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手掛かりは広大な森に
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翌日、メグとセオドアはエルムの部屋にいた。
「芯の素材を考えないといけないんだよね」
「あぁ、種子にため込まれた魔力が多すぎたかもって。ってことは大規模な魔術道具に使う素材だったら行けるってことか?」
「いや、大規模な魔術道具の線はめちゃくちゃ太いんだ。細くて丈夫な素材を探さないと」
「でも、どうやって」
メグが方法を調べようと、魔術道具の素材についてまとめた本を手に取る。
「あ、そういえば」
セオドアが何かを思い出し、口を開いた。
「植物の枝に魔力を通すと光るって、知ってるか?」
「あぁ、ほとんど光るよな」
「時々ある光らないやつが魔力に強い。魔術道具の素材を探すにはまず魔力を通すって。魔術道具の職人の話を聞いたことが……」
メグとエルムの顔をみたセオドアが思わず話をやめてしまうほど、メグとエルムがすさまじい形相で聞いていた。
「つづけて、セオ」
セオドアは、エルムが珍しく自分のことを愛称で呼んだと内心驚きながら話を続ける。
「強い魔力を通すほど光る植物は多いんだと。だから、森とかで強い魔力を通しながら探せば何とかんるんじゃないかと」
「試す価値はありそう」
「今から、森へ行く?」
屋敷から子供の足でも一時間しない距離に大きな森がある。メグが立ち上がろうとするのをエルムが制した。
「いや、今日はお休み。ずっと実験してたしね。メグはこれから街に行くんでしょ?」
「うん、お母様と、でも説明すれば……」
「行っといで? 明日からの方針が決まったからよかったよ」
明日から頑張ろうね。エルムはそう続けて研究ノートと本をしまった。
「……そうだね」
そう言ったメグの不服そうな表情にセオドアだけが気が付いていた。
******
「エル、どうしてメグを止めたんだ?」
メグが準備のためにエルムの部屋を出ていくと、セオドアは尋ねた。
「メグはいっつも思い立ったらすぐ行動だから。ちょっと下調べしないと。それに急に行く森なんて危険すぎるよ」
エルムはそう言って、植物図鑑と地形図を本棚から取り出す。
「思ったよりも兄さまだな」
「思ったよりもってなんだよ。いっつも頼れる兄さまだろ? それに、母上がメグと一緒に買い物行くのを楽しみにしてたんだよ」
「思ったよりも息子だな」
「うるさい」
からかう口調のセオドアにエルムは唇を尖らせてむくれた。
******
「よし!」
メグは携帯サイズの植物図鑑を片手に森の入り口の前にいた。
「お母さまには悪いことしちゃったけど……さぁ、行こう!」
メグは1人で森の中へと入っていく。
「ごめんね」
そう言って花を摘んだり木の枝を折りながら魔力を通していくメグ。
魔力を流すと光る植物ばかりだ。
「うーん、そんな簡単にはいかないよね。……もう少し奥に行ってみようかな」
メグはそう呟き頷くと、一人、森の奥へと足を進めていった。
******
「まさか……」
昼食だと声をかけられ、エルムとセオドアが食堂に入った瞬間、エルムは背筋が凍る思いになった。
メグと買い物に行っているはずのフレアがそこにいたからだ。
「メグと買い物に行ったのでは……」
セオドアが恐る恐るフレアに聞くと、フレアは不思議そうな顔をした。
「あら? 殿下とエルムと遊びたいからと断られてしまったの。……一緒じゃないのですか?」
思い立ったらすぐ行動とはこういうことかとセオドアも頭を抱えた。
「探しに……」
セオドアが飛び出そうとするところを、エルムが腕をつかんで止めた。
「まって、それはダメ。危ない。これ以上行方不明者を増やせない」
「……エル」
エルムは立ち上がって、小さくうなると口を開く。
「母上、メグが一人で森へ向かったようです。おそらくもう森に入っています」
フレアの顔からみるみる血の気が引いていく。
エルムの言葉を聞いた執事が駆け足で出ていった。
「芯の素材を考えないといけないんだよね」
