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006. My T(6)おまけ
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藤堂。2年生12月
クリスマスの手伝いが終わって、12月27日。
レネとティグが靖友くんと僕にバイト代の代わりにプレゼントを買ってくれ、ディナーもご馳走してくれる日だ。
午後、待ち合わせのショッピングモールの大時計の広場に向かった。
僕の勝手で好きに手伝っただけだけど、靖友くんに頼ってしまい、彼にはなにかしてあげたかったから、2人の申し出を受けることにした。
しかし、これまでのことでレネたちが高額のものもほいほいと買いそうなことは目に見えている。
それもこちらが妥協しそうだと「真人、本当に君はこれが欲しいのかい?」と、あの黄金に光る眼でレネに見つめられると、ごまかしきれない。
なので、僕たちは「欲しいものは言う。でもバイト代の相場を越えそうなときには差額は自分たちで支払う。それが受け入れられなかったらプレゼントは断る」と決めてきた。
まだレネには言っていないけど。
先に言ったらすねて、それの相手をするほうが大変だ。
4人が揃うと、まず僕が欲しいと言ったバックパックから見にいくことにした。
最初はレネが隣にいて話をしていたんだけど、クリスマス騒動明けの休みであることや久しぶりのティグとの外出のせいで、いつしか2人が並んで歩き、冬スィーツ情報、新しい店やケーキ情報、通りすがりのお店のケーキのチェック、有名チョコレート店の新作チョコの感想など、とにかく甘いもの談義が始まった。
なので、僕は自然と2人の後ろを靖友くんと並んで歩くことになった。
後ろから見るレネの姿はカッコよかった。
今日は黒いセーターに濃いオレンジの素敵なデザインのロングコートを着ている。
がっしりとした厚みのある身体にそのコートはよく似合っていた。
斜め後ろから時々見える彼の横顔はリラックスしていて、僕の好きな顔をしていた。
僕がレネばかり見ていたので、靖友くんにそれを軽くからかわれた。
「まぁ、わからないでもないけどねぇ。
カッコいいじゃん、あの2人。
背高いし、身体もいいし、顔ちっちゃいし、顔もいいし。
ティグさんなんて、あの黄色がやっぱり映える格好してるよな」
黄色?
僕は靖友くんの言葉にひっかかった。
だって今日のティグの服装は白い厚手のロンTにシルバーとターコイズの飾りのついた黒いレザージャケット、ダメージジーンズと黒の履きこなされたワークブーツ。
黄色の要素が全然ない。
ただ、彼の顔の毛を除いては。
「靖友くん?
あ、あの、ちょっと聞いてみるけど、黄色って……?」
僕は慎重に聞いた。
「ん?
ティグさん、トラの獣人じゃん。
やっぱり全身黒の中に黄色をもってくると映えると思うよ」
平然と言う靖友くんの言葉に僕は思わず立ち止まった。
レネはライオン頭で身体が人間のパティシエだ。
金色に輝くたてがみと目が印象的だ。
初めてお店でレネの姿を見た時、大声を上げそうになった。
だってライオンがケーキ作って売っているんだよ!
それも甘いものに目がなくて、鋭い牙が並ぶ口を大きく開けてケーキを幾つも食べ、そのたびごとにとろけそうな表情になるし、「あーんして食べさせてくれ」と甘えてくるし。
そんなレネが付き合ってほしいと言ってきた。
正直僕は悩んだ。
僕にはレネがライオン頭に見える。
そしてティグはトラ頭だ。
ケーキショップ「レークス」に来るお客さんたちはなに一つ言わない。
僕だけに彼らがライオンとトラに見えているのか、それとも他の人にもそう見えているのか、判断がつかなかった。
結局、僕は途中で考えるのを止めた。
レネがライオンだろうがなんだろうが、彼は僕を好きで僕は彼が好きで、それでいいと思った。
「靖友くん、驚かないの?」
僕はおそるおそる聞いてみた。
「藤堂、おまえ俺をなんだと思ってんの?」
そう言って靖友くんは指輪物語から始まり、有名なファンタジー小説からヨーロッパの伝説や民話、日本の妖怪や鬼の研究書、遠野物語や今昔物語集、宇治拾遺物語などを読み込んでいるのだと鼻息荒く話し始めた。
「このファンタジー好きの俺が、本物の獣人に会えているだなんて、リアルファンタジー!」
だんだんアヤしい日本語になっているが、靖友くんはそのまま話し続ける。
「藤堂、『うしファン』知ってるだろ?
