄のように病室を満たす

その光は、まるで黎明の霧を溶かす陽光のように霧が晴れ王族の痩せ細った体を優しく

そして柔らかく包み込んだ、それは、これまで目にしたどの光よりも強く

しかし慈愛に満ちた輝きだった苦痛に歪んでいた顔の筋肉が

ふっと緩み始め表情は驚くほど速く穏やかになっていく荒かった呼吸は次第に静かな潮のように整い口元には穏やかな淡い微笑みが浮かんだ

それは深い眠りに落ちたというよりは、この世の苦しみから解き放たれ

まるで遠い安らぎの大地に迎えられ満ち足りた表情で

あまりにも安らかな旅立ち魂の帰還それは星に帰っていった

「あまがみ」は限界だった歌い終えると同時に糸が切れたように全身の力が抜け膝が崩れ落ちようとし倒れ込んだ意識が遠のき闇に沈みかけた

その時そばにいた、あの深き瞳を持つ兵士が素早く力強く

しかし優しい腕で彼女を支えるのを感じた彼の瞳は王族の死に涙を流しながらも驚きと深い感動に満ちていた

「……これは、まさしく奇跡だ……ありがとう……」

耳元で聞こえたその声はあの兵士のものだった震えていたが静かに

しかし確かな声でそう呟きが響いてきた「あまがみ」を見つめる瞳には深い敬意

そして自分と同じ痛みを分かち合う者への共感が芽生え輝き宿っていた

「あまがみ」は彼の腕の中で、この出会いが、これからの自分の人生に深く関わってくることを漠然と

しかし確信的に感じた彼の眼差しはもう憂いを帯びてはおらず

そこには純粋な驚嘆と「あまがみ」への強い信頼が築かれていた「あまがみ」は彼と視線を合わせた言葉はなくても

お互いの心に、これまでになかった確かな繋がりが生まれたことを感じた

それは運命の糸これからの「あまがみ」の旅路に深く静かに絡み合ってゆく糸の証であった
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