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朔の望む世界
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いつだったかな?
まだ、確か朔がクソ彼氏では
なかった時に、
あんまりにも優しく抱くものだから
俺は、何て表したらいいのかも
分からずに、
ただ泣いて、赤くなった目の
朔に抱かれていた。
離れたくないなぁ、
できれば一生…と
思っていた。
性別なんかは、とうに
越えていたから
後は、気持ちの落とし所か。
今夜の朔は、まだやっぱり
半分くらいが
おちゃらけてる。
帰国してすぐに、男を
抱くなんてさ。
ホントに酔狂じみてて
やっぱり朔は面白いけど。
俺まだ、微妙にさ
心の準備が整いきってない。
共にあった時間を
断たれたとまでは、思わなくても
わだかまりが、少し残る。
だから、朔に
打ち砕いて欲しい。
体の奥から、熱を感じて
ジンジンするみたいに
どこか期待して、震えてる。
指が抜き去られて
自分の下の方で
ゴソゴソと何かをしてる
気配に気づく。
『ま、別に要らないんだろうけど、央未も後々面倒だろ…』
リビングでするのも
どうかと思ったけど
多分、朔は気にもしてないか。
小さな箱から、個装された
ゴムを取り出してる音が
やけに生々しい。
装着してる姿がなんだか
滑稽で笑った事もあったけど、
今回は、そんな余裕ない。
妙な後ろめたさが、
ずっとつきまとうから。
考えるの、やめなきゃ。
だって今は、朔にだけ
没頭したい。
「んぁ…っ、」
蕾に、滑った感触が
ずにゅっ、と割り入ってくる。
「ぁ…、あ…、さく…っ、ちょっ…、ぃた……」
眉根を寄せ、圧迫感が
辛くて、腰が逃げる。
朔は、何も言わずにただ
俺の腰を押さえ込んで
慎重そうに、ゆっくりと
腰を沈める。
声は、届いてるはずなのに…
朔、なんで?
『息、止めるな…央未。』
こんな時は、真剣な瞳で
俺を見つめるから
ホント、朔はずるい。
脚をかかげられて
眼に映るのは、朔の
腹筋とまくれたシャツに
繋がり合う箇所。
めっちゃ、朔がエッチで
なんかもう
恥ずかしくて、手の甲で
顔を隠した。
『央未の中に、ずっと置いて来たのかもな…俺は。』
何を言い出すのかと
思いながら、朔を見てみると
ヘラヘラとした笑顔が
返された。
「ね~、コレ動かれたら…内臓どうにかならない?」
『…俺が、央未の中を撫でてる感じ。』
「なで、…てはないでしょ。突くんだから。」
『自分で言うのもなんだけど、気持ちよくしてあげるのは、得意。』
自信あるっぽいけど、
こっちの身が持つかな?
久しぶりだから、なんかもう
刺激が強すぎるかも…。
「…朔、ゆっくりなら動いていいよ。」
『すごい、中の圧…感じる。』
息を乱しながら、スイートスポットをお腹から探られて
ひんひん泣きそうになりつつも
朔からの快楽を手放したく
なくて、俺は目をつむって
朔と、体内に集中する。
湿った音と、抽挿の音が
やたらと耳に伝わって
いたたまれない。
朔が、無口になって
腰を揺する姿は見えないけど、
たまに聞こえる
息遣いでさえも、男を
ただ感じさせる。
朔は、昔より色気が増して
相変わらず綺麗な黒髪が、
カッコいい。
センターパートがよく似合う。
額も良い形で、いう事なし。
そんな朔が、目の前の俺に
半ば真剣になって
腰を振ってるなんて
夢みたいで、まだ嘘みたい。
たくさん、中にくれても良いのに
なんて、思ってたら、
グッと深く抱きしめられて
キスを交わす。
ホント、好きなんだなぁ…。
口腔内でも舌を絡め合い
歯列をなぞる。
打ち付ける様なピストンに
変わると、逃げられもせず
朔の熱を腹の中で
間接的に受け止めた。
俺は、まだ半端に頭をもたげたままの自身の事はさておき
ドッ、と疲労感に襲われる。
気持ちいい、フワフワなんて
夢物語ではなくて。
股関節とか腰の違和感と
この後戦うこととなる。
朔は、額ににじむ汗を
手の甲で拭うと
そのまま、俺を抱き締めながら
崩折れてゆく。
朔の手が、俺のに
触れようとしているのが分かり
「触んないで…疲れた、」
やんわりと、朔の手を捕まえた。
『出さないの?央未…』
「うん…汚れちゃうし、しばらく
放っておけば治るから。」
『まぁ、さっき出したからな…』
「そうそう。」
面白く無さそうに、朔が顔を
しかめたかと思えば
『抜くよ…』
体内に残されたままの
残滓が入ったコンドームと
自身を抜き去る。
「あぁん…、っ」
居なくならないで。
って思うのはおかしいかな?
