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銀狐の章
第064話「家に帰ると ①」
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家に帰りついた。
出る時には四人だったが帰る時には一人増えて五人になっている。
このまま事あるごとに増えたりしないよな……オレの家は(正確には叔父の家だが)確かに広いがそんなに部屋とかあるわけではない。いつか「神狐の秘密」とか暴露本が出た時に部屋の間取りとか調べられたらどうするのだろうか。
「ねえ、お兄ちゃん」
家に入るなり光がすり寄ってきた。
「この子猫ちゃんの部屋はどうするの?」
ゾワリ。
気のせいだろうか、光の声のトーンが一オクターブ下がった気がした。
「ふん。儂は末席とはいえ神域に身を置く者。それ相応のオモテナシを期待するのニャ」
居候兼研究対象の分際で何を偉そうにしていんだこいつは。
「ねぇ、猫って踏んじゃっていいんだよね?」
ニャンの手を握りながら光が呟いた。
光の表情は見えないがニャンの顔がみるみる青ざめていく。どんな表情でニャンを見つめているのか――きっと輝くような笑顔に違いない。
「ふ、踏むのだけは勘弁して欲しいのニャ」
「おいおい、踏むのは歌の中だけにしておいてくれよ」
光の冗談はいつも面白いな。
リビングへと向かう。
部屋のに入るなりニャンの動きがぴったりと止まった。
「何なのニャ……これは……」
ニャンの指さす先には【シェンちゃん】【あーちゃん】と名札のついた段ボール箱が二個。光がシェンとあーちゃん先輩と遊ぶために作り上げたものだ。
さすがに引いたか?
リビングにこんなものがあれば……まあ、動揺するだろう。
「す……凄いのニャ!この大きさ……この快適な空間!」
いきなり箱に入って丸くなる。
この箱がシェンと先輩のものだと告げると「二人だけズルいのニャ」と羨ましそうに二人を見た。
「お前が望むならその部屋、譲ってやらぬでもないぞ」
「ニャンと!?」
シェンの言葉にニャンは瞳を輝かせた。
「そうね、せっかく一緒に住むんだから、これくらいは妥協してあげないとね」
あーちゃん先輩も嬉しそうに微笑んでいる。
なんと心温まる光景だろうか。
シェンも先輩も光の作ってくれたこの部屋にきっと思い入れがあるはずだ。それを押し殺してまでニャンの為に譲ってくれようとしている。二人には感謝しかない。
「でも、二つは多いんじゃないか?」
オレの言葉に二人はハッとなる。
互いに目配せし合い一様に頷いた。
「何を言うお主様!これは我様たちの気持ちの現われなのじゃ!いくらあっても問題ないのじゃ!」
「そ、そうよ!せっかく住人が増えたんだから気持ちよく住めるよういにするのは当然の事じゃない!」
必死になって訴える二人。
二人がそういうのなら、仕方ない。
ここは二人の気持ちを汲んであげよう。
「分かった。じゃあ、この箱はニャンの部屋ということで」
「野良狐!あーにゃん!感謝するのニャ!」
嬉しそうに言うニャンに二人は満面の笑みで応えるのだった。
チッ!
