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発見、安堵、そして涙

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 数十分後、捜索隊が戻ってきた。表情はない。

 悲痛な顔をしたアッシュが、捜索隊をねぎらい、明日も捜索を行うことを告げた。

 憔悴しきったフレアに寄り添っていたエルムのもとに、捜索に加わっていたヒューゴが近づいてきた。

「……ヒューゴさん」

「エルム様、あの、これ……森で」

 ヒューゴが握っていたのは、メグが今日つけていた赤い木の実を模した髪飾りだ。

「……メグ」

 エルムが髪飾りを受け取る。エルムも涙を抑えることができなくなった。

 その時だった。

「なんだ、あれ」

 諦めきれず、森の入り口周辺を見回っていた騎士の一人が、森の奥で何かが不自然に光っているのに気が付いた。
 
 不自然な光はゆらゆらと横揺れを繰り返している。

「光る動物?」

「虫じゃないか?」

 憶測が飛び交う中、エルムが顔をあげた。ヒューゴが頷いて、叫んだ。
 
「この時期に、光る虫、動物はこの森にはいません!」

 ヒューゴの言葉にアッシュが続く。
 
「明かりを準備! 何人かついてきてくれ! 確認に行く!」

 アッシュが捜索隊を数人つれて暗くなった森に入る。

 エルムたちは祈るような思いで後姿を見送った。

 その場にいる全員が、一生とも思えるほど長く感じた一時間後。
 アッシュが足をくじいて動けなくなったメグを抱えて森から出てきた。

 森の入り口で大歓声が上がった。

 「……マーガレット、メグ、メグ」

 フレアがぼろぼろと泣きながら、メグを抱える。メグは疲れ切って動けなくなってはいるが、意識ははっきりとしていた。

「うん……」
 
「メグのばか! だめだって……だめだって言ったよな! ……よかった……生きててよかった」

 エルムはメグの腕に触れ、無事を確認すると、何度もよかったと繰り返した。

「にいさま、言うこと聞かなくて、ごめんなさい……みつけたよ」

「……え?」

「見つけたの……強い」
「そんなのいい!!!」
 
 メグの言葉をセオドアが大きな声で遮った。驚いたメグがセオドアのほうを向くと、セオドアはゆっくりとメグに近づいてきた。

「死ぬところだったんだ! もし、見つけられなかったら! メグは1人で死ぬところだった! 森は危ないって、エルにあれだけ言われたのに! 芯の素材なんてみんなで探しに来ればよかっただろ!? メグとエルのためならレージュの人たちは喜んで力を貸してくれる! なんでメグ1人で……こわかっただろ……なぁ、なんでボク、メグが行くかもしれないって気が付いてたのに……ごめんな……うっ、あぁぁぁぁぁぁ」

 セオドアが堰を切ったように泣き始める。それにつられてエルムも声をあげて泣き始めた。
 メグは目を丸くしておろおろと2人を見つめている。

「ごめ、ごめんなさい……泣かないで、ね、泣かないで……うぅ、ごめ、ごめんなさい……ありがとう、う、ひくっこわかったぁ、ひっく、こわかった……」

 しゃくりあげて泣く2人に謝りながら、ついにメグも泣きだす。
 
 メグも不安だったのだ。森の奥でバランスを崩し足をくじいて動けなくなった。誰にも言わずに森へ入ったことを強く後悔した。自業自得だとメグは一度生きることをあきらめかけた。
 捜索隊の入った音が聞こえたとき、わずかな希望を見出した。声を出したがメグの声では届かなかった。
 大きな音とともに捜索隊が去っていくのに絶望した。
 最後の力を振り絞って、近くにあった木の枝に魔力を通して振り続けた。

 見つかったのは偶然と執念が重なったに過ぎない。
 
 日没後、フレアが取り乱し、帰路につくのが遅れたこと。その間も捜索隊があきらめずに周辺の情報収集をし続けたこと。
 雲が多く出ていて、暗くなるのが早かったこと。
 そして、ヒューゴとエルムが森にすむ光る生物の存在をあえて隠したこと。
 アッシュもそれに気が付きながら、一縷の望みにかけたこと。

 すべてが幸運だったのだ。
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