女王さまのオンナになった、僕。

臼井 さくら

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第15話 雌の装置

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 視界いっぱいに薄桃色の粘膜が広がっていた。
 鼻腔をくすぐる強い雌の匂い。

 互いに、互いの股間を目の前にしている。
 僕が下、蓮菜さんが上。
 僕は震える指先で、蓮菜さんのその部分にそっと触れてみた。ぴくん、と動く。

 「あ、痛い……?」
 「ううん、大丈夫」

 穏やかな声に安堵して、そのままそっと襞に指を沿わせる。少しずつ、少しずつ力を入れ、ゆっくりと襞を分けてゆく。透明な愛液が糸を引き、桃色に色づいた肉壁が妖しくうごめいている。

 (これが……女の子の……)

 まじまじと見るのは初めてだった。
 複雑で、神秘的で、そして淫らな器官。
 僕のそこは、見たことがない。いや、正面に立って鏡で見ることは毎日のようにしているし、指でも触れている。でも、間近に鏡を近づけて覗き込むようなことはしていない。なんだか、怖かったから。

 いずれは僕も、こうなるのだろうか。
 僕のそこは、細く狭くて暗い、単なる割れ目。でも蓮菜さんのそれは、淫靡で艶かしい、とても綺麗な場所に思えたのだ。
 いつか、こんなふうに……。
 怖い、という思いもある。でも、その想像は、肌が粟立つような興奮をも連れてきたのだ。

 「……どう、ご感想は。女の、そこ」

 足元のほうからくすくすと笑う声が届く。

 「す、すごい……複雑で、熱くて……」
 「ふふ、そんな顔で見つめられたら、わたしまでおかしくなりそう……ねえ、指、入れてもいいよ」
 「えっ」
 「触って、確かめて。これからの自分の身体の予習だと思って」

 予習。その言葉に喉が鳴る。
 僕はおずおずと中指を伸ばした。けれど、どこに、どうやって触れればいいのかわからない。入り口で躊躇っていると、蓮菜さんが呆れたような声を投げてくる。

 「なんで戸惑ってるの。やり方、知ってるくせに」
 「え……?」
 「君、自分でしてるでしょ。前のとこじゃなくて、後ろの方で」

 心臓が凍りついた。指が止まる。
 蓮菜さんはすべてを見透かした魔女のような顔で、僕の核心を突き刺した。

 「毎晩、お風呂場とか、布団の中で。確認とか、点検とか自分で言い訳しながら、弄ってるでしょ。女の子のやり方で」
 「……し、して、な……」
 「いまさら誤魔化したって駄目。君の反応みてたら、わかるの。それに肌艶も、仕草も、もう完全に『開発』されちゃった子のものだもん」

 見抜かれていた。
 僕がひた隠しにしていた、もっとも恥ずべき秘密。男としての尊厳を捨てて、メスとしての快楽を貪っていた事実。顔から火が出るほどの羞恥に身体がカッと熱くなる。
 けれど。その羞恥こそが、バレていたという事実こそが、僕の下腹部を強烈に刺激した。このひとは、僕が両方の性をもてあそぶ変態であることを知った上で、受け入れているのだ。

 「いいから、ほら。やってみて。わたしもしてあげるから」

 蓮菜さんが顔を伏せ、僕の太ももの付け根に唇を近づける。
 吐息だけで痺れるような快感が走るけれど、どうにか我慢して僕もおなじ姿勢を取る。
 互いに軽く、腿にキスを落とす。

 「ん、う……」
 「あ、ぁっ……!」

 彼女の舌先が、僕の小さな突起に届いた。執拗に、ねぶるように転がす。
 その快感に突き動かされるように、僕もまた、目の前の複雑な造形のそこへ顔を埋めた。
 夢中で舌を伸ばす。愛液の甘酸っぱい味。
 ぬちゃり、ねちゃり、という甘く重い水音を響かせながら、僕は夢中でそれを味わった。足元からは絶えず小さな吐息が聴こえてくる。だいじょうぶ、なんだ。僕の、こんな拙いやり方でも、蓮菜さん、悦んでくれているんだ……。
 その思いが自信となった。やってみよう。指を持ち上げ、目の前の深い部分へ沈めてゆく。
 ぬるり、と温かい肉壁に指が吸い込まれる感触。

 「ぁ、ん……じょうず」

 甘い囁きが聴こえたとおもった刹那、下腹部に強い刺激が走った。
 圧迫感と、熱。熱いなにかが僕のなかに分け入ってきた。

 「あっ、あ……!」
 「ゆっくりするからね。痛かったら言ってね」
 「……ん」

 ゆっくりと、探るように。
 蓮菜さんの指が僕の奥へと進んでくる。
 はじめてのときの女性は、痛いものだ。僕の拙い知識でもそれくらいは分かってる。処女膜、といったかな。僕はそれが破れる衝撃に備えて、身体を硬くしていた。
 なのに、それはいつまでたってもやってこない。
 代わりに、どんどん熱くなる。熱くなって、渦を巻いてゆく。
 暖かな奔流のような渦は、彼女が指をゆっくりと動かすとともにどんどん強くなっていく。
 やがて彼女の指がくっと曲げられ、おへその側の内側がこりっと刺激されたとき。

 「ん、あ、ああああああっ!」

 ひときわ大きな波が僕を攫った。
 がくん、がくん、と、なんども背が跳ねる。
 身体の奥からたくさんのなにかが溢れ、それが刺激されている部分から勢いよく流れ出ていった。

