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第2巻 エピローグ
忘れていた交渉
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「マヤお姉ちゃんマヤお姉ちゃん」
エメリンが整備した保育園の建物ができるまでの間、マヤが子どもたちと遊んでいると、1人のオークの少女がマヤのところに走ってきた。
「こらこら、そんなに走ったら危ないよ」
「ごめんなさいっ!」
マヤの言葉に、走ってきたオークの少女は素直に謝ると元気よくペコリと頭を下げる。
「うんうん、よく謝れました」
マヤが頭を撫でてあげると、オークの少女は気持ちよさそうに目を細める。
「えへへー」
「それで、私になにか言いたいことがあったのかな?」
「はっ! そうだった! あのねあのね、さます? っていうところのお兄ちゃんがマヤお姉ちゃんのこと探してたよ」
「SAMASの隊員が? なんだろう、何かあったのかな?」
「なんかねー、けんがねー、えっとねー、なんだっけー?」
「けん? ああ、剣か! ありがとね、教えてくれて。じゃあちょっと行ってくるよ」
マヤは遊んでいた子どもたちに手を振ると、マヤを呼んでいるという隊員のところに向かうことにした。
「「「いってらっしゃーい!」」」
「いってきま~す。それじゃあそのお兄さんのところに案内してくれるかな?」
「うん!」
マヤを呼びに来た少女に連れられて、SAMASの隊員のところにやってくると、隊員は手にした剣をいろいろな方向から見ていた。
何をやっているのかわからずしばらく観察していると、隊員の方がマヤに気がついて駆け寄ってきた。
「陛下! まさか陛下の方から来てくださるとは! 申し訳ございません」
「いいよいいよ、私が勝手に来ただけだから。それでどうしたの? 剣がどうとかってこの子から聞いたけど」
マヤがぽんっと頭に手を置くと、オーク少女は自慢げに胸を張る。
「ええ、実は、陛下から頂いたこのドワーフの里で作られた武器なんですが……」
「ああ、私がドワーフの里で買ってきたやつね」
マヤはそう言いながら、なにか忘れていることはあったようななかったような気がしたのだが、それを思い出すまもなく、隊員は続きを話し始めてしまう。
「そうです、その武器です。それでですね、この武器なんですが、先日までの戦争で少々傷んでしまったようで……」
「そうなの? 見た感じ刃こぼれとかはしてなさそうだけど」
「はい、陛下のご命令で敵は斬っていませんから、切れ味はまだまだ問題ない状態です。ただ、斬らない代わりに剣の腹で殴っていたので、少し歪んでしまったみたいなんです」
マヤは隊員がこちらに見せてきた剣を、全体的に眺めてみる。
「なるほど、確かに言われてみるとちょっと曲がってる感じだね」
「簡単な刃こぼれならオークの職人でも直せるんですが、こういう微妙な歪みを直すとなると難しいと言われてしまって」
「つまり、買い替えるか、ドワーフに頼んで直してもらうしかないってことか」
さてどうしたものか、と考え始めたところで、ようやくマヤは先ほど思い出せなかったことを思い出した。
「ああ! そうだよ! ドワーフをうちの国に加入させるって話だったじゃん!」
バニスターが宣戦布告してきたことで、すっかり忘れていたが、バニスターが宣戦布告して来る前、マヤはドワーフをキサラギ亜人王国に勧誘していたのだ。
「突然どうしたんですか、陛下」
「え? ああ、ごめんごめん。ちょっとすっかり忘れていたいたことがあってさ。ちょうどドワーフの里に行かないといけないことになったから、ついでにその武器直してもらってこようか?」
「そんな! 陛下にそんな小間使いみたいなことさせられませんよ!」
「気にしないでいいって、私一応国王ってことになってるけど、特にすることもないしさ。それについでに持っていくだけだし」
「陛下がそうおっしゃるなら……」
隊員はまだ申し訳無さそうにしながら、剣をマヤに差し出した。
隊員が軽々持っていたので、たいして重くないだろうと思い片手で受け取ったマヤだったが……。
「おっっっっもいね、これ」
マヤはあまりの重さに思わず剣を落としそうになる。
「だ、大丈夫ですか、陛下!」
「大丈夫っだよっ、うんしょ、っと。これっ、くらいっ、持ってっ、いけるっ、からっ」
マヤは半ば意地になって剣を両腕で抱える。
なんとか抱えることはできているマヤだが、その両手足はぷるぷると震えている。
(強化魔法使えば軽々持てるんだろうけど、流石にこんなことに使うのはちょっとね……)
「ねえねえマヤお姉ちゃん」
「ど、どうしたのかな?」
「それもってあげよっかー?」
「ええ!? いや、やめたほうがいいと思うよ、重いし」
「だいじょうぶ! わたしちからもちだもん!」
オークの少女は、マヤが抱えていた剣をマヤの腕の間からひょいっと引き抜くと、軽々と肩に担いだ。
「…………本当に力持ちなんだね」
「えへへ、すごいでしょー」
「ははははっ……………はあ。すごいすごい、それじゃあカーサのところまで運ぶの手伝ってくれるかな?」
マヤは何に意地を張ってたのかわからなくなってしまって、剣の輸送は少女に任せることにした。
「うんっ! わかった!」
「それじゃ、私達は行ってくるよ。剣のことは任せて」
「はいっ! ありがとうございます!」
深々と頭を下げると隊員に、マヤはひらひらと手を振って去っていく。
マヤが見えなくなったあと、一人になった隊員はしばらく呆然としていた。
「陛下、いい人だな……それに、近くで見るとめちゃくちゃ可愛いし……って、いかんいかん、俺は何を」
