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Kyrie

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020. きんきんかき氷(3)

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しゃーねーなー、休み明けテスト勉強するかな。
俺は藤堂に言われたように、朝っぱらからレネさんのマンションを訪ね、インターフォンを押した。

どどどどどど

どどど?

バターンっとドアが開いて、いちごのいい匂い?

ぶほっ?!

もっふりした感触とぎゅうぎゅうのハグ。

「ティグさんっ?!」

「昨日はごめん、靖友くん!」

あ、ああ……?!
なんでここにいるの、ティグさん?

「ごめんなさい、靖友くん」

「あ、いや、俺もよくなかったし」

ティグさんはぎゅうぎゅうと抱きしめてくる。
不安にさせちゃったかなぁ。
そうだよなぁ。


「キース!キース!キース!」

は?!
レネさん、しれっとなに言ってんの?!
こらこらこら、藤堂も同調するんじゃありません!
合唱するんじゃありません!

レネさんと藤堂がキスしろとはやし立てる。

ったく、もうーーーー!

「ティグさん、ちょっとかがんでくれます?」

「こう?」

「そうです」

俺の顔の正面にティグさんの顔がやってきた。
うん、黄色と黒、今日もカッコいいな。
にこっと笑いかけてみる。

「あいつらのことは無視していい。
悪ふざけが過ぎる。
…その……トモダチだし……」

「あ、大丈夫ですよ。
俺、ティグさんのことトモダチじゃなくて好きみたいです、まだよくわからないけど。
だから大丈夫」

俺はそのままちょっと背伸びをして、ティグさんの口に唇を押し付けるだけのキスをした。


ヒュー!ヒュー!!と口笛が鳴り、「うわあああああ!!!」という藤堂の甲高い声が響いた。
そんな声出すならやらせるな、っていうの。
あれ?

「ティグさん、大丈夫?」

俺にもたれかかるように俺の肩に顔を埋めてさっきより力を込めてぎゅうぎゅうに抱きしめてくる。

「ティグ、照れてる。
かわいいー!」

「藤堂、おまえね」

「靖友くん、カッコいいー!!」

「ああ、それはもっと言って!
ほめて!ほめて!ほめちぎって!」




熱烈歓迎のあと、レネさんとティグさんはレークスに出かけていった。
店はまだ開けないけど、仕込みに入るんだって。
そうして俺たちはやっとテスト勉強に取り組んでいる。

一回目の集中力が切れた頃、藤堂が悪戯っぽい目をして俺を見ているのに気がついた。

「なんだよ」

「ね、ティグがどうしてここにいたか、知りたくない?」

「どうせレネさんか藤堂が呼んだんだろ」

「それが違うんだなぁ」

藤堂はにやにやしながら話し始めた。


昨日、俺が帰ってすぐぐらいにティグさんからレネさんへ電話があったそうだ。
俺を探して電話をかけてきた。
あ、俺、昨日藤堂にかき氷に誘われたあと、スマホの電源切ってたわ。

「もう帰ったって知ったらティグはもうがっかりした声でね。
約束していたパンケーキも食べさせられなかった、って。
かわいそうになって、レネが僕とテスト勉強する約束のことを話しちゃった」

ああ、ごめんなさい、ティグさん。

「そしたら今朝、6時くらいからパンケーキの準備をさせてくれってティグがここに押しかけてきたんだって」

「え?」

「ねーねー、靖友くん、知ってる?
ティグんちの冷凍庫、冷凍いちごだらけなんだよ」

は?

「いちごの季節に買い込んでは洗ってへた取って冷凍してたの。
あとね軽く砂糖と煮たのも冷凍してる。
こうしておけばいつでも靖友くんにいちごが食べさせてあげられるから、って」

「え」

「靖友くん、真っ赤っ!
かわいいー!」

あ、いや、俺、それ初めて知ったんだけど。
なにそれ、かわいすぎるだろ、ティグさん。



ジェントルメンがレークスに行くとき、ティグさんが言ったんだ。

「おやつにパンケーキを焼くつもりだから、勉強がんばってね。
ストロベリーソースも作ったし、お土産のメイプルシロップもあるし」

「わぁ、嬉しいなぁ。
がんばりますね」

「うん、楽しみにしてて!」

ティグさんは嬉しそうに笑うと、手を振って出かけていった。




「昨日まで、恋愛的に好きかどうかあやふやだったのに、どうしてティグにキスしたの?」

「ん、ああ。
だってさ、なんかすとんと落ちた。
否定しても仕方ないじゃん。
それは受け留めないと」

「………」

「あれ、藤堂?どうした?」

「……いや……
靖友くん、ほんとにカッコいいんだなぁ」

「そうか?
もっとほめて!ほめてー!!」

「はいはい。
じゃあ、このページの問題をやりきったらほめてあげる」

「よーし、やっちゃうぞー。
藤堂はここからここまでね。
そうしたら、とーさんほめてやるからな」

「とーさん?」

「集中!集中!」

「ふふふ、靖友くんがパパかぁ」

とーさんとパパは違うから!

あ、そうだ。

「藤堂くぅん」

「なに、そんな気持ち悪い声出してるの」

「ボク、一生懸命お勉強したらぁ、いちごソースの味見してもいーい?」

「だめ。
それに全然かわいくないし」

ちぇっ。
来た時からずっと、今もいちごのいい匂いがしてるんだよ。
大好きないちごの匂いが充満しているにこにこルームにいるわけなんですよ。
我慢できないじゃん?

「冷凍いちごを持ち込んでここで煮たんだよ。
そんなことしないで待っていてあげて」

「うん」

「僕もレネから6時過ぎに連絡があってさ、7時前からここに来て見てた」

「え、泊まったんじゃないの?」

「ううん」

そっかー。

そして、そっかー。
ティグさん、いちごソース、そっかー。
そっかー。

「靖友くん、顔にやけてる」

「でへ」

「まぁ、靖友くんがハッピーなら僕はいいよ」

でへ。

「僕はね、靖友くん」

なになに?
まだ嬉しいこと言ってくれちゃう?

「あのいちごソース、なんとかかき氷に合わせられないかな、って考えてるんだ」

え、そっち⁈

「でへ。それも美味そう」

「お昼、控えめにしとこうね。
パンケーキにかき氷、楽しみ!」

「うん」

藤堂と俺はようやく勉強を再開した。
早く終わらせて頭の中をティグさんといちごでいっぱいにしたい。
大好きなものでいっぱいいっぱいにしたい。





<了>






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