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三姉妹の軍事要請(お願い)、斜め上の爆弾となって魔王城に投下される
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切り立った断崖絶壁の頂、万年雪に閉ざされた地にそびえ立つは、第七軍団の本拠地「氷影城」。その堅牢な外観とは裏腹に、城の最上階には贅の限りを尽くした空間が広がっていた。
湯気に包まれた大浴場。薔薇の香湯が満たされた大理石の浴槽で、かつて魔界一の美貌と謳われた第七軍団長ガートルードは、静かに目を閉じていた。
「閣下、お耳に入れたき儀が。……姪御様方、三姉妹がこちらへ見えております」
侍女の控えめな報告に、ガートルードは伏せていた長い睫毛をゆっくりと上げた。
「あら……あの子たちが? ここまで、わざわざ」
ザバリ、と豪快に湯を切って彼女が立ち上がる。湯気に濡れ、しなやかな曲線を描くその肉体は、まさに「魔性」という言葉を具現化したものだった。豊かな膨らみをたたえた胸元から、指一本分も無駄のない引き締まったくびれ、そしてすらりと伸びた長い脚。背中まで届く美しい銀髪は、濡れて肌に張り付き、その毒々しいまでの白さを際立たせている。
同性であるはずの侍女ですら、その完璧なナイスバディを前に思わず頬を赤らめ、視線を泳がせた。ガートルードは、自らの美しさが周囲に与える影響など当然のこととして受け流し、用意された薄絹のガウンを羽織った。
数刻後。優美な装飾が施された執務室。先ほどまでの艶やかな姿とは一変し、ガートルードは漆黒の軍服に身を包み、威厳たっぷりに豪華な椅子に腰掛けていた。居並ぶ部下たちの前では、彼女は冷酷無比な氷の軍団長そのものである。
「ふっ、久しぶりすぎて顔を見忘れるところだったわよ。今日は一体何の用なの? わたしも第七軍団も、暇ではないのだけれど」
近寄り難い、クールな軍団長の顔。だが、リリスが「伯母様、内密の話がございますの……」と神妙に告げ、ガートルードが「……皆、下がりなさい」と部下を下がらせた瞬間――その鉄の仮面は、音を立てて木っ端微塵に崩壊した。
「やーん! リリスちゃん! また美しくなっちゃって! ますます昔のわたしに似てきたじゃない! エルゼちゃんもなんて綺麗な立ち姿! 昔のわたしにそっくりだわ! ミーナちゃんも可憐になって……子供の頃のわたしと瓜二つね、もう!」
ガートルードは椅子から弾かれたように飛び起きると、三人に猛烈な勢いで飛びついた。
「もうちょっと、ちょくちょく来てよ! 伯母っていう生き物は、寂しいと死んじゃうのよ! あなたたちのお母さんの顔は見たくないけど、あなたたちは別よ。ああ、いい匂い……最高に育ってきたわねぇ!」
ひとしきり、三人の頭を交互に撫で回し、ほっぺたをこれでもかとすりすりし、リリスの胸元の発育を感心したように眺め、エルゼの腰回りのラインを確認し、ミーナのお尻をチェックするという名の、親族の特権を乱用したセクハラ行為を一通り完遂したガートルードは、ようやく上機嫌でソファに座り直した。
「それで? 今日はいったいどうしたのよ。鏡通信で済ませることもできたでしょうに、わざわざこの雪深い城まで来てくれるなんて。ただ遊びに来たっていうなら伯母さん、この上なく嬉しいけど……まあ、どうせお父さん、あのバカ弟がまた何かやらかしたんでしょ? その尻拭いの相談?」
リリスは意を決して、これまでの経緯を包み隠さず(ただし、勇者の実数が五人であるという、魔王軍の根幹を揺るがす致命的な嘘以外は)説明した。政略結婚の道具として差し出されたこと。だが、実際に勇者パーティの男たちと過ごすうちに、それぞれ惹かれるところがあり、今は結婚を前提に考えていること。そして現在、人間界の王の暴走によって勇者アラタが囚われており、彼を救い出すために「魔王軍が王都を攻めるフリ」をして、人間側に圧力をかけたいのだ、と。