『ははっ、スケべは央未だな。』
朔は、手際よく後処理をしていた。
「朔なら、ゴムなんてしないと思ったけど…」
『俺、どれだけクソ彼氏なんだよ。』
「えー、だって…朔って俺の中ではそんなイメージばっかりあるけどなぁ。」
『さすがにもう、相手のこと考えるよ。』
「ね、…ちゃんと気持ちよかった?」
『3年ぶりには、なかなかの刺激だったカモ…一時期まったく性欲なくて、仙人にでもなったかと思ったし。』
こんな時でも、朔はカラッと
笑ってる。
「俺も、ほとんど為すがままだった。腰抜けるかと、思った。」
『10代の頃が、異常だったんだよ。大学、休みに
なるたんびに…ヤッちゃあ寝だなんて、健全すぎるって。』
「今は、そこまでには戻らなくていいって思うもん。」
今の内に、聞いてみようかな?
一体、朔はどんな勉強をしに海外に
留学してたのか。
『喉乾いた…央未もなんか飲む?そういえば、
お前の冷蔵庫、酒の一つも無くて感心した。』
朔が立ち上がり、台所の冷蔵庫を開けた。
「水がいい。…あぁ、酒は疲れるから飲まない。」
『仕事終わって、帰って来て…晩飯食べて、風呂入って寝るだけ?』
日々なんて、そんなものだろうに。
「そう。」
『枯れかけてない?大丈夫か…って、俺も人の事は言えないけど。』
「生活だから、俺は平気。…でも、寂しさは忘れてなかった。」
『寂しさって、大事でさ…俺は一番感じにくい思いだと思ってた。』
「確かに、朔とは縁遠い言葉の気もするけど。…でも、本当にそうなのか?」
だったら、どうして帰国早々に
今この俺と一緒にいるのかを
説明できる?
ってのは、意地悪かな。
『ずっと変わらない日々って、俺には色あせて感じる。』
朔に貰ったペットボトルを開けて
水分を補給すると、
ほっとした。
乾きが、満たされて
心に余裕が持てそう。
「朔、何を勉強しに行ってたんだ?」
『ん?知りたい?』
朔が俺の隣に座って、にこりと
悪戯な笑みを浮かべる。
朔はレモンティーを飲みながら
こっちを見ている。
「知りたい。…って、朔それにしたのか。相変わらず紅茶好きだなぁ。」
『こっちの紅茶飲料って、ちょい甘いけど味が良いからさ。…俺は留学してたのは
実は仕事の為。だから、帰国後もすぐに雇ってもらえた。細かくはまだ言えないけど。』
「たまに、俺の会社でもそういう話聞くけど。そっか、もともと
ゆるゆるな朔ではあるけど、デキるもんなぁ…お前。」
将来が見えないなんて、言っていた朔が。
信じられないけど。
随分としっかりしてきたんだなぁと
感慨深いもので。
『勝手に転がり込む訳にもいかないから、なるべく早く
自分で部屋探すから。』
「…その方がいいな、うん。」
今、この距離感は嘘ではない。
もう朔ならすぐに
部屋を見つけるだろうし。
『…ほら、央未また寂しそう。』
頬を朔が撫でてくる。
しばらくは、一緒だけど
やっぱり別々に暮らすだろうとは
思っていたけど。
「寂しいことも無い。でも、ちょっと舞い上がってたかも。」
『あ、久しぶりに明日墓参り行くわ。』
「ちゃんと報告に行くんだな、エライエライ。」
朔の黒髪を撫でる。
ハリのある綺麗な髪。
一度も染めたことのない髪は
俺からすれば、レアだと思えた。
『言い忘れたら困るから、言うけど』
「ん?」
『央未、今度は俺から言いたかった。』
何だろう?
『付き合ってください、柊木 央未さん。』
…え、ナニコレ?
新手のギャグ?
ボトッ、と手にしていた
ペットボトルを
思わず床に落としてしまった。
マトモに付き合ってきた
つもりもなかったし、
このまま、曖昧な関係に終わる
気配はあったから
まさかの朔からの
告白には俺も、驚きを
隠せなかった。
どうして、今更。
「付き合うって、朔にとってどう言う事なんだよ?」
今はクソ(元)彼氏で
たとえば、付き合ったとして
ホントに、朔は俺の側に
いてくれるだろうか?
いや、無理だろうな。
『分からない…央未と告白して付き合ってきた訳でもないし。』
こうなるよな。
だからこそ、朔の告白は
不穏に思える。
何も言わなくても
お互いが必要な時に
会えてれば、今までは
付き合い方もたしかに歪んでた。
『多分、今までとそんなに変わらないだろうけど。』
よっ、と朔は俺が
落としたペットボトルを
拾い上げて返してくれた。
「じゃあ、わざわざ告白なんてしなくても、俺は…朔の事からは離れられないんだから。」
ありがと、と受け取って
もう1度、水を飲んで
冷静さを取り戻したかった。
『また、同じ事の繰り返しになるのは、ダメだと思うから。』
どうなんだろう?