あれの黒豹と赤熊とレアキャラのユニコーンの獣人が俺、お気に入りなの」
「うしファン」とは「失われた最後のファンタジー・スラーク物語」という人気ゲームで魅力的なビジュアルの獣人が出てくる。
靖友くんはゲームも好きなのは知っていたけど、こんなにファンタジー好きだとはしらなかった。
「俺、もう大興奮だよ!」
本当に嬉しそうに靖友くんは前の2人を見つめる。
「それにさ」
靖友くんが続けた。
「ティグさんとレネさんが獣人だろうが人間だろうが、実のところ関係ないんだよ。
仕事している2人、めっちゃカッコいいよな」
ああ……
「靖友くん、大好きだーーー!」
僕は思わず靖友くんに抱きついた。
2人がライオンとトラであることを考えないようにはしたけれど、やっぱりひっかかるときもあって、でも誰にも話せなくて。
靖友くんにも同じように見えていた安心感と、だからといって騒ぎ立てるわけでもなくそれを受け留めている靖友くんに親近感が持てたことが嬉しくて。
「おう、俺も藤堂のこと好きだよ。
なになに、俺たち相思相愛ってヤツ?」
靖友くんもハグしてくれた。
と、そこに「なーにしてるの?俺も混ぜてー!」と振り返ったティグさんが僕たちに抱きついてきた。
ぐへ~!
つぶれるうううう!
「あー、ズルいぞ、3人でー!」とレネも抱きついてきた。
ぎょえ、くるしー!!!
200越えのレネとティグ、180越えの靖友くんの中にいたら、170越えはしている僕はとても小さく思えてしまうよ。
それにレネとティグがふざけてぎゅうぎゅう押してくる。
いい大人2人と高校生2人がぎゅうぎゅうしているのって、冷静に考えるとすごくばかばかしくなって、なんだか愉快になってきちゃって4人でげらげら笑い出しちゃった。
そしてその時、僕は見た。
どさくさに紛れて僕たちに抱きついているように見えて、実はティグは靖友くんに抱きつき柔らかな顔で笑っているのを。
こんな顔、見たことがない。
それはとても。
心から嬉しいことだった。
おわり
***
あとがき
https://etocoria.blogspot.jp/2017/12/my-t.html
クリスマスの手伝いが終わって、12月27日。
レネとティグが靖友くんと僕にバイト代の代わりにプレゼントを買ってくれ、ディナーもご馳走してくれる日だ。
午後、待ち合わせのショッピングモールの大時計の広場に向かった。
僕の勝手で好きに手伝っただけだけど、靖友くんに頼ってしまい、彼にはなにかしてあげたかったから、2人の申し出を受けることにした。
しかし、これまでのことでレネたちが高額のものもほいほいと買いそうなことは目に見えている。
それもこちらが妥協しそうだと「真人、本当に君はこれが欲しいのかい?」と、あの黄金に光る眼でレネに見つめられると、ごまかしきれない。
なので、僕たちは「欲しいものは言う。でもバイト代の相場を越えそうなときには差額は自分たちで支払う。それが受け入れられなかったらプレゼントは断る」と決めてきた。
まだレネには言っていないけど。
先に言ったらすねて、それの相手をするほうが大変だ。
4人が揃うと、まず僕が欲しいと言ったバックパックから見にいくことにした。
最初はレネが隣にいて話をしていたんだけど、クリスマス騒動明けの休みであることや久しぶりのティグとの外出のせいで、いつしか2人が並んで歩き、冬スィーツ情報、新しい店やケーキ情報、通りすがりのお店のケーキのチェック、有名チョコレート店の新作チョコの感想など、とにかく甘いもの談義が始まった。
なので、僕は自然と2人の後ろを靖友くんと並んで歩くことになった。
後ろから見るレネの姿はカッコよかった。
今日は黒いセーターに濃いオレンジの素敵なデザインのロングコートを着ている。
がっしりとした厚みのある身体にそのコートはよく似合っていた。
斜め後ろから時々見える彼の横顔はリラックスしていて、僕の好きな顔をしていた。
僕がレネばかり見ていたので、靖友くんにそれを軽くからかわれた。
「まぁ、わからないでもないけどねぇ。
カッコいいじゃん、あの2人。
背高いし、身体もいいし、顔ちっちゃいし、顔もいいし。
ティグさんなんて、あの黄色がやっぱり映える格好してるよな」
黄色?