どこからか舌打ちのような音が聞こえた――きっと気のせいだろう。
□■□■□■□■用語解説□■□■□■□■
【「~の秘密」】
いわゆる研究本。火付け役は1992年発売の「磯野家の秘密」それ以降「ウルトラマン研究序説」など様々な本が出版される。「空想科学読本」など現代でも広く読まれている本の祖先。
【一オクターブ】
オクターヴは、西洋音楽における8度音程のこと。 簡単な例で言うと「ドレミファソラシド」という8つの音の「ドからドまでの距離」
【猫って踏んじゃっていいんだよね?】
童謡の「猫ふんじゃった」ピアノの初歩の練習曲としても有名。よくよく聴けばこの曲の歌詞は結構えげつない。これを子供に歌わせるとか……まあ、楽しく歌えていればいいのか?実際、猫のどこを踏んだのかは不明だが誰でも踏まれたら大概怒る。
出る時には四人だったが帰る時には一人増えて五人になっている。
このまま事あるごとに増えたりしないよな……オレの家は(正確には叔父の家だが)確かに広いがそんなに部屋とかあるわけではない。いつか「神狐の秘密」とか暴露本が出た時に部屋の間取りとか調べられたらどうするのだろうか。
「ねえ、お兄ちゃん」
家に入るなり光がすり寄ってきた。
「この子猫ちゃんの部屋はどうするの?」
ゾワリ。
気のせいだろうか、光の声のトーンが一オクターブ下がった気がした。
「ふん。儂は末席とはいえ神域に身を置く者。それ相応のオモテナシを期待するのニャ」
居候兼研究対象の分際で何を偉そうにしていんだこいつは。
「ねぇ、猫って踏んじゃっていいんだよね?」
ニャンの手を握りながら光が呟いた。
光の表情は見えないがニャンの顔がみるみる青ざめていく。どんな表情でニャンを見つめているのか――きっと輝くような笑顔に違いない。
「ふ、踏むのだけは勘弁して欲しいのニャ」
「おいおい、踏むのは歌の中だけにしておいてくれよ」
光の冗談はいつも面白いな。
リビングへと向かう。
部屋のに入るなりニャンの動きがぴったりと止まった。
「何なのニャ……これは……」
ニャンの指さす先には【シェンちゃん】【あーちゃん】と名札のついた段ボール箱が二個。光がシェンとあーちゃん先輩と遊ぶために作り上げたものだ。
さすがに引いたか?
リビングにこんなものがあれば……まあ、動揺するだろう。
「す……凄いのニャ!この大きさ……この快適な空間!」
いきなり箱に入って丸くなる。
この箱がシェンと先輩のものだと告げると「二人だけズルいのニャ」と羨ましそうに二人を見た。
「お前が望むならその部屋、譲ってやらぬでもないぞ」
「ニャンと!?」
シェンの言葉にニャンは瞳を輝かせた。
「そうね、せっかく一緒に住むんだから、これくらいは妥協してあげないとね」
あーちゃん先輩も嬉しそうに微笑んでいる。
なんと心温まる光景だろうか。
シェンも先輩も光の作ってくれたこの部屋にきっと思い入れがあるはずだ。それを押し殺してまでニャンの為に譲ってくれようとしている。二人には感謝しかない。
「でも、二つは多いんじゃないか?」
オレの言葉に二人はハッとなる。
互いに目配せし合い一様に頷いた。
「何を言うお主様!これは我様たちの気持ちの現われなのじゃ!いくらあっても問題ないのじゃ!」
「そ、そうよ!せっかく住人が増えたんだから気持ちよく住めるよういにするのは当然の事じゃない!」
必死になって訴える二人。
二人がそういうのなら、仕方ない。
ここは二人の気持ちを汲んであげよう。
「分かった。じゃあ、この箱はニャンの部屋ということで」
「野良狐!あーにゃん!感謝するのニャ!」
嬉しそうに言うニャンに二人は満面の笑みで応えるのだった。
チッ!
どこからか舌打ちのような音が聞こえた――きっと気のせいだろう。
□■□■□■□■用語解説□■□■□■□■
【「~の秘密」】
いわゆる研究本。火付け役は1992年発売の「磯野家の秘密」それ以降「ウルトラマン研究序説」など様々な本が出版される。「空想科学読本」など現代でも広く読まれている本の祖先。
【一オクターブ】
オクターヴは、西洋音楽における8度音程のこと。 簡単な例で言うと「ドレミファソラシド」という8つの音の「ドからドまでの距離」
【猫って踏んじゃっていいんだよね?】
童謡の「猫ふんじゃった」ピアノの初歩の練習曲としても有名。よくよく聴けばこの曲の歌詞は結構えげつない。これを子供に歌わせるとか……まあ、楽しく歌えていればいいのか?実際、猫のどこを踏んだのかは不明だが誰でも踏まれたら大概怒る。
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