少しは、朔の中に変化が
起きているとすれば。
期待していいのかな。
「付き合うってのは、朔が望まない形なんだよね、世間一般的には。」
『あぁ、浮気をしない、とか?』
「そうそう。」
『俺、浮気した事ないし…』
どうだか。
「女の子と飲みに行ってたろ?」
『行きはしたけど、俺は酒に弱いし途中で眠くなって帰るんだよなぁ…。無理してまで居ても、って思うから。』
案外真面目と言うか、
節制はできていたみたい。
「家に呼んだりは、」
『ウチは、出来ないからな。親父がうるさかったし。』
「率直に、聞くけどさ…」
ん?と朔が、首を傾げた。
「俺といた間に、女の子とキスしたり、えちえちしたりは…なかったの?」
朔は、キョトンとして
そのうち笑い始めた。
『あのさー、俺、どれだけ信用されてなかったの?…ないよ。何て言えばいいのかな、俺は央未の味だけが知りたいのに、そんな他の人の事まで構ってられない。』
味って…、
「そ、そういうモノ?」
『うん。1つの味を堪能したいって思った。特に…央未は昔からの特別だし。』
クソ彼氏、じゃなかったのか。
朔って。
「でも、急にいなくなったりは?」
『言い訳がましいけど、ギリギリまで俺は粘って…できればコッチに残りたかったのに、会社からの連絡があって、本当は予定していた留学の話が1人、ダメになって。それで急遽、俺が行く事になったんだ。』
「じゃあ、時間もなかったんだろうなぁ。」
『とにかく、荷造りしたり、部屋を片したりしてたら、後の事は気が回らなかった。ゴメン。』
もう、学生の頃みたいに
子供っぽい想いじゃ
いけないのかもしれない。
「俺、朔が帰って来たの…夢かと思う。」
『現実だよ、限りなく…』
朔の腕に抱かれて
キスを交わし、
緩く舌を絡めながら
目をつむる。
大事にされてるのは
勘違いじゃなければいいのに。
朔は優しい。
でも、その優しさが
時々怖いんだ。
朔は言い出せない問題を抱えると
俺の前から、居なくなる。
前にも、あった話だった。
強くて、優しい
でも本当は弱い部分も
併せ持つ朔が好きで。
守ってあげなきゃって
思えるんだ。
「朔…、答えは出さないから。朔の好きな様にしていい。」
『央未…。』
「断る理由も無かったけど、俺が朔を好きで始まった関係のままで、良くない?」
『央未が、それでいいなら。』
少し体を休めて、また芯に
火がともり始めたのは
お互い様の様。
俺は、猫の様な体勢で
今度は後ろから
朔のものを受け入れていた。
中を、こそがれるみたいに
ガツガツした刺激に
思考する事をやめて、俺は
ただ快楽のまま
嬌声を上げ、腰を揺らめかせた。
恥も外聞もなく、
しどけない姿を
朔に見せつけて
体を引きつらせながら
精を吐き出す。
「はぁ…っ、さく…ぅぅっ!あたまおかひく、なっひゃう…ぁあっ、ゴリゴリひもちぃよぉ…っ、」
『央未、またイッた?…』
理性のない交わりが、
何の罪悪感もなくて
ただ、繋がってる事の
幸福感と快楽に酔いしれながら
俺は、腹の奥に朔の熱い
ほとばしりを受け止めた。
一晩がとても、長く
長く感じられたのは
久しぶりだった。
鈍くゆるやかな体の
疲労感とか、
細かな痛みは
体を開いた代償でもある。
朝になれば、
いなくなってるのかな?って
思ったのに。
目を覚ますと、ちゃんと
寝室にいて
隣には、朔が眠っていた。
以前、望んでいた世界だ。
朔の寝顔は、すっきりと
相変わらずの爽やかさで
俺の胸が勝手に騒ぎ出す。
どれほどに想ってるのか、
伝わったかな?
まだ、タオルケットに
くるまって
まどろみの中を
朔と一緒にユラユラとしていたい。
笑顔が込み上げて来て
たまらずに、朔の頬へと
口付けた。
『…央未さぁ、うなされてたよ。』
おはよぉ、とのんきに
目を覚ました現、クソ彼氏は
今日も朝からフワフワで
俺の気持ちなど知らずに
腰に絡みつく。
「なぁ…っ、触んな!」
『え~なんで?』
「…いや、身体がガタガタであちこち痛いんだよ。」
『ぁー…そっかぁ。ごめんね?』
ゆるゆると手が解けて
のそっと、朔は起き上がる。
顔でも洗いに行くのかな?
ちらっと、背後を見送ると
いつのまにか紫煙が立ち上っていた。
「ぅおい!朝起きてすぐ?」
『今じゃなきゃ、イツ吸うの?』
はいはーい、と手を軽く
上げて朔はベランダに出て行く。
くしゅっとなった
朔の後ろ髪が…やだなぁ
可愛く見える。
頭、湧いてるもんなぁ俺。
足ほっそ!!
