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第3章 王都

舞い降りた天使sideシュバルツ

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父上から話があると呼ばれた。父上と話などあまりしたことがなかった。突然呼ばれたとなると、政略結婚の話かもしれない。私ももう19歳だ。十分結婚ができる年齢なため父上なら利用するだろう。実際私の結婚について話し合われているようだ。

「お呼びでしょうか。父上。」

「おお、来たか。シュバルツ。」

「どのようなご要件で?」

「実はな、お前に結婚して欲しいんだ。」

年齢を重ねても引き締まり色気のある足を組み、口角を上げる。
あぁ、やっぱりか。別に結婚が嫌なわけではない。好きな人と結婚したいなどとそんな馬鹿げたことも考えていない。

「わかりました。」

「……相手は聞かないのか?」

ただ、無関心だった。相手など誰でもいい。父上が選ぶ相手なら国のためになるのだろう。だから、誰でもいい。

「お前の相手は、だぞ?」

「……は?」

淡々と父上の話を聞いていたが、思わず自分の耳を疑ってしまった。てっきり他国の王子や、上位貴族の息子だと思っていた。のに、だと?!

「父上、もう一度おっしゃっていただけますか?近頃どうも耳が悪くなったようで。」

「……多分、お前の耳は正常だ。お前の結婚相手は平民の青年だ。」

まぁ、父上が言う相手ならきっとなんかしらメリットがあるだろう。きっと。

「実は今その青年は騎士団に保護されているのだが、ドラゴンと契約したそうなのだ。」

「……はい?」

「だからドラゴンと契約したのだ。」

「なっ?!」

ドラゴンと契約など、そんな鹿をする人なんていない。
ドラゴンはダンジョンに行けば会える。ダンジョン以外でもまれに現れる。だがそれと契約するなど無謀だ。
ダンジョン内ならまだしも野生のドラゴンなどその強さは未知だ。契約できたとしてもドラゴンが強すぎると契約者の命令など聞かないだろう。

あぁ、そうか。私と結婚させてその力を王家のものにするつもりなのか。

「父上、その青年を王宮へ連れてきて危険は無いのですね?」

「あぁ。少年が契約する時そのドラゴンと話をしていたそうだ。契約を結んだ後、そのドラゴンは誰一人襲わずそのまま飛び去った。」

「だから、危害は加えないと?」

「少なくともその少年が頼まなければな。」

「そうですか。わかりました。」

何日かしたあと、その青年が王宮に着いたと連絡が入った。天使だとか女神だとか城下では騒ぎになったらしい。騎士団長の恋人だとかそんな噂も出回ったが。

騎士団長であるデイヴィスの横に伏せた青年がいる。柔らかそうな髪に透き通るような肌。顔を上げてその容貌が明らかになり、私の心臓がとくりと鳴った。

美しい。城下の民が騒いでいたのがわかる。マサトはまさしく天使だった。今まで誰に心を動かされることも無く生きていたが、初めて欲した。
この美しい天使が自分のものになるなんてなんと幸福なのだろうか。

父上が自分の側室になどとほざく。すかさず異を唱える。マサトは私の妻なのだ。

大抵の者は私に頬を染める。可愛らしい少年も、また大柄な青年も。私が求婚すればすぐに答えてくれるだろう。

まさか、断られるとは思っていなかった。確かに、本人があの美貌なら仕方ないかもしれない。まぁ、諦めないが。もしかして、本当にデイヴィスの恋人なのか?

どうやら違うみたいだ。マサトに囁くとほんのり頬を染めた。あぁ、良かった。私にドキドキしてくれて。私たちを鋭い眼光で睨みつけてくるデイヴィスに優越感を味わう。思わず口角が上がった。

デイヴィスに手を引かれマサトが出ていく。ドアが完全に閉まってもまだ私はドアの方を眺めていた。
きっと私は今、笑顔だ。

はは、愛しいマサト。

必ず、君を私のものにするよ。​

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