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七光り。
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この、抑えられなくなってきた気持ちに気付いたのは…
いつだっただろうか。
『どうして、嫌いなはずなのにそんなに彼が気になるの?』
ごく当たり前の問い掛けをした彼女は塾の講師だ。
俺は、今一度冷静になって考えなければ。
そうだ、嫌いなはずなのに…なぜ?
尋夢が気になるのか。
単純な答えを知っていた。
好きなんだ。
その顔も、声も、背格好、歩き方までも。
彼女がいること、
それも含めてだ。
そんなに好きなはずが…
尋夢が放った言葉に俺は、深く傷付いた。
いや、被害妄想を減らせば…
愕然としたんだろう。
信じていたからな、手放しで。
尋夢にだけは、そんな風に思われたくなかったからだ。
夏休みの部活動の帰りに聞いてしまった…
あの、言葉。
尋夢………なぜ?
俺は、自分の心を治癒なんて出来るほど、まだ人間ができちゃいないし
忘れたくても、忘れられなかった。
『ね、奏真は…両親がたまたま俳優だっただけ。その素養があっても開花させてなんぼでしょ?奏真は、じゃあ…努力しなかった?』
そんなわけ、あるか…!
「まさか…努力せずに自分以外になれる訳がない。」
『そう。だから、その子は奏真の努力、一番分かってる筈だよ。』
寝る間を惜しんで、脚本を読み込み…自分のものにしていく。
俺と尋夢は、元はかなり仲が良かった。
出会ったのは、高等部にある演劇部に入部してからだけど…何かに惹かれ合うみたいに、かけがえのない存在となっていった。
尋夢の、元気で明るい素直そうな性格が微笑ましく、傍にいることで俺自身も…どこか心地好かったんだ。
そんな、素の尋夢からは想像もつかないくらいの演技と表現力を演劇で発揮するところが、俺は、特に好きだった。
まるで、役柄を体内に取り込んだような『憑依』にもとれる程の変貌。
嫉妬を覚えかけた…
あまりにいつもと違う尋夢がそこにいた。
息をのむ、
尋夢は部活動以外でも地域の演劇サークルに所属している。
公演に招待されて行ってみれば…尋夢は女性の役をあてられていて、目を疑った。
『奏真、私は貴方を否定しない。尋夢くんに溺れかけてるでしょ?』
絶対に、
認めたくなかった。
が、昔から俺をよく知る麻優の前で意地を張っても仕方がない。
「…実は、最近の尋夢がな…どうも役落としに時間がかかるみたいで…」
『…!あ、あー、そういう事ね?』
つまりは、極端に距離感が近いんだ。
気まずい筈の俺と尋夢が。
「友達だから、変でも無いことなんだろうが…尋夢は特別なんだ。感受性が強くて、誰かの気持ちの影響を受けやすいし。そんな状態で、役が入ったまま近くにいられると…心身がもたない。」
珍しい俺の弱音に麻優は、面白そうに笑う。
『尋夢くんの思惑通りよね…恋愛なら、意識させた方の勝ち。高校生なんだから、楽しまないと…。なんだっけ?せーしゅん、っての?』
麻優は、相変わらず一筋縄じゃいかないし、大人の女性だ。
その中から時おり見え隠れする少女性が…
何と言うか、
ずるい。
麻優とは、この塾に通い始めてから出会った。
最初は、全然相手にもしてもらえず…膨らむばかりの自分の想いを抱えて立ち尽くしていた。
あまりにも、苦しくて…我慢が出来なくなってある時、麻優に告白をした。
優しい笑顔を浮かべた麻優は言った。
『外野井君が、また誰かに恋するまでの間だけなら。私は講師だし、何も君には個人としてできないけど…君が、困った時や悩んでる時…相談にならのるよ。そんな存在でもいいなら。』
彼女では、無い。
確かに気持ちはここにある。
見守ってくれるような存在。
笑える、
歳の離れた弟のようにしか思ってないだろう?