「あぁ、種子にため込まれた魔力が多すぎたかもって。ってことは大規模な魔術道具に使う素材だったら行けるってことか?」
「いや、大規模な魔術道具の線はめちゃくちゃ太いんだ。細くて丈夫な素材を探さないと」
「でも、どうやって」
メグが方法を調べようと、魔術道具の素材についてまとめた本を手に取る。
「あ、そういえば」
セオドアが何かを思い出し、口を開いた。
「植物の枝に魔力を通すと光るって、知ってるか?」
「あぁ、ほとんど光るよな」
「時々ある光らないやつが魔力に強い。魔術道具の素材を探すにはまず魔力を通すって。魔術道具の職人の話を聞いたことが……」
メグとエルムの顔をみたセオドアが思わず話をやめてしまうほど、メグとエルムがすさまじい形相で聞いていた。
「つづけて、セオ」
セオドアは、エルムが珍しく自分のことを愛称で呼んだと内心驚きながら話を続ける。
「強い魔力を通すほど光る植物は多いんだと。だから、森とかで強い魔力を通しながら探せば何とかんるんじゃないかと」
「試す価値はありそう」
「今から、森へ行く?」
屋敷から子供の足でも一時間しない距離に大きな森がある。メグが立ち上がろうとするのをエルムが制した。
「いや、今日はお休み。ずっと実験してたしね。メグはこれから街に行くんでしょ?」
「うん、お母様と、でも説明すれば……」
「行っといで? 明日からの方針が決まったからよかったよ」
明日から頑張ろうね。エルムはそう続けて研究ノートと本をしまった。
「……そうだね」
そう言ったメグの不服そうな表情にセオドアだけが気が付いていた。
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「エル、どうしてメグを止めたんだ?」
メグが準備のためにエルムの部屋を出ていくと、セオドアは尋ねた。
「メグはいっつも思い立ったらすぐ行動だから。ちょっと下調べしないと。それに急に行く森なんて危険すぎるよ」
エルムはそう言って、植物図鑑と地形図を本棚から取り出す。
「思ったよりも兄さまだな」
「思ったよりもってなんだよ。いっつも頼れる兄さまだろ? それに、母上がメグと一緒に買い物行くのを楽しみにしてたんだよ」
「思ったよりも息子だな」
「うるさい」
からかう口調のセオドアにエルムは唇を尖らせてむくれた。
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「よし!」
メグは携帯サイズの植物図鑑を片手に森の入り口の前にいた。
「お母さまには悪いことしちゃったけど……さぁ、行こう!」
メグは1人で森の中へと入っていく。
「ごめんね」
そう言って花を摘んだり木の枝を折りながら魔力を通していくメグ。
魔力を流すと光る植物ばかりだ。
「うーん、そんな簡単にはいかないよね。……もう少し奥に行ってみようかな」
メグはそう呟き頷くと、一人、森の奥へと足を進めていった。
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「まさか……」
昼食だと声をかけられ、エルムとセオドアが食堂に入った瞬間、エルムは背筋が凍る思いになった。
メグと買い物に行っているはずのフレアがそこにいたからだ。
「メグと買い物に行ったのでは……」
セオドアが恐る恐るフレアに聞くと、フレアは不思議そうな顔をした。
「あら? 殿下とエルムと遊びたいからと断られてしまったの。……一緒じゃないのですか?」
思い立ったらすぐ行動とはこういうことかとセオドアも頭を抱えた。
「探しに……」
セオドアが飛び出そうとするところを、エルムが腕をつかんで止めた。
「まって、それはダメ。危ない。これ以上行方不明者を増やせない」
「……エル」
エルムは立ち上がって、小さくうなると口を開く。
「母上、メグが一人で森へ向かったようです。おそらくもう森に入っています」
フレアの顔からみるみる血の気が引いていく。
エルムの言葉を聞いた執事が駆け足で出ていった。
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