新風カルテット~桃源郷と佐渡島を結ぶ~

さえき あかり

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第二話

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4人は久しぶりに顔を合わせた。桃源郷の片隅にある、古い茶屋で。互いの近況を報告し合ううちに、誰もが今の桃源郷や世の中の情勢を憂いていることが分かった。平和ボケした故郷、SNSで過激化する議論、そして、その根底にあるかもしれない「人類滅亡の危機」。

「私たちに何ができるんだろう……」桃倉が呟くと、猿渡が力強く言った。
「まずは、情報を集めるところからよ。特に、革新組も注目している佐渡島。あの島の状況を、私たちの目で見て、発信するべきじゃない?」

その提案に、異論はなかった。彼女たちは、この行動のためにグループ名を付けることにした。いくつかの候補の中から、満場一致で決まったのは『新風カルテット』。停滞した世界に、新しい風を吹き込もうという決意が込められていた。

佐渡島への渡航手段は、鳥塚がすぐに手配を約束した。「うちの船、しばらく使ってない古いやつがあるから、整備すればなんとかなるよ」
桃倉は、手土産に自家製の桃のピューレを作ることにした。桃源郷の恵みを、少しでも届けたいと思ったからだ。そして、そのピューレのラベルデザインは、デジタルクリエイターである狗飼の役目となった。
「ま、任せといてよ」ぶっきらぼうながらも、その瞳には確かな意志が宿っていた。

準備を進める中で、猿渡がふと思いついたように言った。
「そういえば……佐渡島には、象使いがいるって聞いたことがあるわ。雪之丞《ゆきのじょう》さんっていう方。島では象は神聖な生き物とされていて、象使いはすごく尊敬されているらしいの。彼に連絡を取ってみるのはどうかしら?島での足がかりになるかもしれない」

猿渡はすぐさま連絡先を調べ、雪之丞にコンタクトを取った。驚いたことに、メッセージはすぐに既読となり、返信が来た。雪之丞は『新風カルテット』の来訪を快く受け入れてくれたのだ。

「ひとつ、忠告しておくことがある……」電話口での打ち合わせの際、雪之丞は重々しく切り出した。猿渡が機転を利かせてスピーカーモードにしていたおかげで、桃倉たちも固唾をのんでその言葉を聞いていた。「佐渡島は今、長引く作物の不作で、かなり殺伐としていてな……。正直、とても安全とは言えない状況なのだ」

雪之丞の言葉は、桃源郷の穏やかさとはかけ離れた現実を突きつけてきた。猿渡は顎を少しなぞり、考え込む。「そうか……。食料が不足しているなら、なおさら私たちの『桃の恵み』が役に立つかもしれない。……そうだ、狗飼、あなたのお家は?」

狗飼の表情が、わずかに曇った。「……パン屋よ。うちは昔からパン職人の家系。桃倉のピューレも、普段はうちに卸してもらってる」
「それなら!」猿渡が声を弾ませる。「あなたのお家の力を借りられないかしら?桃倉のピューレを使ってパンを焼いて、島の人たちに配るというのはどう?」

しかし、狗飼は顔を伏せた。「……無理よ。私、家元の祖母とは喧嘩して、もう何年も疎遠なんだから。進路のことで、大揉めに揉めて……」

気まずい沈黙が流れた。
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