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第一部 悪役令嬢ってなんなんですの?!
婚約破棄、やってみせますわ!
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カナリアは、ボールを投げつけたのは前世の自分と同じように甲子園に出場していたピッチャーの仕業であると考えていた。
そんな時、目の前にいるアイラッド皇太子が名ピッチャーとして名をはせた学園の後輩・観月であることに気が付いてしまい、疑念が沸き起こる。
「カナリア、心配したんだよ。父上もすごくすごく心配してた。目を覚ましてくれて本当に良かった!」
皇太子の表情を見る限り、彼が嘘を言っているとは思えない。少なくとも、この16年間カナリアとして生きてきて、2つ年下のアイラッドが生まれてから約14年彼と過ごした記憶が、彼は犯人ではないと告げている。
「ご心配にはおよびませんわ。わたくしはデッドボールごときには負けませんから」
「デッド…え?何?」
しまった。ついデッドボールとか言ってしまった。
皇太子は怪訝な顔をしてカナリアを見る。この表情を見ても、彼が野球について知らないことは明白だろう。
…彼が稀代の詐欺師でもない限り。
「とにかく、わたくしは元気です。それより皇子、この時間ですと本来まだ授業があるのではなくて?わたくしなどにお時間を頂戴するわけにはまいりませんわ」
カナリアの言葉に、皇子は拗ねたような顔をする。
「婚約者のお見舞いも許されないの?」
「あなたは皇太子ですから」
共に甲子園を目指したチームメイトと同じ顔の皇太子。先輩・後輩として共に過ごした時間は半年程度であったが、婚約者として共に過ごした時間は14年にもなる。
彼が観月であることに気が付いた後でも、カナリアにとっては皇太子としての姿の方が慣れ親しんだものであった。
見舞いに来ていた全員が帰った後、カナリアは状況を整理することにした。
まず、カナリア・アーネラ・ロアディンとして生きてきた16年間は確かに存在する。前世の記憶がよみがえったとはいえ、カナリアとしての自分を捨てることなどできるはずがなかった。
しかし、前世の記憶もあまりにも鮮明だ。
夢であると考えるには無理があるし、そもそも夢の中で野球というスポーツを思いつくほどの想像力は持ち合わせていない。
夢の中の世界は、この世界で最も豊かな国であるステラサール帝国よりもずっと豊かであったように思う。
それに、道野龍としての気持ちも確かにある。
「花蓮さん…」
ぽつりとつぶやいた言葉に、侍女が慌ててこちらに駆け寄る。
「お嬢様、お呼びですか」
侍女のことを呼んだわけではない。
「なんでもないわ。少し一人にしてちょうだい」
花蓮さんに会いたい。道野龍としての確かな思いが抑えきれずにいた。
ノーノー達成できたらキスしてあげる、と微笑んだ花蓮さん。
高校生活三年間、ずっと焦がれていた花蓮さんのためならノーノーくらい余裕で達成できたはずだ。それなのに、甲子園の開会式までの記憶しかないのはどうしてだろう。
上空から降ってきたあれはなんだったのだろう。
記憶が途切れているということは、やはりあの時に俺は死んだのだろうか。
観月がここにいるということは…。
花蓮さんもこの世界に来ているのではないか?