 「……すごい。なかで、イけちゃうんだ」

 はあ、はあ、と肩で息をしながら見下ろした蓮菜さんの顔に、ちいさく飛沫が飛んでいる。ぐるぐると揺れている頭でしばらく考えたが、それが自分のそこから溢れた液体であることに気がついて、僕はあわてて身を起こそうとした。
 が、脚の上に身体を載せられ、動けなくなる。

 「大丈夫だよ、でも、びっくりした。君の身体、もう、こんなにちゃんと、女なんだね」
 「……いわ、ないで……」
 「ふふ。可愛い」
 「……言わない、で!」

 僕は復讐するように夢中で蓮菜さんのそこに顔を押し当てた。
 舌を突き出し、強く舐めあげる。

 「んうっ!」

 びくん、と僕の上の蓮菜さんの身体が揺れる。
 ゆっくりともういちど中指を差し入れ、彼女がしてくれたように静かに上下に動かす。ときおり指先を曲げて、肉壁の張り出しているところをとんとんと打つように動かしてみる。

 「あ、あ、あ……やだ。なんで、わか、るの……そんな、の」
 「……わかんない、けど……」

 自分のなかのなにかが、教えてくれている。そんな気がしたけど、言わなかった。
 そのまま指の動きを続ける。強く、弱く、速く、ゆっくりと。
 やがて目の前の彼女の両腿が、背中が、おおきく跳ねた。
 僕の顔に、彼女の溢れさせた暖かなものが降ってきた。

 「……っ、ご、ごめ……ん」

 蓮菜さんは息を荒くしながら僕のほうに顔を向けた。
 僕はわざとらしく口角を持ち上げてみせる。
 これでお互いさま。

 そのままずっと、互いに貪り合った。
 彼女の指は僕のなかを巧みに愛撫し、さらに奥へと、深い場所へと潜ってくる。僕の指もまた同じだった。唇を使い、指を動かし、ときおり身体を起こして抱き合ってはキスを交わす。
 もはや男か女かなんて関係なかった。ただ快楽を貪る二匹の雌獣が、互いの蜜を啜り合っているだけ。

 「あ、イく、イくぅっ……!」
 「わたしも、イっちゃう……っ!」

 幾度目かの絶頂。
 脳が白く弾け、身体が弓なりに痙攣する。
 意識が飛びかけるたびに、舌の感触と指の動きで現実に引き戻され、また新たな波に飲み込まれていく。
 永遠にも似た、とろとろの地獄。

 ◇

 どれくらいの時間が経ったのか。
 ふらつく足取りで、僕たちはバスルームへと移動した。
 ガラス張りの空間に、白い湯気が充満する。
 シャワーの温かいお湯が、汗と愛液でべたついた身体を洗い流していく。

 「……見て」

 蓮菜さんが、僕の身体を泡だらけの手で洗いながら、股間に触れた。
 鏡に映る二人の裸体。

 「もう、タマタマもほとんど見えなくなっちゃったね。袋が縮んで、身体に吸収されかけてる」
 「……本当だ」

 数日前まではちゃんと小さいながらも確認できた睾丸は、いまや痕跡程度にまで縮こまり、その代わりに盛り上がってきた肉襞の一部に吸収されつつあるようだった。

 「ほら、並べてみて」

 蓮菜さんは自分の秘所を指で開き、その隣に僕のモノを並べさせた。
 比較するまでもない。
 僕についている突起は、彼女のクリトリスよりもわずかに大きいだけ。形状も、色も、ほとんど変わらない。

 「わたしと、あんまり変わらなくなってきたね」
 「う、ん……」
 「そのうちね、おしっこが出なくなるよ」

 予言めいた言葉に、僕はぎょっとして彼女を見た。

 「えっ……」
 「ふふ、大丈夫。ほんの少しのあいだ止まるだけだから。身体のなかで、おしっこの経路が切り替わる日が来るんだよ。痛くもないよ。わたしなんて意識もしなかったもん」
 「切り、替わる……?」
 「そう。今度は、後ろの方から出るようになるの。女性器としての機能が完成に近づいたら、尿道が膣の奥へ接続するんだって。わたしは小さかったからあんまり説明、聴かせてくれなかったから、どんな仕組みなのかわからないけど」

 とんでもない話だった。
 けれど、この湯気の中、彼女の確信に満ちた声を聞いていると、それが逃れられない運命のようにも、待ち遠しい進化のようにも思えてくる。

 と、蓮菜さんが僕の小さな突起を、指先で愛おしげに摘まんだ。
 こり、と甘い刺激が走る。

 「そうなったら、君の……これ、は」

 彼女は濡れた瞳で僕を見つめ、断言した。

 「もう完全に、クリトリスよ」

 その言葉が、僕の男としての意識をまたすこし、削っていった。
 ペニスじゃない。クリトリスになるんだ。
 生殖にも排泄にも関係ない、快楽のためだけの、雌の装置。

 「……んっ……」

 湯気の中で、また深く長い愛撫が始まった。
 シャワーの音に混じって水音と吐息が響く。
 ふと視界の端に入った壁の時計は、すでに午後七時近くを示していた。
 家に帰らなければならない時間だ。親が心配するかもしれない。
 けれど、僕はそれをどこか他人事のように眺めていた。
 
 この湯気と快楽に守られた世界だけが現実で、外の世界なんて幻なんじゃないか。
 帰る家なんて、もうどこにもないんじゃないか。
 そんな、甘く切ない諦めが、僕の心を満たしていた。

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