説明を聞き終えたガートルードの表情から、一気に血の気が引いた。 ……いや、正確には、ゾッとするような紫色の濃密な殺気が、執務室の空気を物理的に凍りつかせた。
「…………は? 結婚? それも、あなたたち三人が……揃いも揃って、あんな人間と?」
「は、はい」
「わたしの可愛いリリスちゃん、エルゼちゃん、ミーナちゃんを……あんな下等な種族に……。しかも、あのバカ弟……ゼノン。自分の保身のために、娘を人身御供として差し出そうとしたですって……?」
ガートルードの瞳に、静かな、しかし修復不可能な怒りの炎が宿る。
「あいつ、自分が何をしたか分かっているの! このわたしの可愛い可愛いあなたたちを政治の道具にするなんて! それは、このわたしを政治の道具にしたのと同じことだわ! 許せない……」
ガートルードはガタッと立ち上がり、もはや隠しきれない膨大な魔力を解放した。部屋中の窓ガラスがビリビリと鳴り、壁に飾られた絵画が次々と落下する。
「誰かおる!?」
声に応じて、扉が、物理的に吹き飛ぶ勢いで開かれ、廊下に控えていた部下たちが血相を変えて駆け込む。
「はっ!」
「第七軍団、直ちに出陣の用意をしなさい! 全軍よ! 氷竜騎兵隊も、重装魔導兵も、一人残らず叩き起こして武装させなさい!」
「承知しました! ……目標はアルカディア王都、人間界の殲滅でしょうか!?」
ガートルードは首をぐるりと回すようにしてから、力強く言った。
「目標は魔王城! 狙うは、あのバカ弟……ゼノンの首よ!!」
「ええええええええっ!?」
三姉妹の叫びが、氷影城の空高くに響き渡った。
「ちょ、ちょっと待って、伯母様! 攻めるのは人間界の王都ですってば! 勇者様を助けたいんですのよ!」
「可愛そうに…… あなたたちがそんな変な虫たちにたぶらかされてしまったのは、そもそもはあのバカ弟のせいよ! 私の可愛い姪たちを、そんな妙な性癖に目覚めさせた責任は重いわ。絶対に、絶対に……許さないんだから……! ゼノオォォォン!!」
もはや、ガートルードの耳には何も届いていなかった。彼女にとって、勇者は「姪をたぶらかした不浄な害虫」であり、ゼノンは「その害虫に姪を献上した史上最低の弟」であった。
こうして、勇者アラタを救うための軍事デモンストレーションは、なぜか「魔王軍の内戦(というか姉弟喧嘩)」という、最悪の泥沼へと発展しようとしていた。
湯気に包まれた大浴場。薔薇の香湯が満たされた大理石の浴槽で、かつて魔界一の美貌と謳われた第七軍団長ガートルードは、静かに目を閉じていた。
「閣下、お耳に入れたき儀が。……姪御様方、三姉妹がこちらへ見えております」
侍女の控えめな報告に、ガートルードは伏せていた長い睫毛をゆっくりと上げた。
「あら……あの子たちが? ここまで、わざわざ」
ザバリ、と豪快に湯を切って彼女が立ち上がる。湯気に濡れ、しなやかな曲線を描くその肉体は、まさに「魔性」という言葉を具現化したものだった。豊かな膨らみをたたえた胸元から、指一本分も無駄のない引き締まったくびれ、そしてすらりと伸びた長い脚。背中まで届く美しい銀髪は、濡れて肌に張り付き、その毒々しいまでの白さを際立たせている。
同性であるはずの侍女ですら、その完璧なナイスバディを前に思わず頬を赤らめ、視線を泳がせた。ガートルードは、自らの美しさが周囲に与える影響など当然のこととして受け流し、用意された薄絹のガウンを羽織った。
数刻後。優美な装飾が施された執務室。先ほどまでの艶やかな姿とは一変し、ガートルードは漆黒の軍服に身を包み、威厳たっぷりに豪華な椅子に腰掛けていた。居並ぶ部下たちの前では、彼女は冷酷無比な氷の軍団長そのものである。
「ふっ、久しぶりすぎて顔を見忘れるところだったわよ。今日は一体何の用なの? わたしも第七軍団も、暇ではないのだけれど」
近寄り難い、クールな軍団長の顔。だが、リリスが「伯母様、内密の話がございますの……」と神妙に告げ、ガートルードが「……皆、下がりなさい」と部下を下がらせた瞬間――その鉄の仮面は、音を立てて木っ端微塵に崩壊した。
