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帰ってこないメグ、そして捜索

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「見えるか?」

「いえ、子供はおろか、大人もまったく……」
 
 数時間後、森の入り口には人が集まっていた。

 メグが森に入ったと思われるのは昼前、もうすでに5時間以上経過していた。森の周辺の小さな林も捜索したが、メグは見つからない。
 この時点で、メグは森に入ったと断定された。

「森の捜索に入る」
 
 森の全体地図を広げ、オリバーとヒューゴで植物の分布からルートを予測。探索範囲の決定をしたのち、隊を組み森に入っていく予定になっていた。
 
 屋敷のすぐ近くにある森は、マルサマーレのなかでも有数の広さを誇る森だった。大人でも一人で入るのをためらうほど深く、暗い場所もある。
 エルムはよくフィールドワークでヒューゴと入ることがいつも念入りに装備とルートの確認をして、庭師や執事にも頼み、複数人のチームを組んで方角を見失わないよう細心の注意をしていくのだ。
 
 メイドが誰も準備を手伝っていない。研究室のフィールドワーク用の装備が中途半端に減っている。それだけでエルムは泣きそうになった。
 指揮を執るアッシュの顔がこわばっている。ローレンスは冷静になれないからとアッシュとオリバーに捜索隊から外された。

「おそらくこのルートです。植物を次から次へと採取しているのであれば、このあたりが危険区域です。念入りにお願いします」

 オリバーが地図に最初の捜索範囲を示した。アッシュが全体に指示を出す。

「日没前に見つけだします!」

 アッシュが号令をかけ、捜索隊が中に入った。
 
 ******

「……植物の話、しなければよかった」

 セオドアが弱弱しく呟く。

 日没まで15分を切っている。発見の合図はいまだ鳴っていない。夜の森は危険だ。二次災害を防ぐために夜通しの捜索はできない。

「いや、僕がちゃんと危険を説明すれば」

 居ても立っても居られずに森の入り口まで来たが、2人にできることはなかった。
 フレアが泣きそうな顔をしているエルムとセオドアの肩に触れた。

「メグは大丈夫よ。あの子案外ちゃっかりしてるから、ただいまって戻ってくるわ」

「……うん」

 うつむいたままの2人、フレアの瞳も不安に揺れている。
 フレア付きのメイドがこれから冷えてきますとタオルと飲み物を持ってきたが、誰も手を付けない。

 無言のまま時間だけが過ぎていく。

 ******

「奥様、もう間もなく、……日没です」

 メグ付きのメイド、ラドの言葉にフレアが立ち上がった。森に入っていこうとするのをラドとフレア付きのメイドが必死につかんで止める。

「メグ! メグ! お願い、帰ってきて……お願い……」

 泣き崩れるフレアのそばにエルムが駆け寄った。その後ろでセオドアが呆然と立ち尽くしている。

「僕……私は……なにが……なにが、できる」

 小さく呟くセオドア。いくら考えても思考がまとまらなかった。セオドアは手のひらを強く握りしめることしかできなかった。

 日が沈む。

 捜索中止の合図が響いた。
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