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第一部 悪役令嬢ってなんなんですの?!
公爵令嬢の苦悩
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目を覚ました翌日から、カナリアは婚約破棄に向けての計画を立て始めた。
まずは皇子に嫌われる必要がある。皇子はそう簡単に人を嫌うタイプの人間ではない。
この14年間、婚約者として長い時間を共にしてきたものの、皇子が誰かに向かって負の感情を抱くところを見たことがなかった。
アイラッド皇太子は、太陽の子と呼ばれている。皇帝となった暁には、太陽(ソル)という名を授けられることが予想されていた。
ステラサール帝国の皇帝は、皇位を継ぐ際に人としての名を捨て、星の名で呼ばれることとなる。皇帝としての名は、彼らの瞳の色で決められた。
ステラサールの皇族は、血縁関係であっても皆それぞれ全く違う色の瞳を持っている。
この国は、流れ星が海に落ちて大陸になったことから始まって、星と共に地上に舞い降りた龍神の末裔が皇族であるとされてきた。
神話によると、龍神は夜の空に浮かぶ星たちの集合体であるらしい。
龍神の子である皇族は、それぞれの星の化身であり、その瞳に星の色を宿して生まれてくるということだ。
アイラッド皇太子の瞳はまさに太陽の色彩であった。
そして彼の性格もまた、太陽そのものだった。
カナリアはアイラッドがどのような時に不快そうな顔をしていたか思い出そうとする。彼は時々拗ねたような仕草を見せることがあるものの、不快そうなそぶりを見せることは全くない。
こうなったらもう、思いつく限りの悪行をするしかない。
例えば税金を使って盛大なパーティーをしたり、豪華絢爛なドレスや宝石を買ったり…。
(…いや、これはもうすでにやっているのでは?)
皇族を支える神官一族・ロアディン公爵家の収入源は、民が納めた税金である。カナリアはこれまで、それを当然のものとして享受し、贅沢三昧の生活を送ってきた。
カナリアとしての感覚では違和感など全くなかったが、道野龍としての感覚ではありえないことだ。
(お父様ってもしかして、いわゆる生臭坊主なのでは…?)
とはいえ、皇子に嫌われるためにはこれからもその生活を続けなければならない。むしろ今までよりももっと盛大に税金を使いこまなければならない。
今までと同じくらいでは、皇子はカナリアのことを嫌いにならないからだ。
(まあ、今更質素な暮らしには戻れないし)
生まれたときから贅沢な生活が当たり前だったカナリアにとって、ドレスや宝石を買えない生活は想像もできないものだった。
道野龍としての記憶が戻った今でも、自分がかつて野球の練習に明け暮れて真っ黒に日焼けしていたのが信じられない。
とはいえ、皇太子の婚約者としての教育も決して甘いものではなかった。
今は病み上がりなので授業も行われていないが、数日も経てばまた一日中、未来の皇后としての責務を学ぶことになるだろう。
カナリアはこれまで、自分の使命について特に疑問に思ったことはなかった。幼いころから続く、毎日の妃教育についても不満を持たずに受け入れていた。
それはアイラッドの妻として、帝国を支える未来をはっきりと思い描いていたからだ。
…-本当に、このままでいいの?
道野龍が、どんなに厳しい練習にも耐えられたのは花蓮さんがいたからだ。花蓮さんが応援してくれるのであれば、エースとしての重圧も、主将としての責任も何もかも背負うことができた。
それと同じように、カナリアが次期皇后としての重圧に耐えられたのは、アイラッド皇太子がいたからだった。
まずは皇子に嫌われる必要がある。皇子はそう簡単に人を嫌うタイプの人間ではない。
この14年間、婚約者として長い時間を共にしてきたものの、皇子が誰かに向かって負の感情を抱くところを見たことがなかった。
アイラッド皇太子は、太陽の子と呼ばれている。皇帝となった暁には、太陽(ソル)という名を授けられることが予想されていた。
ステラサール帝国の皇帝は、皇位を継ぐ際に人としての名を捨て、星の名で呼ばれることとなる。皇帝としての名は、彼らの瞳の色で決められた。
ステラサールの皇族は、血縁関係であっても皆それぞれ全く違う色の瞳を持っている。
この国は、流れ星が海に落ちて大陸になったことから始まって、星と共に地上に舞い降りた龍神の末裔が皇族であるとされてきた。
神話によると、龍神は夜の空に浮かぶ星たちの集合体であるらしい。
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アイラッド皇太子の瞳はまさに太陽の色彩であった。
そして彼の性格もまた、太陽そのものだった。
カナリアはアイラッドがどのような時に不快そうな顔をしていたか思い出そうとする。彼は時々拗ねたような仕草を見せることがあるものの、不快そうなそぶりを見せることは全くない。
こうなったらもう、思いつく限りの悪行をするしかない。
例えば税金を使って盛大なパーティーをしたり、豪華絢爛なドレスや宝石を買ったり…。
(…いや、これはもうすでにやっているのでは?)
皇族を支える神官一族・ロアディン公爵家の収入源は、民が納めた税金である。カナリアはこれまで、それを当然のものとして享受し、贅沢三昧の生活を送ってきた。
カナリアとしての感覚では違和感など全くなかったが、道野龍としての感覚ではありえないことだ。
(お父様ってもしかして、いわゆる生臭坊主なのでは…?)
とはいえ、皇子に嫌われるためにはこれからもその生活を続けなければならない。むしろ今までよりももっと盛大に税金を使いこまなければならない。
今までと同じくらいでは、皇子はカナリアのことを嫌いにならないからだ。
(まあ、今更質素な暮らしには戻れないし)
生まれたときから贅沢な生活が当たり前だったカナリアにとって、ドレスや宝石を買えない生活は想像もできないものだった。
道野龍としての記憶が戻った今でも、自分がかつて野球の練習に明け暮れて真っ黒に日焼けしていたのが信じられない。
とはいえ、皇太子の婚約者としての教育も決して甘いものではなかった。
今は病み上がりなので授業も行われていないが、数日も経てばまた一日中、未来の皇后としての責務を学ぶことになるだろう。
カナリアはこれまで、自分の使命について特に疑問に思ったことはなかった。幼いころから続く、毎日の妃教育についても不満を持たずに受け入れていた。
それはアイラッドの妻として、帝国を支える未来をはっきりと思い描いていたからだ。
…-本当に、このままでいいの?
道野龍が、どんなに厳しい練習にも耐えられたのは花蓮さんがいたからだ。花蓮さんが応援してくれるのであれば、エースとしての重圧も、主将としての責任も何もかも背負うことができた。
それと同じように、カナリアが次期皇后としての重圧に耐えられたのは、アイラッド皇太子がいたからだった。
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