【クソ彼氏から離れらんなくて】⑬クソ彼氏と手を繋いで歩こう。

あきすと

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①クロッカス

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昨日の事の様。
まだ、にわかには信じられずにいる。
ちょっと俺が眠りについた隙に、居なくなるんじゃないかって。

蓮花寺 朔ってのはそのくらい自由な人物である事に
変わりはないと思っていた。

『ひでぇ話…。俺どんだけ信頼されてないのか。』
「しょうがないじゃん、朔ってそういうイメージなんだから。」

2年の重みは確かになってはきてるけど、決定打に欠けるのは
やっぱり同性だから。だなんて、今更思うのは嫌だ。

同じアパートで、部屋も隣同士なのに。俺の部屋で暮らしてる。
このままでイイだなんて思わない。
でも、俺はもう出て行かれる事には耐えられない。
別々に暮らすのも、面倒が増えてくだけだし。

『腹へった~…央未、朝飯つくろ?』
「ヤだ、今日は…何て言うか楽したい。から、モーニングとか行かない?」
だらだらと折角の土曜の朝に、いつも通りの時間に目が覚めてしまった朔と俺。

冷えた腕に、熱い朔の手のひらが絡まって気持ちいい。
『あ、久し振りに…いいな?行こうぜ。俺、昔ちょっと行った事がある店に』
「…もしかして、クロッカス?」
『……そうそう、なんだ~お前にも言ってたっけ?』
「ん?言っては無いよ。昔、なんとなく朔が好きそうなお店を探してたら。この家からも近いしね。」

朔は、なんとなく嬉しそうに笑ってる。
どうしたんだろう?
『お前さ、本当に…そんなに、俺が好き?』
抱き寄せられて、不意に自分の行動や言動を振り返る。
「好きでも無い奴の事、こんなにも考えたりしない。それ程暇じゃないし。」

Tシャツの中に、無遠慮に朔が頭を突っ込んで来て
ぎゃはは、と俺が笑う。
ちょっと冷たい朔の頬が、お腹に触れる。
『朝から、ニヤニヤしそうで…自分がきんもい。』
「イケメンらしからぬ言葉じゃん?見せてみろよ…って、こらぁ…っ、」

体はまだ寝起きだから、何とも言えないダルさが残るのに
朔の唇や吐息がくすぐったくってもどかしい。

『行くんだろ?じゃ、準備しないとな。』
「そうだよ、馬鹿…。」
朔は、親指の腹で俺の臍のあたりを軽く押し擦って離れた。

いっこいっこが、手つきまでいやらしい。
ほんっとーに、あの顔で表情でそんな事されたら
心より、体の方が勝手に反応してしまいそうで悔しい。

「クロッカス、そういえば若い店員さんは言ってたよ。この前、閉店作業してるところ見た。」
『女の人?』
「男の人だったね。大人しそうで、人のよさそうな感じの。」
『お孫さん…かな?ま、とりあえず行ってみようぜ。』

すぐに、身支度を済ませて部屋の鍵を閉めてから朔と
歩きで通勤のルートを歩く。
「めっちゃ健康的じゃない?」
『朝からデートだろ?リア充見せびらかしじゃん。』
デート、かぁ。
確かにそう言われてみれば。

意識が薄れかけていたけど、付き合ってるんだった俺等。
「やめろよ、そんな今更。」
ネイビーのシャツからのぞく首筋や、腕がしっかり綺麗なラインを描いていて
改めてイケメンなんだよなぁ、と実感する。

『手、繋いどく?』
「…いいよ、外では。家では、繋ぐけど。」
『あのさぁ?家でも手ぇ繋ぐ方がむしろレアだからな。』

我慢するって言うよりかは、遠慮だ。
朔の隣に立っているのが、自分である事に今でも俺は
遠慮してしまう。
でも、ならばせめて…世間から見て友人という位置で。
と、思いながら。

「クロッカス、お店は小さいけどコーヒーもケーキも美味しいみたいだね。」
『何で、今まで一緒に行かなかったんだろうな。近いのに。』
「近いからじゃない?油断してた。」
『その、新しい子…気になるよな。いい子だといいな。』

10分位歩いて、小さなお店の看板が見えて来た。
お店の外に、1人多分俺と同年代程の男性が立っている。
もしかして、店内がいっぱいで待ちありになったのかな?