でも、今の俺には本当に心強い存在だっていうのは…確かだ。
いつだっただろうか。
『どうして、嫌いなはずなのにそんなに彼が気になるの?』
ごく当たり前の問い掛けをした彼女は塾の講師だ。
俺は、今一度冷静になって考えなければ。
そうだ、嫌いなはずなのに…なぜ?
尋夢が気になるのか。
単純な答えを知っていた。
好きなんだ。
その顔も、声も、背格好、歩き方までも。
彼女がいること、
それも含めてだ。
そんなに好きなはずが…
尋夢が放った言葉に俺は、深く傷付いた。
いや、被害妄想を減らせば…
愕然としたんだろう。
信じていたからな、手放しで。
尋夢にだけは、そんな風に思われたくなかったからだ。
夏休みの部活動の帰りに聞いてしまった…
あの、言葉。
尋夢………なぜ?
俺は、自分の心を治癒なんて出来るほど、まだ人間ができちゃいないし
忘れたくても、忘れられなかった。
『ね、奏真は…両親がたまたま俳優だっただけ。その素養があっても開花させてなんぼでしょ?奏真は、じゃあ…努力しなかった?』
そんなわけ、あるか…!
「まさか…努力せずに自分以外になれる訳がない。」
『そう。だから、その子は奏真の努力、一番分かってる筈だよ。』
寝る間を惜しんで、脚本を読み込み…自分のものにしていく。
俺と尋夢は、元はかなり仲が良かった。
出会ったのは、高等部にある演劇部に入部してからだけど…何かに惹かれ合うみたいに、かけがえのない存在となっていった。
尋夢の、元気で明るい素直そうな性格が微笑ましく、傍にいることで俺自身も…どこか心地好かったんだ。
そんな、素の尋夢からは想像もつかないくらいの演技と表現力を演劇で発揮するところが、俺は、特に好きだった。
まるで、役柄を体内に取り込んだような『憑依』にもとれる程の変貌。
嫉妬を覚えかけた…
あまりにいつもと違う尋夢がそこにいた。
息をのむ、
尋夢は部活動以外でも地域の演劇サークルに所属している。
公演に招待されて行ってみれば…尋夢は女性の役をあてられていて、目を疑った。
『奏真、私は貴方を否定しない。尋夢くんに溺れかけてるでしょ?』
絶対に、
認めたくなかった。
が、昔から俺をよく知る麻優の前で意地を張っても仕方がない。
「…実は、最近の尋夢がな…どうも役落としに時間がかかるみたいで…」
『…!あ、あー、そういう事ね?』
つまりは、極端に距離感が近いんだ。
気まずい筈の俺と尋夢が。
「友達だから、変でも無いことなんだろうが…尋夢は特別なんだ。感受性が強くて、誰かの気持ちの影響を受けやすいし。そんな状態で、役が入ったまま近くにいられると…心身がもたない。」
珍しい俺の弱音に麻優は、面白そうに笑う。
『尋夢くんの思惑通りよね…恋愛なら、意識させた方の勝ち。高校生なんだから、楽しまないと…。なんだっけ?せーしゅん、っての?』
麻優は、相変わらず一筋縄じゃいかないし、大人の女性だ。
その中から時おり見え隠れする少女性が…
何と言うか、
ずるい。
麻優とは、この塾に通い始めてから出会った。
最初は、全然相手にもしてもらえず…膨らむばかりの自分の想いを抱えて立ち尽くしていた。
あまりにも、苦しくて…我慢が出来なくなってある時、麻優に告白をした。
優しい笑顔を浮かべた麻優は言った。
『外野井君が、また誰かに恋するまでの間だけなら。私は講師だし、何も君には個人としてできないけど…君が、困った時や悩んでる時…相談にならのるよ。そんな存在でもいいなら。』
彼女では、無い。
確かに気持ちはここにある。
見守ってくれるような存在。
笑える、
歳の離れた弟のようにしか思ってないだろう?
でも、今の俺には本当に心強い存在だっていうのは…確かだ。
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