「やーん! リリスちゃん! また美しくなっちゃって! ますます昔のわたしに似てきたじゃない! エルゼちゃんもなんて綺麗な立ち姿! 昔のわたしにそっくりだわ! ミーナちゃんも可憐になって……子供の頃のわたしと瓜二つね、もう!」
ガートルードは椅子から弾かれたように飛び起きると、三人に猛烈な勢いで飛びついた。
「もうちょっと、ちょくちょく来てよ! 伯母っていう生き物は、寂しいと死んじゃうのよ! あなたたちのお母さんの顔は見たくないけど、あなたたちは別よ。ああ、いい匂い……最高に育ってきたわねぇ!」
ひとしきり、三人の頭を交互に撫で回し、ほっぺたをこれでもかとすりすりし、リリスの胸元の発育を感心したように眺め、エルゼの腰回りのラインを確認し、ミーナのお尻をチェックするという名の、親族の特権を乱用したセクハラ行為を一通り完遂したガートルードは、ようやく上機嫌でソファに座り直した。
「それで? 今日はいったいどうしたのよ。鏡通信で済ませることもできたでしょうに、わざわざこの雪深い城まで来てくれるなんて。ただ遊びに来たっていうなら伯母さん、この上なく嬉しいけど……まあ、どうせお父さん、あのバカ弟がまた何かやらかしたんでしょ? その尻拭いの相談?」
リリスは意を決して、これまでの経緯を包み隠さず(ただし、勇者の実数が五人であるという、魔王軍の根幹を揺るがす致命的な嘘以外は)説明した。政略結婚の道具として差し出されたこと。だが、実際に勇者パーティの男たちと過ごすうちに、それぞれ惹かれるところがあり、今は結婚を前提に考えていること。そして現在、人間界の王の暴走によって勇者アラタが囚われており、彼を救い出すために「魔王軍が王都を攻めるフリ」をして、人間側に圧力をかけたいのだ、と。
説明を聞き終えたガートルードの表情から、一気に血の気が引いた。 ……いや、正確には、ゾッとするような紫色の濃密な殺気が、執務室の空気を物理的に凍りつかせた。
「…………は? 結婚? それも、あなたたち三人が……揃いも揃って、あんな人間と?」
「は、はい」
「わたしの可愛いリリスちゃん、エルゼちゃん、ミーナちゃんを……あんな下等な種族に……。しかも、あのバカ弟……ゼノン。自分の保身のために、娘を人身御供として差し出そうとしたですって……?」
ガートルードの瞳に、静かな、しかし修復不可能な怒りの炎が宿る。
「あいつ、自分が何をしたか分かっているの! このわたしの可愛い可愛いあなたたちを政治の道具にするなんて! それは、このわたしを政治の道具にしたのと同じことだわ! 許せない……」
ガートルードはガタッと立ち上がり、もはや隠しきれない膨大な魔力を解放した。部屋中の窓ガラスがビリビリと鳴り、壁に飾られた絵画が次々と落下する。
「誰かおる!?」
声に応じて、扉が、物理的に吹き飛ぶ勢いで開かれ、廊下に控えていた部下たちが血相を変えて駆け込む。
「はっ!」
「第七軍団、直ちに出陣の用意をしなさい! 全軍よ! 氷竜騎兵隊も、重装魔導兵も、一人残らず叩き起こして武装させなさい!」
「承知しました! ……目標はアルカディア王都、人間界の殲滅でしょうか!?」
ガートルードは首をぐるりと回すようにしてから、力強く言った。
「目標は魔王城! 狙うは、あのバカ弟……ゼノンの首よ!!」
「ええええええええっ!?」
三姉妹の叫びが、氷影城の空高くに響き渡った。
「ちょ、ちょっと待って、伯母様! 攻めるのは人間界の王都ですってば! 勇者様を助けたいんですのよ!」
「可愛そうに…… あなたたちがそんな変な虫たちにたぶらかされてしまったのは、そもそもはあのバカ弟のせいよ! 私の可愛い姪たちを、そんな妙な性癖に目覚めさせた責任は重いわ。絶対に、絶対に……許さないんだから……! ゼノオォォォン!!」
もはや、ガートルードの耳には何も届いていなかった。彼女にとって、勇者は「姪をたぶらかした不浄な害虫」であり、ゼノンは「その害虫に姪を献上した史上最低の弟」であった。
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