腹が減っては恋愛も出来ぬ

さえき あかり

文字の大きさ
2 / 3

はらぺこ王子と椿姫

しおりを挟む
 とある国のお話し。
 そこにはギャンブルをこよなく愛する王子が居て、彼は毎日城を抜け出してはコイントスから始まってバカラ、カジノなどなどありとあらゆる物に手を出していて、お小遣い用にと親に作って貰ったクレジットカードの家族カードと紐づけてある通帳はいつも空っぽ。
 そんなある日、ついに完全に信用を失ってしまった王子は当然の如くカードの利用が出来なくなり何かを食べることすらままならなくなってしまいました。
 王子は途方に暮れ、仕方なく門番が一番手薄になる真夜中に隣国への門を潜り込み、辿り着いた先には果樹園があり、林檎や苺など様々な果物の木が植えられていて、その中でさくらんぼがちょうど食べ頃なのか、燦然と輝くさくらんぼの木を見つけ、登って手に入れようとするも、立っているのすら辛いほどに腹ぺこなせいか、力が出ず。
 木の下にへたり込むしかありませんでした。

 そこにちょうど一台の馬車が通りかかりました。
 これ幸いと力を振り絞って王子が近づいていくと、中には天使の輪っかの美しいこれ以上にない、まるで本物の天使のようなお姫様が乗っており、彼女は扉越しに言いました。
 「何かお困りですの?」
 王子は喉も渇きに渇き、どうにか首を縦に振るのが精いっぱい。
 しかし、彼女の住む隣国はというと、YESとNOのサインが真逆の国。
 案の定、大丈夫だと受け取られてしまい、踵を返して一歩、右足が前に出る前に彼女は向き直り、「やはり何かお困りなのでは?」と返ってきました。
 「私の国では、英語と日本語を習うことが必須なの。だから、本当は大丈夫ではないのでは?」
 唇がカサカサになるほどで涙も出るに出ず、「……help me」掠れた声で言うのが精いっぱいの王子に、椿姫は言いました。
 「実は貴方の噂は兼ねがね聞いていたの。」
 そして、ちょうど昨日に貴方との縁談のお話を伺っていましたの、と続けました。
 「ひとつ、たった一つずつだけで良いのです。ギャンブルを一つずつ、日ごとに一つ辞めてゆき、そして最終的には全てのギャンブルをしないとお約束頂けるならば、私は貴方との結婚を約束致しましょう。」
 懐の深さに感銘を受けた王子は、「Thank you, very much.」
 王子は涙ぐみながら、「I promise for yo...mmm, No! I want you now. So, I promise for mine. Because, I need Only you. forever. 」
 姫はにっこり微笑むと「それではこれを……」と水筒の蓋を開けると緑色の茶葉の香りがほんのり漂ってきて、懐かしい記憶が蘇ってきた王子は再度首を横に振り、一気に飲み干すと二人は仲良く羊羹や落雁などを分け合いました。
 しばらくして懐中時計を見ると16時すぎを指していたので、王子は「Thank you, very much.」と幾度となくお礼を行って、また逢う約束をすると、二人はそれぞれの帰路へと着いていきました。
 その後の二人はというと、無事にギャンブル依存症を脱する事に成功し、話し合いの末に裏側にフェルメールブルーの施された指輪を交換し合い、幸せへの階段を歩調を合わせ、登り始めたとか。

<終>
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

これは王命です〜最期の願いなのです……抱いてください〜

涙乃(るの)
恋愛
これは王命です……抱いてください 「アベル様……これは王命です。触れるのも嫌かもしれませんが、最後の願いなのです……私を、抱いてください」 呪いの力を宿した瞳を持って生まれたサラは、王家管轄の施設で閉じ込められるように暮らしていた。 その瞳を見たものは、命を落とす。サラの乳母も母も、命を落としていた。 希望のもてない人生を送っていたサラに、唯一普通に接してくれる騎士アベル。 アベルに恋したサラは、死ぬ前の最期の願いとして、アベルと一夜を共にしたいと陛下に願いでる。 自分勝手な願いに罪悪感を抱くサラ。 そんなサラのことを複雑な心境で見つめるアベル。 アベルはサラの願いを聞き届けるが、サラには死刑宣告が…… 切ない→ハッピーエンドです ※大人版はムーンライトノベルズ様にも投稿しています 後日談追加しました

偽りの愛の終焉〜サレ妻アイナの冷徹な断罪〜

紅葉山参
恋愛
貧しいけれど、愛と笑顔に満ちた生活。それが、私(アイナ)が夫と築き上げた全てだと思っていた。築40年のボロアパートの一室。安いスーパーの食材。それでも、あの人の「愛してる」の言葉一つで、アイナは満たされていた。 しかし、些細な変化が、穏やかな日々にヒビを入れる。 私の配偶者の帰宅時間が遅くなった。仕事のメールだと誤魔化す、頻繁に確認されるスマートフォン。その違和感の正体が、アイナのすぐそばにいた。 近所に住むシンママのユリエ。彼女の愛らしい笑顔の裏に、私の全てを奪う魔女の顔が隠されていた。夫とユリエの、不貞の証拠を握ったアイナの心は、凍てつく怒りに支配される。 泣き崩れるだけの弱々しい妻は、もういない。 私は、彼と彼女が築いた「偽りの愛」を、社会的な地獄へと突き落とす、冷徹な復讐を誓う。一歩ずつ、緻密に、二人からすべてを奪い尽くす、断罪の物語。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

悪役令嬢は皇帝の溺愛を受けて宮入りする~夜も放さないなんて言わないで~

sweetheart
恋愛
公爵令嬢のリラ・スフィンクスは、婚約者である第一王子セトから婚約破棄を言い渡される。 ショックを受けたリラだったが、彼女はある夜会に出席した際、皇帝陛下である、に見初められてしまう。 そのまま後宮へと入ることになったリラは、皇帝の寵愛を受けるようになるが……。

貴方なんて大嫌い

ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い

愛のゆくえ【完結】

春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした ですが、告白した私にあなたは言いました 「妹にしか思えない」 私は幼馴染みと婚約しました それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか? ☆12時30分より1時間更新 (6月1日0時30分 完結) こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね? ……違う? とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。 他社でも公開

処理中です...