恋しなければ良かったなんて、言わせないで

あきすと

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②アマリリス

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中学の頃に、玲が仲の良かった友達と言う本庄要?だっけ。
同じ中学だったけれど、接点の無かった子と親しくしているみたい。

大学に入ってからは、時々玲が家に遊びに来るようになった。
玲が僕を構うのは、誰とも付き合っていない時なのかな?と
考えたりしながら。
でも、全然読めない相手ではある。

案外寂しがりやな玲が、僕の家に来ると少しだけリラックスしてる気がして。
夜は一緒に夜中まで、時には明け方までゲームを一緒にして
当たり前の様に、ウチに泊まって行く。

昔からの光景だ。

2人でお昼寝していた子供の頃とあまり変わらない。
ベットに寝そべる玲は、少し遠慮がちに僕に腕を伸ばしてきて
「せまくない?」
ぎゅっとして眠る。
今でも、まさか求められるとは思わなくて。
ちょっと恥ずかしかったけど。
それ以上に嬉しくて、大事に抱き締めて眠る。

『真裕、くるしいよ。』
「変わんないなぁ、玲も。僕も…」

ドキドキがうるさくて、玲に聞こえてしまいそうで。
『鼓動、すごい…聞こえる。』
「うん。久しぶりだからさ…。」
『こうしてると、寂しくないよな。』

僕はパジャマで、玲は部屋着で。薄暗い部屋の中。
眼が慣れて来た頃、
「ずっとこうして寝る?」
『…いや?』

嫌な訳無いじゃない。
「イヤでは無いんだけどさ…その~、」
口ごもっていると、玲がフッと笑って
『熱くなって来た?』
抱き合っていた手を外し、僕の腰に触れた。

気持ち悪いって、思われたらどうしよう。

「うん、ちょっとこの態勢も…」
玲の手のひらがゆっくりと腰を擦り、利き手では頬を触れられる。
『ホントだ。真裕の頬っぺたあつくなってる。』

「玲…あんまり、さわっちゃダメ。」
『ぇ、なんで?』
「だって、気まずいよ。」
『そっか……ごめん。』

玲の哀しそうな表情と声が辛い。

なんだか、ものすごく悪い事をしているみたいで。
「幼馴染なのに、気まずくなりたくないんだ。だから、玲の事イヤじゃ無いから。」
『ありがと、真裕。…お休み。』

玲は不眠になり易いタイプで、リラックスして眠れる環境を
すごく大切にしている。
子供の頃は、2人で何時間でも眠れてしまっていたのに。



僕は、ファミレスでバイトを始めた。
基本的には平日の夜と、休みの日は半日ほど出勤が決まった。
進学先の大学は、そこまで課題も多くは無かったけれど
平日はほぼ毎日、通学が必要なカリキュラムとなる。

玲も、同じ様な状況だと知らされた。
後、びっくりしたのはバイト場に本庄要と玲が一緒に入店して来た事。

もちろん、こちらはバイト中だから一体どんな話をしているのか
知る由も無い。
ものすごく気にはなるけど。

休憩を貰って、戻ってからも2人は楽しそうにずっと会話をしている
姿を見て、おもしろくなかった。

バイトを上がる時間には、玲と目が合って目くばせされているのが分かった。

『真裕、』
店舗の従業員用通用口から出ると、玲の声に呼び止められた。
「玲…!え、なん…どうしたの?本庄は?」
『ぁー、もうアイツは帰った。』
「そうなんだ。大学、一緒なんだよね。」
『そうそう。なんか、面白い奴でさ~』
「好きなの?玲」

あ、と思う暇もなく。僕は本能的に玲に問う。
『嫌い、では…無いかな。』
「玲、分かりやすいもんね。」
正直、意外だと思う。
玲は、異性にしか靡かないだろうと思っていたから。

帰り道を一緒に歩きながら、駅までたわいない会話をする。

『俺、でも…初恋の相手は今でも忘れられないけどな。』
「玲にそんな、初恋のきみが居たんだ?え、だれだれ~?僕も知ってる子?」
『誰かは言えない。ただ、どんな子かは言える。』
「聞きたい、聞きたい♪」
『すごく、顔が可愛くて…お人形みたいで。アマリリスみたいな子。』
「……え、人間だよね?」
『2次元では無いな。お姫様みたいで、ティアラ着けてて…』
「本当に、会った事あるんだよね?」

思わず、妄想では?と言ってしまいそうになる。
『今でもいるけどな。』
「彼氏がいるとか?その子に。」
『彼氏は…居ないと思う。』
「気になる。僕もそのアマリリスみたいな子に、会ってみたいなぁ。」

玲は楽しそうに笑っている。
コレは、よっぽど今でも初恋の幻影に囚われているんだろうなぁ。


この後しばらくして、僕は玲が本庄要を好きかも知れないと言っていた事に
妙な違和感を覚えた。

初恋のきみが忘れられないのに、どうしてだろう?
結局大学時代も玲の、のらりくらりとした交際遍歴を風の噂で
聞いたりしながら大学にバイトに忙しく過ごした。

時々、バイト場に来ては僕の帰りを待っていてくれて
家まで一緒に帰る時間が本当に愉しみだった。

『俺さ、なんか変な噂立ってるんだよな。』
「なまじ、玲はモテるからね~。困ってる?」
『俺にも一応、耳に入って欲しくない相手くらい居るからさ。』
「それは、そうなんだろうけど…事実を言われてるんだったらさ…」
『セフレが何人もいるとか、言われてる。』
「実際は?」
『2人かな。あ、でも…協力してるだけと言うか。』
「どんな風に~?」
『性感マッサージとか。異性向けに。』

良く言えたなぁ、と感心してしまう。
「それは、僕が聞くだけでもやっぱりおかしな噂は立つはずだと思う。」
『いかがわしいって思うんだろうけど、全然違うんだけどな。信頼関係が無いと成り立たないんだ。』
「…僕に言われても…。」
『本庄要、いただろ?』
「あ、うん。付き合ってるんだよね?」
『いや、あれはセフレ。』
「~…僕、帰宅途中なのに帰りたいんだけど。」

でも、玲がこんなに話してくれるのは珍しいと思う。
『なんかさ、最近俺の事ストーカーしてる人を警察に通報したりとか。もう疲れた。』
「気を付けなよ~?刺されてからじゃ遅いんだからね。」

と、笑い事にしながら帰宅して数日後。

玲が本当にストーカーに刺された事をテレビの報道で知った。
僕は、ただ目の前が真っ暗になって胸がふさがる気がした

実際に、こんな事が起こるなんて思わなくて。
翌日、病院にお見舞いに行ったけれど面会謝絶になっていて
玲の姿を見る事は叶わなかった。

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