カラスみたいだ。
ベランダの手すりに
うなだれて、
煙草を味わって。
時折、こっちを振り向いて
ニマッと笑う。
あー、腹立つ。
ハイハイ、
好きですけど?
ご馳走様ですね!
って、頭の中のてんやわんや。
朔は朝食の準備まで
していてくれたから
かなり助かった。
正直今は、あんまり
動きたくないから。
『…朝の空気、気持ちよかった。』
満足げに、朔はベランダから
今に戻り。
煙草の始末をした。
ようやく、洗面所に向かい
「ちょっとは、本数減らせよ。」
『…ぁ、それは無理。ね、歯ブラシ新しいの使っていい?』
ガタ、と音がして
朔が洗面所の鏡台の下の
引き出しを開けている。
「好きなの開けて。」
『辛くない歯磨き粉がいいんだけど…まだ、あ…あった。』
「…朔?」
よたよたとなりながら、
洗面所に行って
『なんだ、これ…央未も使ってんだ?』
「うん。使ってみると、良かったからさ。ても、朔は新しいの開けろよ。」
ハイ、と新しい歯磨き粉を
朔に渡した。
『…央未は、俺の事ばっかり考えて生きてるよね。』
「誰のせいだよ!…お前が言うな。だから、嫌だったのに。」
頭の中の黄昏でいっぱいの
風の旅人みたいな
朔を想うのは、切なくて
辛いのに。
『好きって、悔しい事なの?』
歯磨き粉をし始めた
朔は目線だけを俺に
向けている。
「さぁ?多分…自分ばっかり好きなのは、フェアーじゃないって思うんじゃないか?」
朔が眉根を寄せて、顔をしかめる。
あぁ、多分気に入らない
答えを俺が言ったからだろうな。
「ちょっと…トイレ。」
嫌な予感がして、トイレに
向かった。
腹痛は無かったけど。
一気に脱力した。
何も残らないし、
と言えばそれまでだけど。
朔という人間を愛する事は
俺にとってはごく自然な事で
本能的だとさえ思える。
手を伸ばせば、遠ざかり
急に戻って来てくれる。
こんなにも、心を掻き立てる
人間に、魅力を感じない筈がない。
人間的な魅力を感じて仕方ない。
もちろん、傷つく事もあったけど
朔の分かりにくい
繊細さが、痛くて苦しくて
俺の心には響く。
何にも言わないで
自由を選んだと見せて
本当は、真逆だった事。
なんかもう、全然クソ彼氏
じゃない。
コンコン、とトイレのドアが
ノックされた。
『大丈夫?お腹、いたい?』
ギャーー、
ここは、ほっといてくれよ。
「お前、何想像してんのか知らんけど…違うからな。気を使って部やに戻ってくれよ。」
『…俺のせい、かなぁって。』
正に、そう!!
って、言えるはずもないし。
「平気だから。ちょっと考え事してただけ。後、腰痛くて…座ると次に立つまでがキツイだけ。」
『分かった…。』
はぁ、ホント。
なんか調子狂う。
「お待たせ…」
『ゃ、実は俺もトイレしたかったんだよね~』
そそくさと、朔が隣を
通り過ぎて行く。
やっぱアイツ、駄目だな。
100歩譲って!
ね、心配はしてた様だから
気にしないでいてやろう。
朔は、朝食をあたためたり
フライパンで何かを
焼いてるみたい。
匂い的に、
「フレンチトーストじゃん。」
少し甘い香りが台所に
漂っていた。
「アイツ、火ぃ付けたままで…」
火加減を確認して、
焼きあがるのを待つ。
『朝から、しつこいかな?』
早速戻ってきた朔が、
すぐ隣に立って
火をチラッと見て言った。
「そんな事ない、それに美味しそう。」
『え~、嬉しい。』
「お前頭クシャクシャ…、」
『今日、湿度高いからね。』
「さーくーーーー、」
『何だよ!…なぁんてね。』
おかしそうに笑いながら
朔はフライ返しを片手に
まるで、獲物を狙う様な
真剣な目付きで、
フレンチトーストを裏返した。
『…幸せな匂い。』
「プリンの匂い…」
『央未は、たまには実家帰ってんだろ?』
「盆と正月くらいはね。」
『偉いよ。俺もそろそろ言われそう…と言うか、姉貴が見合いしろってうるさくて。』
「お見合い?」
『このご時世にさ、珍しいだろ?』
「そうでもないよ、今はまた…増えてきてるだろうし。」
朔が、眼を細めて
『そんな、何処の誰かもわからない相手と…俺が?』
口調は、少し険しい。
「朔は、どうしたいの?」
『央未次第、とは、言わないけど。姉貴は婿養子だからな。家には近寄りにくい。』
「俺らも、そういうお年頃だもんなぁ。」
人ごとではない。
