【クソ彼氏から離れらんなくて】⑬クソ彼氏と手を繋いで歩こう。

あきすと

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②傷をつけて

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そもそも、一旦長い期間の空白を作っても朔はまだ俺を
想ってくれていたのか?とか。
一回くらい、帰国してくれても良かったと思ったり…掘り返さなくても
いい事なのにまだ俺は時々ウジウジしてしまう。

嫌なヤツだなぁ、俺も。

だって、帰国して一番に帰って来てくれたのはやっぱり
嬉しかったってのに。
貪欲に、朔を求めている。

何の、誰の代わりでもない朔が良い。

俺の想いは、ちゃんと伝わっているのかな?って女々しく考えて
帰宅する朔を今日も出迎える。
スーツがなんか、ホストみたいで。
昔は、もっと似合わなくて笑っちゃたけど。
今は、ドキッとする色気と憂いがあるから妙に恐い。

「お帰りなさい、朔。」
俺もスーツは本当に今でも似合わない。
完全に着られている。
玄関のライトがパッとついて、朔の頭頂部が照らされる。
『ただいま。はぁー、外めっちゃ蒸し暑い。』
「だろうね、エアコン入れてあるよ。お風呂にする?それともシャワー?」
鞄を受け取って、朔の後を歩いてついていく。

『…風呂かぁ、シャワーだとあんまりサッパリしないからな。』
「うん、エアコンで冷えてるしね、体。」
『お前、もう一緒に入れよ。めんどくせー』

あぁ、もう。また始まった。
ご飯作ろうとしてるのに、そんな事言われたら
「ヤダよ、朔絶対ちょっかい出してくるし。のぼせたくない。」
『さすがに、この暑い時期には風呂場で盛らないって。』
信用ならないから、スルーしとこう。

「ダメだって。俺は夕飯作ってるからさ。先にドウゾ。」
リビングで赤いエプロンを締めてると、朔が俺をジッと見て
『お前、結構?赤好きだよな。』
「…そぉ?これさー朔がくれたんじゃん。結構前にだけど。」
忘れてんのかよ、まったく。

『似合うよなぁ…、じゃ。』
意にも介さない男・朔はそのまま風呂場に向かった。

「あいつ、マイペースすぎるし。」
ついて行けない、ってことも無いけど。
気が楽ではある。

俺も、冷蔵庫から食材を取り出して野菜を洗って下ごしらえをする。
自然と鼻歌を歌っている。昔の朔が、よくライブで歌っていた曲だ。
イケメンで、育ちも良くて、頭もそこそこ良くて、優しくて。
声も良いし歌もうまい、楽器も出来て女にモテる。

漫画みたいな人物だと思う。
笑ってしまう。そんな人ってなかなか居ない。
ただ、残念な事に朔はわりと俺に関してはただの変態だから。
神様は、その部分で調節したんだろう。

しばらくして、朔が風呂を出てリビングで涼んでいる。
今の時期は暑いからって、甚兵衛を着てる。
いや、ふつーに見飽きてるけどさ。カッコいいよ、うん。
毎年の事なのに、グッとくるけどさ。
白も、黒も藍もどれも本当にすんなりと似合ってる。

『あつーい…なぁ、冷酒とか今年は嗜まない?』
「へ…?さすがに、うちには置いてないよ。ビールかハイボールくらいしか。」
『そっかぁ、明日実家で余ってそうな酒でも貰ってくるかなぁ。』
「あー、いくつか置いてはありそうだよね。」
『ここのベランダだと、ちょっと夕涼みには人目が気になるけどさ。』
「朔の家は、無条件に似合うもんね。縁側も広いし、」
『うん、でも…どこか、より誰と過ごすかが大事だもんな。』

団扇で俺を仰いでくれる朔が、すぐ傍に来た。
「…今日は魚も追加。」
『家で、柵切りをさばくなんてマメだな。』
「手間だけど、その分は安いしね。」
『央未って、意外なんだよなぁ。いつもそう思う。』
「料理の事?」
『それもあるけど、なんか当たり前に昔から自活してたろ。』

子供の頃から、俺は鍵っ子だったから。
自分の世話は自分でする子供だったのは、間違いない。

「俺は、親の事恨みも憎みもしてないよ。おかげで結構出来る事が増えたからさ。」
『そういうトコだよ。俺は、こういう相手だから上手くいってるんだなぁって思う。』
「楽でしょ?」
『すごく。』
「じゃぁ、朔は昔からお目が高いって事だね。」

フフフッとと笑っていると
『お互いにな。』
朔が片手で、俺の頬に触れた。生暖かい手の温度。
短い爪の長さに、ちらっと視線を移すと
『お前って、ほんと…無意識に誘うなよ。』
気が付いたらしい、朔に一笑された。

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