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第28話
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俺がこの屋敷に留まることを決めたことを告げた次の週末、まだ早いが花見をすることになった。
なりあきさまの休みと天気を考えると、この日しかないらしい。
川崎さんは年末のおせち作りをするのかというくらい、大々的に下準備をし始めた。
大きな塗りのお重。
揃いの食器。
今年は屋敷の人みんなで盛大に行うらしい。
藤代さんとの買い出しも大量になっていった。
伯爵様のお花見は初めてなのでそんなものかと思い、中川さんや川崎さんの指示通りに買い物をし、小林さんの指示通りに庭を掃除をした。
当日の朝も忙しいだろうと思いいつもより早く起きたが、厨房には入らせてもらえなかった。
藤代さんからは「厨房は川崎さんとシノさん、ハナさんで回すそうです。キヨノさんはこちらをお願いします」と、いつもはシノさんがする「屋敷の中の装飾や調度品の掃除」を任された。
ふわふわの羽根のついたはたきをそっとかけ、やわらかい布で拭いていく。
壊したら最後。
と思うと、胃が痛くなりそうだ。
急がなくてもいい、と言われ、とにかく気を遣いながらできるところまでやった。
朝は小さなむすびと汁だった。
昼を豪勢にするらしい。
厨房からはうまそうな匂いがしている。
なりあきさまは小林さんと庭で作業をしている。
田村様のお屋敷では、田村様ご家族とご親戚やお客様がわいわいと花見の宴を設けられた。
使用人たちもご馳走のおこぼれをいただいたが、食事の世話は切れることがなかったのでゆっくりする暇はなかった。
それにうまいものは年長者が先に食ってしまい、俺たちにはほとんど残っていないこともざらだった。
おおかた掃除が終わる頃、中川さんに呼ばれた。
「さあ、もうすぐお花見は始まります。
着替えをしましょう」
俺は驚いた。
が、伯爵様のお花見では身なりも整えるものなのかもしれない。
黙ってついていくと和室についた。
「今、藤代は忙しいですから私がお手伝いします」と畳紙から着物を取り出した。
きらきらした柔らかそうな生地だ。
紺色に見えるが光の加減で濃い緑色に変わる。
真っ白い足袋を履くと、中川さんがそれを俺に着つけていった。
帯はなにかよくわからないが紺色っぽい縞で、黄色っぽい白と臙脂が入っている。
それから着物と揃いの羽織を着せられた。
「旦那様の子どもの時分のものですよ。
キヨノさん、少し背が伸びたかもしれませんね」
「そうですか」
「はい。
そして、よくお似合いです」
「おかしくないですか」
「おかしくないですよ。
お花見を楽しみましょう、キヨノさん。
今年のお花見をご一緒できて、嬉しいです」
「お…わたしもです。
ありがとうございます、中川さん」
「いいえ。
では、参りましょうか」
中川さんがにっこり笑い、俺を先導して歩いていった。
俺は静かについていった。
用意されていた草履を履き、庭に回った。
あの桜は今、五分咲き。
初めての花が咲いたときはお屋敷のみんなと喜んだ。
桜の下には赤いふかふかした布が敷いてあり、周りは紅白の幕が張ってあった。
上座には和装のなりあきさまが座っていらっしゃる。
他のみなさんはすでに勢揃いしている。
俺が一番遅かったのか、と少し焦った。
が、そんなことが言えなくらい、静かで緊張した様子だった。
俺は中川さんに言われるがまま、なりあきさまの隣りに座ることになった。
そんなところに座れない、と断ろうとしたが、中川さんの眼力に圧倒され、俺は一言も口を利くことができなかった。
よく見ると、黒須様と白洲様もいらっしゃる。
「キヨノさん」
隣りのなりあきさまが太い、大きな声で俺の名前を呼んだ。
「はい」
「これから略式ではあるけれど、祝言を挙げたいと思います。
よろしいですか」
祝言!