まだ、確か朔がクソ彼氏では
なかった時に、
あんまりにも優しく抱くものだから
俺は、何て表したらいいのかも
分からずに、
ただ泣いて、赤くなった目の
朔に抱かれていた。
離れたくないなぁ、
できれば一生…と
思っていた。
性別なんかは、とうに
越えていたから
後は、気持ちの落とし所か。
今夜の朔は、まだやっぱり
半分くらいが
おちゃらけてる。
帰国してすぐに、男を
抱くなんてさ。
ホントに酔狂じみてて
やっぱり朔は面白いけど。
俺まだ、微妙にさ
心の準備が整いきってない。
共にあった時間を
断たれたとまでは、思わなくても
わだかまりが、少し残る。
だから、朔に
打ち砕いて欲しい。
体の奥から、熱を感じて
ジンジンするみたいに
どこか期待して、震えてる。
指が抜き去られて
自分の下の方で
ゴソゴソと何かをしてる
気配に気づく。
『ま、別に要らないんだろうけど、央未も後々面倒だろ…』
リビングでするのも
どうかと思ったけど
多分、朔は気にもしてないか。
小さな箱から、個装された
ゴムを取り出してる音が
やけに生々しい。
装着してる姿がなんだか
滑稽で笑った事もあったけど、
今回は、そんな余裕ない。
妙な後ろめたさが、
ずっとつきまとうから。
考えるの、やめなきゃ。
だって今は、朔にだけ
没頭したい。
「んぁ…っ、」
蕾に、滑った感触が
ずにゅっ、と割り入ってくる。
「ぁ…、あ…、さく…っ、ちょっ…、ぃた……」
眉根を寄せ、圧迫感が
辛くて、腰が逃げる。
朔は、何も言わずにただ
俺の腰を押さえ込んで
慎重そうに、ゆっくりと
腰を沈める。
声は、届いてるはずなのに…
朔、なんで?
『息、止めるな…央未。』
こんな時は、真剣な瞳で
俺を見つめるから
ホント、朔はずるい。
脚をかかげられて
眼に映るのは、朔の
腹筋とまくれたシャツに
繋がり合う箇所。
めっちゃ、朔がエッチで
なんかもう
恥ずかしくて、手の甲で
顔を隠した。
『央未の中に、ずっと置いて来たのかもな…俺は。』
何を言い出すのかと
思いながら、朔を見てみると
ヘラヘラとした笑顔が
返された。
「ね~、コレ動かれたら…内臓どうにかならない?」
『…俺が、央未の中を撫でてる感じ。』
「なで、…てはないでしょ。突くんだから。」
『自分で言うのもなんだけど、気持ちよくしてあげるのは、得意。』
自信あるっぽいけど、
こっちの身が持つかな?
久しぶりだから、なんかもう
刺激が強すぎるかも…。
「…朔、ゆっくりなら動いていいよ。」
『すごい、中の圧…感じる。』
息を乱しながら、スイートスポットをお腹から探られて
ひんひん泣きそうになりつつも
朔からの快楽を手放したく
なくて、俺は目をつむって
朔と、体内に集中する。
湿った音と、抽挿の音が
やたらと耳に伝わって
いたたまれない。
朔が、無口になって
腰を揺する姿は見えないけど、
たまに聞こえる
息遣いでさえも、男を
ただ感じさせる。
朔は、昔より色気が増して
相変わらず綺麗な黒髪が、
カッコいい。
センターパートがよく似合う。
額も良い形で、いう事なし。
そんな朔が、目の前の俺に
半ば真剣になって
腰を振ってるなんて
夢みたいで、まだ嘘みたい。
たくさん、中にくれても良いのに
なんて、思ってたら、
グッと深く抱きしめられて
キスを交わす。
ホント、好きなんだなぁ…。
口腔内でも舌を絡め合い
歯列をなぞる。
打ち付ける様なピストンに
変わると、逃げられもせず
朔の熱を腹の中で
間接的に受け止めた。
俺は、まだ半端に頭をもたげたままの自身の事はさておき
ドッ、と疲労感に襲われる。
気持ちいい、フワフワなんて
夢物語ではなくて。
股関節とか腰の違和感と
この後戦うこととなる。
朔は、額ににじむ汗を
手の甲で拭うと
そのまま、俺を抱き締めながら
崩折れてゆく。
朔の手が、俺のに
触れようとしているのが分かり
「触んないで…疲れた、」
やんわりと、朔の手を捕まえた。
『出さないの?央未…』
「うん…汚れちゃうし、しばらく
放っておけば治るから。」
『まぁ、さっき出したからな…』
「そうそう。」
面白く無さそうに、朔が顔を
しかめたかと思えば
『抜くよ…』
体内に残されたままの
残滓が入ったコンドームと
自身を抜き去る。
「あぁん…、っ」
居なくならないで。
って思うのはおかしいかな?