隊員は、大きく頭を振ると、訓練へと戻っていったのだった。
エメリンが整備した保育園の建物ができるまでの間、マヤが子どもたちと遊んでいると、1人のオークの少女がマヤのところに走ってきた。
「こらこら、そんなに走ったら危ないよ」
「ごめんなさいっ!」
マヤの言葉に、走ってきたオークの少女は素直に謝ると元気よくペコリと頭を下げる。
「うんうん、よく謝れました」
マヤが頭を撫でてあげると、オークの少女は気持ちよさそうに目を細める。
「えへへー」
「それで、私になにか言いたいことがあったのかな?」
「はっ! そうだった! あのねあのね、さます? っていうところのお兄ちゃんがマヤお姉ちゃんのこと探してたよ」
「SAMASの隊員が? なんだろう、何かあったのかな?」
「なんかねー、けんがねー、えっとねー、なんだっけー?」
「けん? ああ、剣か! ありがとね、教えてくれて。じゃあちょっと行ってくるよ」
マヤは遊んでいた子どもたちに手を振ると、マヤを呼んでいるという隊員のところに向かうことにした。
「「「いってらっしゃーい!」」」
「いってきま~す。それじゃあそのお兄さんのところに案内してくれるかな?」
「うん!」
マヤを呼びに来た少女に連れられて、SAMASの隊員のところにやってくると、隊員は手にした剣をいろいろな方向から見ていた。
何をやっているのかわからずしばらく観察していると、隊員の方がマヤに気がついて駆け寄ってきた。
「陛下! まさか陛下の方から来てくださるとは! 申し訳ございません」
「いいよいいよ、私が勝手に来ただけだから。それでどうしたの? 剣がどうとかってこの子から聞いたけど」
マヤがぽんっと頭に手を置くと、オーク少女は自慢げに胸を張る。
「ええ、実は、陛下から頂いたこのドワーフの里で作られた武器なんですが……」
「ああ、私がドワーフの里で買ってきたやつね」
マヤはそう言いながら、なにか忘れていることはあったようななかったような気がしたのだが、それを思い出すまもなく、隊員は続きを話し始めてしまう。
「そうです、その武器です。それでですね、この武器なんですが、先日までの戦争で少々傷んでしまったようで……」
「そうなの? 見た感じ刃こぼれとかはしてなさそうだけど」
「はい、陛下のご命令で敵は斬っていませんから、切れ味はまだまだ問題ない状態です。ただ、斬らない代わりに剣の腹で殴っていたので、少し歪んでしまったみたいなんです」
マヤは隊員がこちらに見せてきた剣を、全体的に眺めてみる。
「なるほど、確かに言われてみるとちょっと曲がってる感じだね」
「簡単な刃こぼれならオークの職人でも直せるんですが、こういう微妙な歪みを直すとなると難しいと言われてしまって」
「つまり、買い替えるか、ドワーフに頼んで直してもらうしかないってことか」
さてどうしたものか、と考え始めたところで、ようやくマヤは先ほど思い出せなかったことを思い出した。
「ああ! そうだよ! ドワーフをうちの国に加入させるって話だったじゃん!」
バニスターが宣戦布告してきたことで、すっかり忘れていたが、バニスターが宣戦布告して来る前、マヤはドワーフをキサラギ亜人王国に勧誘していたのだ。
「突然どうしたんですか、陛下」
「え? ああ、ごめんごめん。ちょっとすっかり忘れていたいたことがあってさ。ちょうどドワーフの里に行かないといけないことになったから、ついでにその武器直してもらってこようか?」
「そんな! 陛下にそんな小間使いみたいなことさせられませんよ!」
「気にしないでいいって、私一応国王ってことになってるけど、特にすることもないしさ。それについでに持っていくだけだし」
「陛下がそうおっしゃるなら……」
隊員はまだ申し訳無さそうにしながら、剣をマヤに差し出した。
隊員が軽々持っていたので、たいして重くないだろうと思い片手で受け取ったマヤだったが……。
「おっっっっもいね、これ」
マヤはあまりの重さに思わず剣を落としそうになる。
「だ、大丈夫ですか、陛下!」
「大丈夫っだよっ、うんしょ、っと。これっ、くらいっ、持ってっ、いけるっ、からっ」
マヤは半ば意地になって剣を両腕で抱える。
なんとか抱えることはできているマヤだが、その両手足はぷるぷると震えている。
(強化魔法使えば軽々持てるんだろうけど、流石にこんなことに使うのはちょっとね……)
「ねえねえマヤお姉ちゃん」
「ど、どうしたのかな?」
「それもってあげよっかー?」
「ええ!? いや、やめたほうがいいと思うよ、重いし」
「だいじょうぶ! わたしちからもちだもん!」
オークの少女は、マヤが抱えていた剣をマヤの腕の間からひょいっと引き抜くと、軽々と肩に担いだ。
「…………本当に力持ちなんだね」
「えへへ、すごいでしょー」
「ははははっ……………はあ。すごいすごい、それじゃあカーサのところまで運ぶの手伝ってくれるかな?」
マヤは何に意地を張ってたのかわからなくなってしまって、剣の輸送は少女に任せることにした。
「うんっ! わかった!」
「それじゃ、私達は行ってくるよ。剣のことは任せて」
「はいっ! ありがとうございます!」
深々と頭を下げると隊員に、マヤはひらひらと手を振って去っていく。
マヤが見えなくなったあと、一人になった隊員はしばらく呆然としていた。
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隊員は、大きく頭を振ると、訓練へと戻っていったのだった。
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