「探さなきゃ…」
探さなくては。そして、今度こそ花蓮さんと結ばれたい。
俺が公爵令嬢として生きているということは、花蓮さんはきっと貴族の令息として生きている。
皇太子の婚約者であるカナリアがたくさんの貴族の令息と交流することは許されない。
「婚約破棄、してもらうしかない」
花蓮さんを探すためにはまず、皇子との婚約を解消しなくては。
こちらから言い出すのは不可能だろう。いくらロアディン公爵家が絶大な権力を持っているとはいえ、相手は皇族だ。
そのためには、皇太子に婚約を解消したいと思わせなければならない。
アイラッド皇子に対して愛着がないといえば嘘になる。彼に嫌われるのはつらい。でも、仕方がない。
「婚約破棄、やってみせますわ」
カナリアはそう言って、ベッドから立ち上がった。
そんな時、目の前にいるアイラッド皇太子が名ピッチャーとして名をはせた学園の後輩・観月であることに気が付いてしまい、疑念が沸き起こる。
「カナリア、心配したんだよ。父上もすごくすごく心配してた。目を覚ましてくれて本当に良かった!」
皇太子の表情を見る限り、彼が嘘を言っているとは思えない。少なくとも、この16年間カナリアとして生きてきて、2つ年下のアイラッドが生まれてから約14年彼と過ごした記憶が、彼は犯人ではないと告げている。
「ご心配にはおよびませんわ。わたくしはデッドボールごときには負けませんから」
「デッド…え?何?」
しまった。ついデッドボールとか言ってしまった。
皇太子は怪訝な顔をしてカナリアを見る。この表情を見ても、彼が野球について知らないことは明白だろう。
…彼が稀代の詐欺師でもない限り。
「とにかく、わたくしは元気です。それより皇子、この時間ですと本来まだ授業があるのではなくて?わたくしなどにお時間を頂戴するわけにはまいりませんわ」
カナリアの言葉に、皇子は拗ねたような顔をする。
「婚約者のお見舞いも許されないの?」
「あなたは皇太子ですから」
共に甲子園を目指したチームメイトと同じ顔の皇太子。先輩・後輩として共に過ごした時間は半年程度であったが、婚約者として共に過ごした時間は14年にもなる。
彼が観月であることに気が付いた後でも、カナリアにとっては皇太子としての姿の方が慣れ親しんだものであった。
見舞いに来ていた全員が帰った後、カナリアは状況を整理することにした。
まず、カナリア・アーネラ・ロアディンとして生きてきた16年間は確かに存在する。前世の記憶がよみがえったとはいえ、カナリアとしての自分を捨てることなどできるはずがなかった。
しかし、前世の記憶もあまりにも鮮明だ。
夢であると考えるには無理があるし、そもそも夢の中で野球というスポーツを思いつくほどの想像力は持ち合わせていない。
夢の中の世界は、この世界で最も豊かな国であるステラサール帝国よりもずっと豊かであったように思う。
それに、道野龍としての気持ちも確かにある。
「花蓮さん…」
ぽつりとつぶやいた言葉に、侍女が慌ててこちらに駆け寄る。
「お嬢様、お呼びですか」
侍女のことを呼んだわけではない。
「なんでもないわ。少し一人にしてちょうだい」
花蓮さんに会いたい。道野龍としての確かな思いが抑えきれずにいた。
ノーノー達成できたらキスしてあげる、と微笑んだ花蓮さん。
高校生活三年間、ずっと焦がれていた花蓮さんのためならノーノーくらい余裕で達成できたはずだ。それなのに、甲子園の開会式までの記憶しかないのはどうしてだろう。
上空から降ってきたあれはなんだったのだろう。
記憶が途切れているということは、やはりあの時に俺は死んだのだろうか。
観月がここにいるということは…。
花蓮さんもこの世界に来ているのではないか?
「探さなきゃ…」
探さなくては。そして、今度こそ花蓮さんと結ばれたい。
俺が公爵令嬢として生きているということは、花蓮さんはきっと貴族の令息として生きている。
皇太子の婚約者であるカナリアがたくさんの貴族の令息と交流することは許されない。
「婚約破棄、してもらうしかない」
花蓮さんを探すためにはまず、皇子との婚約を解消しなくては。
こちらから言い出すのは不可能だろう。いくらロアディン公爵家が絶大な権力を持っているとはいえ、相手は皇族だ。
そのためには、皇太子に婚約を解消したいと思わせなければならない。
アイラッド皇子に対して愛着がないといえば嘘になる。彼に嫌われるのはつらい。でも、仕方がない。
「婚約破棄、やってみせますわ」
カナリアはそう言って、ベッドから立ち上がった。
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