転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜

上村 俊貴

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第3巻第3章 キサラギ亜人王国の危機

SAMASの抵抗

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「あの煙って、私の屋敷があるあたりだよね?」

 ルーシェの城からシロちゃんをとばし、最大限の強化魔法をシロちゃんにかけることで数日かかるところを一日で移動してきたマヤは、前方を指さした。

 マヤはシロちゃんの高速移動による風切り音に負けないように、大きな声で後ろに向けて叫んだ。

「たぶん、そう」

「そうだろうな。ただ、今回も全く音が聞こえん。前回と同じ結界が張ってある可能性があるな」

 そもそもシロちゃんで高速で移動しているので、マヤには風切り音しか聞こえていないのだが、マッシュにはそれ以外の音も聞こえているらしい。

「なるほど。ルース、結界の中と外を繋げたりできる?」

「可能だ。今度は魔王の浴室に繋がったりしないように気をつけよう」

「うん、お願いね。それじゃあシロちゃん、そろそろ国境だから、結界にぶつからないように、行くよ!」

「わふっ!」

「…………言うのが遅れて悪いが、あの木のあたりが結界だ」

 夜通し走り続けてきたシロちゃんに、同じく夜通しシロちゃんを駆っていたマヤがラストスパートへと気合を入れたところで、どこか申し訳無さそうにルースが数十メートル前方の少し大きめの木を指さした。

「え?」

「わふっ!?」

 左右の木々一本一本を確認できないほどの猛スピードで移動しているマヤたちにとって、ルースが指さした木まで距離などないに等しい。

 マヤとシロちゃんは驚愕の声をあげることしかできず、結界へと突っ込んでいった。

「しかたない、一か八かだ!」

 ルースはマヤたちが結界に激突する直前、結界に向けて飛び出すと、ドアへと姿を変えた。

「カーサ!」

「うん!」

 ルースの意図を理解したカーサが、シロちゃんの上から飛び出すと、ドアへと姿を変えたルースのドアノブを握りドアを開けた。

「ちょ、ルース!? 今度はちゃんと結界の内側なんだよねー!?」

 マヤはルースに向けてそんなことを叫びながら、ドアの向こう側に消えていく。

 次の瞬間、マヤとマッシュを乗せたシロちゃんの姿は結界のすぐ内側にあった。

「よし、成功だ」

「うん、成功。ルースちゃん、すごい」

「ちゃんはやめてくれカーサ……」

 マヤたちの後を追う様にカーサもドアのくぐって結界の中に入り、最後に結界内のドアから少女の姿に戻ったルースがやってくる。

「今度はうまくいったね。何が違ったんだろう?」

「さあな。それよりマヤ、急いだほうが良さそうだ。早朝だというのに、もう戦闘の音がする」

「そうだね、急ごう!」

 マヤたちは再びシロちゃんに乗り込むと、マッシュの案内で戦闘が行われている地点へと急ぐのだった。

***

「くっそ、なんで隊長も副長もいねえんだよ!」

「知らねえよ! そもそも副長が裏切ったって話だぜ!?」

 ちょうどマヤたちが結界の内側に入った頃、SAMASサマス隊員たちは避難所となっている広場に張られた結界を、ベルフェゴール配下の魔人から守っていた。

「副長が裏切っただあ? そんなことあるわけねえだろ! あんなに隊長にぞっこんだってのにどうやって裏切るってんだ?」

 SAMASサマスの隊員は、右からきた魔人を蹴り飛ばし、左からきた魔人にぶつける。

 2人の魔人がバランスを崩したすきに、もう1人の隊員が魔法を封じるロープですかさず拘束した。

「それは確かにそうなんだがな」

「まあ何にせよ、大したことない奴らしか来てないからいいものの、いつ俺らより強い奴が来るかわからないんだから、早く隊長たちには戻って来てほしいもんだ」

「それはたしかにな。それかエメリン様でもオリガ様でもどっちかだけでも来てくれればな」

「それもそうだが、陛下はどうした? 陛下の魔物が動かなくなっちまったのも結構痛くないか?」

「それもそうだな。陛下の魔物がいれば――っ!?」

 愚痴を言いながらもベルフェゴール配下の魔人や魔物を圧倒していたSAMASサマス隊員は、突然の鋭い攻撃を思わず言葉を途切れさせながらなんとか回避した。

「なるほど、これを回避しますか」

「何者だ、あんた」

 隊員が声のした方に顔を向けると、そこにはナイフをもてあそぶ1人の魔人が立っていた。

 明らかに今まで隊員2人が相手にしてきた魔人とは格が違うと、2人は瞬時に理解する。

「あいつはまずいな」

「ああ、もしかすると隊長より強いかもしれん」

 隊員たちは死ぬかもしれないと思ったが、それでも2人はここを退くわけにはいかなかった。

 なぜなら、2人の後ろには国民が避難している結界の入り口があるからだ。

「名乗る必要はないかもしれませんが、一応礼儀として名乗っておきましょう。私はリック。ベルフェゴール様に仕える4人の幹部の1人です」

「やっぱり幹部クラスか……」

 隊員の言葉に、リックは肩をすくめる。
 
「この結界を守っているのは、あなた達が最後です。それにしても、ぽっと出の国の軍にしては、えーっと、SAMASサマスとか言いましたか、あなた方SAMASサマスは別格でお強いですね。うちの一般兵では相手にならないようです」

「だからあんたが出てきたってか?」

「そうなりますね。おしゃべりはこのくらいにして、早速始末させてもらいます!」

(はは、これは俺もこれまでかもしれんな……あーあ、俺も副長みたいな美人と付き合いたかった)

 襲われた隊員がそんなことを考えながら、しかし諦めることはせずにリックのナイフに応戦する。

「流石に良い強度の防御魔法です、ですが――」

「な、何!?」

 確かにリックの攻撃は防御魔法で防いだはずなのに、隊員は防御魔法内に攻撃の気配を感じ、とっさに顔を後ろに反らす。

 後ろに反らした隊員の顔に、横一直線の切り傷が浮かんだ。

「――強度が高いだけでは、私の攻撃は防げませんよ?」

「この野郎!」

 1人の隊員を相手にしている間に背後へと回り込んだもう1人の隊員が、今度は剣でリックに斬りかかる。

 完全に重心を捉えた一撃に、リックの致命傷を確信した2人だったが、切り裂かれたはずのリックは煙のように霧散してしまう。

「残念ですが、そんな攻撃私には効きませんよ?」

 先程まで何もなかったはずのところから現れたリックに、隊員2人は冷や汗を浮かべる。

「おいおい、あんなのありかよ……」

 隊員たちは、今度こそ死を確信する。

「それでは、今度こそ殺して差し上げましょう」

 何らかの手段で突破されてしまった防御魔法だが、隊員は他にできることがないので一応防御魔法を展開し、ナイフを直接受け止められる様に杖を構える。

 迫るリックを緊張の面持ちで迎え撃とうとする隊員に、上から声がかけられた。

「馬鹿者! 後ろだ!」

「ぐっ!」

 大きく跳躍して隊員の上からやってきた栗色のうさぎが、なにもないところへと後ろ足で蹴りを入れたかと思うと、うめき声とともにリックが現れ、後ろへ飛ばされて体勢を崩した。

「「マッシュさん!」」

「うむ、間に合ったようだな。よく頑張った、後は私に任せろ」

 マヤの強化魔法の光を溢れんばかりに受けたマッシュと、ベルフェゴール配下の幹部リックとの戦いが始まった。
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