『ははっ、スケべは央未だな。』
朔は、手際よく後処理をしていた。
「朔なら、ゴムなんてしないと思ったけど…」
『俺、どれだけクソ彼氏なんだよ。』
「えー、だって…朔って俺の中ではそんなイメージばっかりあるけどなぁ。」
『さすがにもう、相手のこと考えるよ。』
「ね、…ちゃんと気持ちよかった?」
『3年ぶりには、なかなかの刺激だったカモ…一時期まったく性欲なくて、仙人にでもなったかと思ったし。』
こんな時でも、朔はカラッと
笑ってる。
「俺も、ほとんど為すがままだった。腰抜けるかと、思った。」
『10代の頃が、異常だったんだよ。大学、休みに
なるたんびに…ヤッちゃあ寝だなんて、健全すぎるって。』
「今は、そこまでには戻らなくていいって思うもん。」
今の内に、聞いてみようかな?
一体、朔はどんな勉強をしに海外に
留学してたのか。
『喉乾いた…央未もなんか飲む?そういえば、
お前の冷蔵庫、酒の一つも無くて感心した。』
朔が立ち上がり、台所の冷蔵庫を開けた。
「水がいい。…あぁ、酒は疲れるから飲まない。」
『仕事終わって、帰って来て…晩飯食べて、風呂入って寝るだけ?』
日々なんて、そんなものだろうに。
「そう。」
『枯れかけてない?大丈夫か…って、俺も人の事は言えないけど。』
「生活だから、俺は平気。…でも、寂しさは忘れてなかった。」
『寂しさって、大事でさ…俺は一番感じにくい思いだと思ってた。』
「確かに、朔とは縁遠い言葉の気もするけど。…でも、本当にそうなのか?」
だったら、どうして帰国早々に
今この俺と一緒にいるのかを
説明できる?
ってのは、意地悪かな。
『ずっと変わらない日々って、俺には色あせて感じる。』
朔に貰ったペットボトルを開けて
水分を補給すると、
ほっとした。
乾きが、満たされて
心に余裕が持てそう。
「朔、何を勉強しに行ってたんだ?」
『ん?知りたい?』
朔が俺の隣に座って、にこりと
悪戯な笑みを浮かべる。
朔はレモンティーを飲みながら
こっちを見ている。
「知りたい。…って、朔それにしたのか。相変わらず紅茶好きだなぁ。」
『こっちの紅茶飲料って、ちょい甘いけど味が良いからさ。…俺は留学してたのは
実は仕事の為。だから、帰国後もすぐに雇ってもらえた。細かくはまだ言えないけど。』
「たまに、俺の会社でもそういう話聞くけど。そっか、もともと
ゆるゆるな朔ではあるけど、デキるもんなぁ…お前。」
将来が見えないなんて、言っていた朔が。
信じられないけど。
随分としっかりしてきたんだなぁと
感慨深いもので。
『勝手に転がり込む訳にもいかないから、なるべく早く
自分で部屋探すから。』
「…その方がいいな、うん。」
今、この距離感は嘘ではない。
もう朔ならすぐに
部屋を見つけるだろうし。
『…ほら、央未また寂しそう。』
頬を朔が撫でてくる。
しばらくは、一緒だけど
やっぱり別々に暮らすだろうとは
思っていたけど。
「寂しいことも無い。でも、ちょっと舞い上がってたかも。」
『あ、久しぶりに明日墓参り行くわ。』
「ちゃんと報告に行くんだな、エライエライ。」
朔の黒髪を撫でる。
ハリのある綺麗な髪。
一度も染めたことのない髪は
俺からすれば、レアだと思えた。
『言い忘れたら困るから、言うけど』
「ん?」
『央未、今度は俺から言いたかった。』
何だろう?
『付き合ってください、柊木 央未さん。』
…え、ナニコレ?
新手のギャグ?
ボトッ、と手にしていた
ペットボトルを
思わず床に落としてしまった。
マトモに付き合ってきた
つもりもなかったし、
このまま、曖昧な関係に終わる
気配はあったから
まさかの朔からの
告白には俺も、驚きを
隠せなかった。
どうして、今更。
「付き合うって、朔にとってどう言う事なんだよ?」
今はクソ(元)彼氏で
たとえば、付き合ったとして
ホントに、朔は俺の側に
いてくれるだろうか?
いや、無理だろうな。
『分からない…央未と告白して付き合ってきた訳でもないし。』
こうなるよな。
だからこそ、朔の告白は
不穏に思える。
何も言わなくても
お互いが必要な時に
会えてれば、今までは
付き合い方もたしかに歪んでた。
『多分、今までとそんなに変わらないだろうけど。』
よっ、と朔は俺が
落としたペットボトルを
拾い上げて返してくれた。
「じゃあ、わざわざ告白なんてしなくても、俺は…朔の事からは離れられないんだから。」
ありがと、と受け取って
もう1度、水を飲んで
冷静さを取り戻したかった。
『また、同じ事の繰り返しになるのは、ダメだと思うから。』
どうなんだろう?
