転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜

上村 俊貴

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第7巻第2章 連携

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 マヤがルースの封印空間に入って来た瞬間、ウォーレンはマヤへと歩み寄った。

 シャルルとマヤの邪魔になってはいけないからと、普段は封印空間に来ないようにしているウォーレンだが、今日は昨日のことがあったのでマヤより先に封印空間の中で待っていたのだ。
 
「おはよう、マヤ」

「うん、おはようウォーレンさん」

 マヤは素っ気なくそれだけ言うと、ウォーレンの横を素通りして聖剣を振り始める。

「やっぱり怒ってるか……」

「いえ、怒っているというほどではないと思うのです」

「本当かシロちゃん先輩」

 昨夜から相談に乗ってもらった結果、ウォーレンはシロちゃんのことを、自分よりマヤのことを知っている先輩だということで、シロちゃん先輩と呼んでいた。

「本当なのです。私には、マスターの感情が流れ込んで来ますから。今の感じは、拗ねてるだk――――」

 突然シロちゃんは口を閉じてしまう。

 明らかに言葉の途中だったのでウォーレンがシロちゃんに視線を向けると、シロちゃんは口を開けようとしているが、それができない様子だった。

「まさか……」

 ウォーレンがマヤを見ると、マヤがこちらに手をかざしている。

 魔物に対する魔物使いからの絶対命令権。

 魔物使いと魔物の間の絶対のルールであり、魔物使いにこれを使われると、魔物使いの魔力で生きている魔物は何もできなくなる。

 普段は魔物たちの自由意志を尊重し、絶対命令権を使うことには消極的なマヤだが、今は恥ずかしさが勝ったのか、シロちゃんの口を強制的に閉じさせているようだ。

「シロちゃん、おすわり!」

「わふっ!?」

 シロちゃんは意志に反して鳴き声で返事をし、その場におすわりする。

「シロちゃん先輩……」

「よーしよしよし、いい子だねシロちゃんは」

 シロちゃんの近くにやってきたマヤは、シロちゃんをよしよしとなで回す。

 全身もふもふなので分からないが、ウォーレンにはなんとなく、撫でられているシロちゃんは冷や汗をかいているように見えた。

 傍から見ているウォーレンには分からなかったが、この時マヤの手からシロちゃんへ「余計なことを言うな」という命令が流れ込んできていた。

「それで、ウォーレンさんはシロちゃんと色々話してたみたいだけど、なにか言いたいことは?」

「何だ、その…………昨日はすまなかった!」

「ふーん、それだけなんだ? シロちゃんから色々聞いたんじゃないの?」

 マヤの言葉に、マヤの腕の中でシロちゃんがうんうんと頷いている。

「そう……だな……、隠しても仕方ないから言うが、シロちゃん先輩には色々とアドバイスをもらった。でも、これは俺が決めたことだ…………マヤ、明日、一緒に出かけないか?」

「それは、デートってことでいいのかな?」

「…………っっ……ああ、そうだ、デートだ」

「そっか。う~ん、仕方ないなあ、そういうことなら、昨日のことは許してあげる」

 口調だけ、仕方なく、という感じなマヤだったが、ウォーレンに誘われた瞬間から、その口元は緩み始めており、喜びを隠しきれてなかった。

「本当か! よかった~」

 ウォーレンはほっと胸をなでおろす。

「でも、今度同じことしたら許さないからね?」

「ああ、わかった」

「じゃあ事の話はおしまいね。さっ、今日こそ空間跳躍の対抗策を見つけないと」

 マヤはわざとらしく少し大きな声で言うと、ウォーレンから顔をそむけて離れていく。

「まったく、相変わらず素直じゃないな」

 遅れてやってきたマッシュは、ウォーレンの足元に来てため息をついた。

「マッシュ、どういうことだ?」

「マヤは今日会う前からウォーレンのことを許すつもりだったということだ」

「それは一体……」

「忘れたのか? マヤは使役している魔物と五感を共有できるんだぞ? それは、ウォーレンが相談していたシロちゃんとて例外ではない」

「ということは……」

「そういうことだ。お前がマヤに嫌われたかもしれないと、本気で落ち込んで情けなく相談する姿を、マヤは見ていた。それを見て、とっくにマヤはお前を許してたんだよ」

「じゃあなんで、今日会った時あんなに素っ気なかったんだ?」

「そりゃもちろん、お前からデートに誘って欲しかったからだろう?」

「なるほど……」

 ウォーレンは事の真相がわかった途端、マヤが急速に可愛く思えてきた。

「それは流石に可愛すぎないか?」

「はあ……惚気けるならもう出て行ってもらうぞ?」

「すまん……でも、そうか、そうだったのか」

 ウォーレンはそれからしばらく、口元が緩んでしまうのを堪えるのに苦労したのだった。

***

「もしかすると、セシリオさんも意識を逸らさせてるのかな?」

 午前の訓練を終え、お昼ごはんを食べながら、マヤはセシリオの空間跳躍について考えていた。

 ちなみに午前中は昨日同様一方的にやられ続けていたので、マヤもシャルルもボロボロである。 

「昨日ウォーレンさんから聞いたっていう剣神様の技術のことか? だから完全に意表を突かれると?」

「うん。それに、エスメラルダさんが跳躍させられる場所を完全にわかってるっぽいのもそれなら説明がつくのかなって」

 2人で意図的にマヤたちの意識を誘導しているのなら、セシリオが次に跳躍させる先をエスメラルダが予想できてもおかしくない。

「しかし、それがわかったところでどうする? 意識を逸らす技術がなければセシリオ様たちの意図は読めないぞ?」

「まあそれはそうなんだよねえ……」

 加えてマヤは、エスメラルダのあの動きはそれだけでは説明できない気もしていた。

 それこそ、何かしらの手段で空間跳躍の前に、自分が次に跳躍する場所がわかっているのではないか、と思っているのだが、それが分かれば朝から昼食前までずっと一方的にやられたりはしていない。

「とりあえず、午後は私たちの意識が誘導されてないかの確認と、エスメラルダさんの空間跳躍にパターンがあったりしないかを確認しよう」

「了解だ。できれば、どちらも確認できるといいんだが…………」

 シャルルの言葉がフラグとなってしまったのか、結局その日の午後の訓練でマヤとシャルルが得た情報は、セシリオとエスメラルダが意識を逸らす技術を使っているかは分からない、ということと、エスメラルダの空間跳躍には全くパターンがなく、予め決まった場所に空間跳躍することで完璧な動きをしているわけではない、ということだった。

 つまり、マヤとシャルルは、空間跳躍への対策の手がかりすら見つけられず、セシリオとエスメラルダとの戦闘2日目を終えたのだった。
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