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銀狐の章

第052話「潜入!研究室 ②」

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 ◆ ◆ ◆ ◆

「や、やっと着いた!」

 額の汗をぬぐいながらモー君はその場にぺたんと座り込む。
 疲労困憊といった感じだ。
 ゼミの教室まで到着し、気が抜けてしまったのだろう。

「やばい……凄く眠い……」

 おーい。ここで寝るんかい。

「寝ちゃダメ!お兄ちゃん死んじゃうよ!」

 必死にモー君を揺らす光ちゃん。
 いや、ここ雪山じゃないし。遭難してるわけじゃないから。

「そうだぞお主様、せっかくここまで来たことが無駄になってしまうぞ」

「シェン、オレも疲れたんだ……。なんだか、とても眠いんだ……」

 力なくモー君がシェンちゃんの手を握る。

「お主様!我様を置いて逝かないでくれ!」

 うをおおい!なんでここでフラダンスの犬ごっこしてるんだよ。
 ここに来るだけでどんだけ体力使ってるんだよ。
 ドア開けるだけじゃん。そしたら好きなだけ寝てもいいじゃん。

「なんだか騒がしいねぇ」
 
 ゼミ室のドアが開いた。そこからか顔をのぞかせたのはお迎えの天使ではなく本日の主役、モリアーティ教授だ。
 
「おお、そこで天に召されようとしているのはモッチーじゃないか」

 森阿茶子、みんなからモリアーティと呼ばれる教授の姿がそこにはあった。
 彼女は私を見つけてにっこり。

「あーちゃん、おはこんばんちは!」

「お、おはこんばんちは……」

 教授はいつものように明るい声であいさつしてくる。これで「んちゃ!」とか言ってくれればさらに好感度が上がるのに……
 モリアーティ教授はシェンちゃんと光ちゃんを見つけた。

「おはこんばんちは!」

「おはこんばんちはです!」

「おはこんばんちは……なのじゃ」

 光ちゃんはよそ行きの笑顔で、シェンちゃんはぎこちなく挨拶する。

「モッチーの事だから夕方くらいになると思っていたんだけど」

 言い方は失礼だが間違いではない。モー君は最初は昼過ぎに家を出ようとしていたのだ。

「嫌なことは早めに終わらせたいんですよ」

 モー君がゆっくりと立ち上がった。ちょっと疲れたような顔をしているけど問題ないだろう。どうせもっと疲れるんだし。

「色々と面白い話が聞けそうだね。中に入ってまずはお茶でも飲もう」

 私たちを見回してからモリアーティ教授はいつもの笑顔でそう言った。
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