少しは、朔の中に変化が
起きているとすれば。
期待していいのかな。
「付き合うってのは、朔が望まない形なんだよね、世間一般的には。」
『あぁ、浮気をしない、とか?』
「そうそう。」
『俺、浮気した事ないし…』
どうだか。
「女の子と飲みに行ってたろ?」
『行きはしたけど、俺は酒に弱いし途中で眠くなって帰るんだよなぁ…。無理してまで居ても、って思うから。』
案外真面目と言うか、
節制はできていたみたい。
「家に呼んだりは、」
『ウチは、出来ないからな。親父がうるさかったし。』
「率直に、聞くけどさ…」
ん?と朔が、首を傾げた。
「俺といた間に、女の子とキスしたり、えちえちしたりは…なかったの?」
朔は、キョトンとして
そのうち笑い始めた。
『あのさー、俺、どれだけ信用されてなかったの?…ないよ。何て言えばいいのかな、俺は央未の味だけが知りたいのに、そんな他の人の事まで構ってられない。』
味って…、
「そ、そういうモノ?」
『うん。1つの味を堪能したいって思った。特に…央未は昔からの特別だし。』
クソ彼氏、じゃなかったのか。
朔って。
「でも、急にいなくなったりは?」
『言い訳がましいけど、ギリギリまで俺は粘って…できればコッチに残りたかったのに、会社からの連絡があって、本当は予定していた留学の話が1人、ダメになって。それで急遽、俺が行く事になったんだ。』
「じゃあ、時間もなかったんだろうなぁ。」
『とにかく、荷造りしたり、部屋を片したりしてたら、後の事は気が回らなかった。ゴメン。』
もう、学生の頃みたいに
子供っぽい想いじゃ
いけないのかもしれない。
「俺、朔が帰って来たの…夢かと思う。」
『現実だよ、限りなく…』
朔の腕に抱かれて
キスを交わし、
緩く舌を絡めながら
目をつむる。
大事にされてるのは
勘違いじゃなければいいのに。
朔は優しい。
でも、その優しさが
時々怖いんだ。
朔は言い出せない問題を抱えると
俺の前から、居なくなる。
前にも、あった話だった。
強くて、優しい
でも本当は弱い部分も
併せ持つ朔が好きで。
守ってあげなきゃって
思えるんだ。
「朔…、答えは出さないから。朔の好きな様にしていい。」
『央未…。』
「断る理由も無かったけど、俺が朔を好きで始まった関係のままで、良くない?」
『央未が、それでいいなら。』
少し体を休めて、また芯に
火がともり始めたのは
お互い様の様。
俺は、猫の様な体勢で
今度は後ろから
朔のものを受け入れていた。
中を、こそがれるみたいに
ガツガツした刺激に
思考する事をやめて、俺は
ただ快楽のまま
嬌声を上げ、腰を揺らめかせた。
恥も外聞もなく、
しどけない姿を
朔に見せつけて
体を引きつらせながら
精を吐き出す。
「はぁ…っ、さく…ぅぅっ!あたまおかひく、なっひゃう…ぁあっ、ゴリゴリひもちぃよぉ…っ、」
『央未、またイッた?…』
理性のない交わりが、
何の罪悪感もなくて
ただ、繋がってる事の
幸福感と快楽に酔いしれながら
俺は、腹の奥に朔の熱い
ほとばしりを受け止めた。
一晩がとても、長く
長く感じられたのは
久しぶりだった。
鈍くゆるやかな体の
疲労感とか、
細かな痛みは
体を開いた代償でもある。
朝になれば、
いなくなってるのかな?って
思ったのに。
目を覚ますと、ちゃんと
寝室にいて
隣には、朔が眠っていた。
以前、望んでいた世界だ。
朔の寝顔は、すっきりと
相変わらずの爽やかさで
俺の胸が勝手に騒ぎ出す。
どれほどに想ってるのか、
伝わったかな?
まだ、タオルケットに
くるまって
まどろみの中を
朔と一緒にユラユラとしていたい。
笑顔が込み上げて来て
たまらずに、朔の頬へと
口付けた。
『…央未さぁ、うなされてたよ。』
おはよぉ、とのんきに
目を覚ました現、クソ彼氏は
今日も朝からフワフワで
俺の気持ちなど知らずに
腰に絡みつく。
「なぁ…っ、触んな!」
『え~なんで?』
「…いや、身体がガタガタであちこち痛いんだよ。」
『ぁー…そっかぁ。ごめんね?』
ゆるゆると手が解けて
のそっと、朔は起き上がる。
顔でも洗いに行くのかな?
ちらっと、背後を見送ると
いつのまにか紫煙が立ち上っていた。
「ぅおい!朝起きてすぐ?」
『今じゃなきゃ、イツ吸うの?』
はいはーい、と手を軽く
上げて朔はベランダに出て行く。
くしゅっとなった
朔の後ろ髪が…やだなぁ
可愛く見える。
頭、湧いてるもんなぁ俺。
足ほっそ!!