僕は靖友くんの言葉にひっかかった。
だって今日のティグの服装は白い厚手のロンTにシルバーとターコイズの飾りのついた黒いレザージャケット、ダメージジーンズと黒の履きこなされたワークブーツ。
黄色の要素が全然ない。
ただ、彼の顔の毛を除いては。
「靖友くん?
あ、あの、ちょっと聞いてみるけど、黄色って……?」
僕は慎重に聞いた。
「ん?
ティグさん、トラの獣人じゃん。
やっぱり全身黒の中に黄色をもってくると映えると思うよ」
平然と言う靖友くんの言葉に僕は思わず立ち止まった。
レネはライオン頭で身体が人間のパティシエだ。
金色に輝くたてがみと目が印象的だ。
初めてお店でレネの姿を見た時、大声を上げそうになった。
だってライオンがケーキ作って売っているんだよ!
それも甘いものに目がなくて、鋭い牙が並ぶ口を大きく開けてケーキを幾つも食べ、そのたびごとにとろけそうな表情になるし、「あーんして食べさせてくれ」と甘えてくるし。
そんなレネが付き合ってほしいと言ってきた。
正直僕は悩んだ。
僕にはレネがライオン頭に見える。
そしてティグはトラ頭だ。
ケーキショップ「レークス」に来るお客さんたちはなに一つ言わない。
僕だけに彼らがライオンとトラに見えているのか、それとも他の人にもそう見えているのか、判断がつかなかった。
結局、僕は途中で考えるのを止めた。
レネがライオンだろうがなんだろうが、彼は僕を好きで僕は彼が好きで、それでいいと思った。
「靖友くん、驚かないの?」
僕はおそるおそる聞いてみた。
「藤堂、おまえ俺をなんだと思ってんの?」
そう言って靖友くんは指輪物語から始まり、有名なファンタジー小説からヨーロッパの伝説や民話、日本の妖怪や鬼の研究書、遠野物語や今昔物語集、宇治拾遺物語などを読み込んでいるのだと鼻息荒く話し始めた。
「このファンタジー好きの俺が、本物の獣人に会えているだなんて、リアルファンタジー!」
だんだんアヤしい日本語になっているが、靖友くんはそのまま話し続ける。
「藤堂、『うしファン』知ってるだろ?
あれの黒豹と赤熊とレアキャラのユニコーンの獣人が俺、お気に入りなの」
「うしファン」とは「失われた最後のファンタジー・スラーク物語」という人気ゲームで魅力的なビジュアルの獣人が出てくる。
靖友くんはゲームも好きなのは知っていたけど、こんなにファンタジー好きだとはしらなかった。
「俺、もう大興奮だよ!」
本当に嬉しそうに靖友くんは前の2人を見つめる。
「それにさ」
靖友くんが続けた。
「ティグさんとレネさんが獣人だろうが人間だろうが、実のところ関係ないんだよ。
仕事している2人、めっちゃカッコいいよな」
ああ……
「靖友くん、大好きだーーー!」
僕は思わず靖友くんに抱きついた。
2人がライオンとトラであることを考えないようにはしたけれど、やっぱりひっかかるときもあって、でも誰にも話せなくて。
靖友くんにも同じように見えていた安心感と、だからといって騒ぎ立てるわけでもなくそれを受け留めている靖友くんに親近感が持てたことが嬉しくて。
「おう、俺も藤堂のこと好きだよ。
なになに、俺たち相思相愛ってヤツ?」
靖友くんもハグしてくれた。
と、そこに「なーにしてるの?俺も混ぜてー!」と振り返ったティグさんが僕たちに抱きついてきた。
ぐへ~!
つぶれるうううう!
「あー、ズルいぞ、3人でー!」とレネも抱きついてきた。
ぎょえ、くるしー!!!
200越えのレネとティグ、180越えの靖友くんの中にいたら、170越えはしている僕はとても小さく思えてしまうよ。
それにレネとティグがふざけてぎゅうぎゅう押してくる。
いい大人2人と高校生2人がぎゅうぎゅうしているのって、冷静に考えるとすごくばかばかしくなって、なんだか愉快になってきちゃって4人でげらげら笑い出しちゃった。
そしてその時、僕は見た。
どさくさに紛れて僕たちに抱きついているように見えて、実はティグは靖友くんに抱きつき柔らかな顔で笑っているのを。
こんな顔、見たことがない。
それはとても。
心から嬉しいことだった。
おわり
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あとがき
https://etocoria.blogspot.jp/2017/12/my-t.html
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