笑う花

マルゾンビ

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現実

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朝起きて歯を磨く、顔を洗って、
ヒゲ剃って、朝ごはんにパンを食べる。
謎の植物に水をあげる、
あれ?喋らない?やはり夢だったか。

仕事の支度をして、
それじゃ行ってらっしゃい、
はい、行ってきます。

独り身の悲しい独り言だよなーこれ、
「早く帰ってこいよヒロシ」
やはり血の気が引く。

バタン

平常心とは日々の自分との対話であろう、
それを大きく乱されて、仕事に向かう。
何気ないようなことも手が震える、
少し動揺して業務が進まない。

同僚にあのことを聞こうか…
あの葉っぱ…
でも、どう聞く?
そう考えていると、同僚から声をかけられる。
ビクっと波打つ肩が大袈裟だったみたいで、逆に同僚がビックリした。

「うわ!なんですか?そんなにビックリしなくても」
ごめんごめん、何?

「仕事の話じゃないけど、植物は大きくなりました?」
大きくなったよ!

なんてこった、今から聞きたいことをこんなにも早く聞けそうだけど。
突然俺が、あの植物喋るけどなんなのあれ!?って聞いたら、ヤバい人間として認定される。
それだけは避けたい…

「ちょっと聞いてる?」
あー、聞いてなかった、ごめん。

「疲れてます?」
そうではないけど、一応植物は元気だからまた写真見せるよ、
今日は忙しいからまた後で!

話を切ってその場から逃げた。
いやー危なかった、これは大変なことになった、
あいつもしかしてヤバい花を俺に押し付けてきたのか?
でも、あいつに限ってそれはないよな、多分。
そんなこんなで仕事に身が入らず、残業して帰った。

ガチャ

家の鍵を開けた、
ただいまー、おかえりー。
情けない悲しすぎる、暗い部屋に向かってボヤいた。
「ヒロシ!水くれ!遅かったな!」

イヤ!!心臓に悪い、
慣れないものだ。

「腹減ったんだよ!早く!」
わかったから、ちょっと待って。

水をあげる。
「美味い!」
水が美味いのか?人間じゃあるまいし…

「お前、私が人間じゃないと思っているな?」
そうそう、植物だし。
「私は植物だが植物じゃない」
そうなのか…

……。

俺今言葉に出したか?
「出してない」
だよ、な?
「ヒロシ、私はお前が頭で考えてることも聞こえてるぞ」
え!!
「え!!?」
え?!
「えっ??!!?」
え!!!
「おい、やめろ」

「私は、そうだな遠い祖先ぐらいで考えてくれ」

はぁ!?

「ははは、だからそれやめろ」

笑った、そして怒られた。



続く。
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