カラスみたいだ。
ベランダの手すりに
うなだれて、
煙草を味わって。
時折、こっちを振り向いて
ニマッと笑う。
あー、腹立つ。
ハイハイ、
好きですけど?
ご馳走様ですね!
って、頭の中のてんやわんや。
朔は朝食の準備まで
していてくれたから
かなり助かった。
正直今は、あんまり
動きたくないから。
『…朝の空気、気持ちよかった。』
満足げに、朔はベランダから
今に戻り。
煙草の始末をした。
ようやく、洗面所に向かい
「ちょっとは、本数減らせよ。」
『…ぁ、それは無理。ね、歯ブラシ新しいの使っていい?』
ガタ、と音がして
朔が洗面所の鏡台の下の
引き出しを開けている。
「好きなの開けて。」
『辛くない歯磨き粉がいいんだけど…まだ、あ…あった。』
「…朔?」
よたよたとなりながら、
洗面所に行って
『なんだ、これ…央未も使ってんだ?』
「うん。使ってみると、良かったからさ。ても、朔は新しいの開けろよ。」
ハイ、と新しい歯磨き粉を
朔に渡した。
『…央未は、俺の事ばっかり考えて生きてるよね。』
「誰のせいだよ!…お前が言うな。だから、嫌だったのに。」
頭の中の黄昏でいっぱいの
風の旅人みたいな
朔を想うのは、切なくて
辛いのに。
『好きって、悔しい事なの?』
歯磨き粉をし始めた
朔は目線だけを俺に
向けている。
「さぁ?多分…自分ばっかり好きなのは、フェアーじゃないって思うんじゃないか?」
朔が眉根を寄せて、顔をしかめる。
あぁ、多分気に入らない
答えを俺が言ったからだろうな。
「ちょっと…トイレ。」
嫌な予感がして、トイレに
向かった。
腹痛は無かったけど。
一気に脱力した。
何も残らないし、
と言えばそれまでだけど。
朔という人間を愛する事は
俺にとってはごく自然な事で
本能的だとさえ思える。
手を伸ばせば、遠ざかり
急に戻って来てくれる。
こんなにも、心を掻き立てる
人間に、魅力を感じない筈がない。
人間的な魅力を感じて仕方ない。
もちろん、傷つく事もあったけど
朔の分かりにくい
繊細さが、痛くて苦しくて
俺の心には響く。
何にも言わないで
自由を選んだと見せて
本当は、真逆だった事。
なんかもう、全然クソ彼氏
じゃない。
コンコン、とトイレのドアが
ノックされた。
『大丈夫?お腹、いたい?』
ギャーー、
ここは、ほっといてくれよ。
「お前、何想像してんのか知らんけど…違うからな。気を使って部やに戻ってくれよ。」
『…俺のせい、かなぁって。』
正に、そう!!
って、言えるはずもないし。
「平気だから。ちょっと考え事してただけ。後、腰痛くて…座ると次に立つまでがキツイだけ。」
『分かった…。』
はぁ、ホント。
なんか調子狂う。
「お待たせ…」
『ゃ、実は俺もトイレしたかったんだよね~』
そそくさと、朔が隣を
通り過ぎて行く。
やっぱアイツ、駄目だな。
100歩譲って!
ね、心配はしてた様だから
気にしないでいてやろう。
朔は、朝食をあたためたり
フライパンで何かを
焼いてるみたい。
匂い的に、
「フレンチトーストじゃん。」
少し甘い香りが台所に
漂っていた。
「アイツ、火ぃ付けたままで…」
火加減を確認して、
焼きあがるのを待つ。
『朝から、しつこいかな?』
早速戻ってきた朔が、
すぐ隣に立って
火をチラッと見て言った。
「そんな事ない、それに美味しそう。」
『え~、嬉しい。』
「お前頭クシャクシャ…、」
『今日、湿度高いからね。』
「さーくーーーー、」
『何だよ!…なぁんてね。』
おかしそうに笑いながら
朔はフライ返しを片手に
まるで、獲物を狙う様な
真剣な目付きで、
フレンチトーストを裏返した。
『…幸せな匂い。』
「プリンの匂い…」
『央未は、たまには実家帰ってんだろ?』
「盆と正月くらいはね。」
『偉いよ。俺もそろそろ言われそう…と言うか、姉貴が見合いしろってうるさくて。』
「お見合い?」
『このご時世にさ、珍しいだろ?』
「そうでもないよ、今はまた…増えてきてるだろうし。」
朔が、眼を細めて
『そんな、何処の誰かもわからない相手と…俺が?』
口調は、少し険しい。
「朔は、どうしたいの?」
『央未次第、とは、言わないけど。姉貴は婿養子だからな。家には近寄りにくい。』
「俺らも、そういうお年頃だもんなぁ。」
人ごとではない。
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