お店から、エプロンをつけた店員さんがその男性に頭を下げている。
「どうしたんだろう?」
『モメてんなら、ちょっと店員さんの味方すっけど。』
歩きながら横目で、チラッと長身の男性を見てみた。
店員さんは今にも泣き出しそうに困った顔で、謝っている。

結局、何もできずに店内に入った。
お店のマスターが、すぐにお水とおしぼりをテーブルに持って来てくれる。
「ありがとうございます。」
『…あの、店員さん、大丈夫なんですか?外で…』

まさか、朔がマスターに切り出すとは思っていなくて
俺は、茫然と朔を正面から見ていた、

マスターはすぐに笑顔になって、何の心配もいらないと言ってくれた。
すぐに、店内に外で謝っていた店員さんが戻って来た。
よく分からないけれど、マスターが心配いらないと言うのだから
きっと、大丈夫なのだろう。

朔と俺は、オーダーを通してもらって2人でたわいない話をしていた。
すると、先程外で店員さんに謝られていた長身の男性が店内に入って来た。
なんとなく、ハラハラしながら様子を見ていた。
『央未、分かんないか?』
「……へ、何が」
『さっきさ、店に入る前にあの背の高い方…店員さんの頭、撫でてたし。』

え?そんな事してたっけ。
見逃したかな。

「あた、ま…撫でるのは、え、ちょっと…それって」
『ちょっと、お互いに気がある感じしないか?』
「あ~…でも、うん…。頭撫でるのは事後って言うくらいだし。」

焼きたてのトースト、淹れたてのコーヒーに瑞々しいサラダと
フワフワのスクランブルエッグにが運ばれてきてすっかり思考は停止した。
シンプルだけど、定番のメニューらしくトーストの焼き具合もちょうどいい。

『人の恋路を邪魔するのは、無粋だからな。』
「もどかしいけどね、俺も片想いだった時期が懐かしいよ。」
『は?だれに』
いやいや、何を言い出すんだか。
「誰にって、そんなの……」

はっ!?危ない、危ない。流れで言ってしまいそうだったけど。
『誰かを想うのに、勇気っているのかな?』
「場合によるんじゃない、あー。でも、朔なら関係なさそう。」
『お前は、俺をほんっとーに何だと思ってるのか。』

苦笑いをして、朔はコーヒーを飲んでいる。

だって、浮気を全くしない。してないのは分かってるけど。
俺がいまだに、朔の外見と中身が自分の朔に対するイメージと
ズレている事に戸惑ってしまう。

もちろん、信じたいし信じてる。
でも、そういう事があっても…きっと俺は自分に納得をさせる為の
理由を朔に見つけ出そうとしている。
ひどい話だと思う。

「しないけど、サレる気がするのはずっと前からだよ。」
『良いよ、好きに思ってれば。俺は、お前がしないって言い切れてるならそれでいい。』

帰り際に、ケーキケースからレモンのタルトを2つ買って帰った。
今日のモーニングは、朔がおごってくれた。
「朔、ありがとう。美味しかったなぁ…一緒に来れて良かった。」
『もう、お互いに使うくらいしか無いもんなぁ、使い道。』
「今度は、俺が出すよ。次はドコ行こう?」

楽しい、こうやって次の自分たちの事を考えられるのが
純粋に楽しくて。
触れ合う事以外にも、色んな楽しみがこの先にもあるんだと思えて。
俺は左手にケーキの箱をもって、右手でこっそりと帰り道に
朔と少しの時間だけど手を繋いで帰った。
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