「あまがみのみこと」

あまがみのみこと

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「あまがみのみこと」第六章:光と影の魔女

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王族の安らかな旅立ちの報せは、まるで聖なる鐘の音が天と地を揺るがし風よりも早く瞬く間に王都全域を駆け抜け

そして、この国の隅々まで広がり響き知れ渡った

「あまがみ」の名は、もはや市井の街角での小さな噂話ではない人々は彼女をただの娘とは呼ばなくなり神殿に捧げられる祈りのように人々の口に上った神の御使い救いの魔女と讃え呼び

その呼び名は賛美の調べとなり歌声は天より降り注ぐ癒しの雨だと信じられ

その御力にあやかろうと彼女を求める声は城門を越え城には日ごと無数に新たな依頼が殺到するようになり昼夜絶え間なく押し寄せた

病に臥せる者、心の闇に囚われた民、子を残し余命を悟った母その身内からの懇願は絶え間なく死の淵に立つ裕福な貴族の親は黄金や多額の謝礼を山のように積み捧げ貧しい者からは涙と土下座で命乞いの懇願が寄せられた不治の病に苦しむ瀕死の商人

戦で深く心を砕かれ傷を負った兵士「あまがみ」の日常は一変した次から次へと舞い込む依頼に応え歌うたびに光は溢れ癒しは広がり彼らは皆ひとつの奇跡を求め祈願し

「あまがみ」の前に跪き感謝と崇拝の言葉が雨のごとく彼女に降り注ぐ

「あまがみ」は、その一つ一つの全てに応えようと来る日も来る日も昼も夜も途切れることなく歌い続け救いの聖歌は鳴り響いていた

だがしかし、その彼女の力は万能ではなく代償はあまりにも大きい癒した数だけ体は蝕まれ痩せ細り力が失われ声の奥にある魂は削られ歌い終えるたびに訪れる体の消耗は以前よりもずっと重く

そして何よりもさらに残酷だったのは彼女が全ての命を救えるわけではないという現実だった

時間の限りがあり彼女の力の限界もある日に日に増える依頼の中には病状があまりに進行しすぎた者や心の傷が深すぎて歌声が届かないほど深く絶望に沈んだ者もいた「あまがみ」は苦渋の決断を迫られる救うべき命と見送られる

しかなく闇へと沈む命その線引きは毎回、彼女の心を深くえぐり同時に複数の依頼が来た時

彼女は時には天秤にかけ選ばなければならない

という重い現実に直面し残酷な選択に迫られた

ある時、同時に二人の末期患者から「あまがみ」に助けを求められ

どちらも幼い子を持つ親であった涙に濡れた祈りの中であまがみは悩み苦しみ

どちらを選んだとしても片方を救えば、もう一方は苦痛の中で死を迎えることになる彼女は祈りを込めてより多くの人に希望の影響を与え残せるであろう片方を選んだ

だがその選択は、もう一方の残された者の家族に深い絶望と怒りをもたらし、やがて人々の口は二つに割れ

「なぜ、あの子を選ばなかったんだ!?救いの魔女などと嘘をつけ!偽りだ!あいつはただの冷酷な魔女だ!」

助けられなかった人々の家族からは感謝ではなく憎悪や絶望が投げつけられ

その日から彼女の歩みは、さらに重くなっていった人々の間で「あまがみ」の歌声がもたらす安らぎの裏にある選別という冷たい事実を知った時

救いの魔女という賛辞と同時に冷酷な魔女という影が彼女に貼り付き誹謗が囁かれ始め選ばれなかった命の慟哭がある人々は途端に手のひらを返し救われなかった者たちの悲痛な叫びや非難の声が彼女の耳に届くようになり光と影の二重性が渦巻き始めていた

また人々は知らない救いの魔女と冷酷な魔女そのどちらもが彼女自身で祈りと呪いの中を彷徨い生きていることを

「あまがみ」は自身が救いと絶望を同時に生み出す存在であることを嫌というほど思い知らされ心は光と影を共に背負い、その狭間で引き裂かれていった歌えば歌うほど癒しと絶望を同時に生み出す己の存在を嫌というほど思い知らされた彼女の顔色には疲労が色濃く現れ

その瞳からは、かつての輝きが失われ軽やかに声を紡ぐことはできず歌い終える、ごとに彼女は血の気を失い地に倒れ込み眠れない夜が続き食事も喉を通らないほどだった

それでも、なお彼女を求め、それに応える状況は変わらず続いていたのである

そんな日々の中で「あまがみ」を常に影のように見守り寄り添い支え続けた男

あの城でかつて王族の護衛をしていた兵士「アッシュ」だった「あまがみ」の依頼の付き添いとして彼はいつも彼女の傍らにいた

彼自身も戦場で多くの死を見てきたせいか地獄を見届けてきた者だけが持つ共感がありその瞳には「あまがみ」の苦悩を深く理解し哀しみが宿っていた

彼女が力を使い果たし力尽きて倒れそうになるたび腕を差し伸べ彼は黙って支え人々の非難から彼女を庇った世間の賛辞にも非難の矢のような声が飛べば彼は動じることなく身を盾とし

ただ静かに「あまがみ」を見守った「アッシュ」は多くを語らない男だった

「君のやっていることは間違っちゃいない全てを救うことなんて誰にもできない……それでも君は多くの命と心に安らぎを与えている……それだけは紛れもなく揺るぎのない真実だ間違いない……」

彼の声は穏やかで稲妻のように鋭く、しかも確かな芯を持ち

その言葉は失われ、かけた灯を再び燃え立たせるように傷つき疲れ果てた「あまがみ」の心に深く染み渡る温かい光だった彼の揺るぎない眼差しと力強い存在は「あまがみ」にとって荒れ狂う嵐の中で唯一の灯台のようでいて絶望の闇に沈みそうな寸前に差す最後の光であり彼の顔を見れば自然とまた立ち上がる勇気が湧いていた

共に過ごす時間が増えるにつれ二人の間には言葉では語れぬ程の

それ以上の深い信頼と互いを思いやる特別な絆が静かに芽生え始めていた彼らは互いの存在が欠かせないものと、なっていくのを感じていた
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