よくわからなくてもいい、とおっしゃっていたけれど、夫婦になる儀式をしたい、となりあきさまは言っているのだ。
これで、俺は逃げられなくなる。
「はい」
声は震えていなかっただろうか。
俺はきちんと返事ができただろうか。
遊園地で感じた視線に耐えられるように。
ずっとなりあきさまとこの屋敷の人たちと過ごせるように。
これはけじめだ。
ちらりと見た、俺たちを囲む人たちの顔は喜びに溢れている。
厨房に入れなかった理由も、上等の着物に着替えた理由も、これでわかった。
「キヨノさん、形だけだと思ったから私は最初、反対したのです。
ですが、中川や他の者からも強く言われたのと、やっぱり貴方を私の伴侶である、とお天道様にもお見せしたくなりました」
「はい、けじめだと思います」
「よかった。
では、始めましょう」
シノさんとハナさんも今日は和装で、大中小の朱色の盃を重ねた三方と同じ朱色の屠蘇器の乗った三方を運んできた。
まず小さな盃からなりあきさまが注がれたお酒を三回で飲む。
そして空になった盃を渡され、俺も真似をする。
中くらいの。
一番大きいの。
盃が大きくなる。
量はそんなにないはずだが、初めてのお酒に俺はすぐに身体が熱くなっていった。
「キヨノさん、千の山も万の海も一緒に越えていきましょう」
「はい」
ちらりと見たなりあきさまの目は熱かった。
そのせいか俺はますます熱くなった。
シノさんとハナさんが下がると、今度は紋付き袴姿の藤代さんが現れた。
「私たちを代表いたしまして、藤代が『高砂』を披露させていただきます」
中川さんがそう言い、藤代さんが手をついて頭を下げた。
なりあきさまがそっと「時間も場所も隔てていても変わらない夫婦の愛情を表した歌ですよ」と教えてくれた。
藤代さんは素敵な声で謡ってくれた。
こんなに真面目な藤代さんを見たことがなかった。
そういえば、一番近くで俺を支えていてくれた人だな、と思うと有難くて涙が浮かんでしまった。
なりあきさまが手ぬぐいでそっと涙を拭いてくれた。
歌が終わると俺は深々と頭を下げた。
そのあとは、なりあきさまの掛け声で花見が始まった。
「堅苦しかったでしょう。
さあ、ここからは気の置けない我が家の花見ですよ。
楽しく過ごしましょう。
川崎が腕によりをかけて料理を準備してくれましたよ」
並べられるお重は大層豪勢だった。
ちらし寿司にお赤飯もあった。
そして紅白のなますも。
なりあきさまが小皿にあれやこれやご馳走を取り分けてくれる。
「お……わたしは自分でできます」
「私にさせてください。
どれだけ嬉しいか、貴方にわかりますか。
なにかしていないと、どうにかなってしまいそうだ」
なりあきさまは興奮したお声で話していた。
そうこうしていると、「おめでとうございます」とみなさんが近づいてきてくださった。
「ありがとうございます。ありがとうございます」と俺はお礼を言った。
中川さんは泣き始めるし、川崎さんは「次は洋食でお祝いの料理を出します」と言うし、藤代さんは「急に『高砂』を謡えって中川さんから言われて、小林さんに特訓を受けていたんですよ」とお赤飯を食べながら話すし、シノさんとハナさんも泣き出すし、小林さんと佐伯さんは相当飲んで真っ赤な顔をしているし、わやくちゃだったが、とにかく祝ってくれている気持ちが嬉しくて、俺も泣いていた。
隣りでは黒須様と白洲様がなりあきさまに次から次へとお酒を飲ませていた。
今日は陽気がよく、桜は次々と開いていって、あっという間に八分咲きまでいってしまった。
「桜もお二人のことをお祝いしています」と、小林さんが言うので、くすぐったくなった。
黒須様は「櫻子さんから預かってきた」と、白洲様は「最近気に入っている店のものだ」と、桜餅を人数分、持ってきてくださってた。
黒須様のは桜色の薄い皮で餡子をくるんだ長命寺、白洲様のは桜色のつぶつぶしたものに餡子を包んだ道明寺、という違う種類の桜餅だった。
「櫻子さんがね、使用人のために塩大福を求めるキヨノさんに感動した、と言ってね」
「驚いているね、キヨノさん。
あまり使用人のために菓子を買って帰ることはないんだよ。
まぁ、三条院のところは人も少ないしね」
「『周りの者にも気を配るように』と教えられているのに、全然周りを見ていなかったと反省した、と櫻子さんは言っていたよ。
また会ってあげてください。
とても会いたがっていました」
「キヨノさんはキヨノさんの思う通りにやってください。
私はキヨノさんがキヨノさんでなくなるほうが嫌です。
さ、桜餅をいただきましょう」
なりあきさまが二つの桜餅が載った小皿を手渡してくれた。
もうお腹いっぱいだと思っていたのに、桜餅をぺろりと平らげてしまった。
お酒のせいか、陽気のせいか、俺はとろんとなってきてしまった。
気がつくとなりあきさまに抱きかかえられ、着物を脱がされ、寝巻きを着せられ、ベッドに寝かされていた。
「最近、あまり眠れていないでしょう。
しっかり寝てください。
起きても貴方は私の伴侶です」
なりあきさまは、おでこにキスをしたようだった。
俺は嬉しくなって、そのまま眠ってしまった。
なりあきさまの休みと天気を考えると、この日しかないらしい。
川崎さんは年末のおせち作りをするのかというくらい、大々的に下準備をし始めた。
大きな塗りのお重。
揃いの食器。
今年は屋敷の人みんなで盛大に行うらしい。
藤代さんとの買い出しも大量になっていった。
伯爵様のお花見は初めてなのでそんなものかと思い、中川さんや川崎さんの指示通りに買い物をし、小林さんの指示通りに庭を掃除をした。
当日の朝も忙しいだろうと思いいつもより早く起きたが、厨房には入らせてもらえなかった。
藤代さんからは「厨房は川崎さんとシノさん、ハナさんで回すそうです。キヨノさんはこちらをお願いします」と、いつもはシノさんがする「屋敷の中の装飾や調度品の掃除」を任された。
ふわふわの羽根のついたはたきをそっとかけ、やわらかい布で拭いていく。
壊したら最後。
と思うと、胃が痛くなりそうだ。
急がなくてもいい、と言われ、とにかく気を遣いながらできるところまでやった。
朝は小さなむすびと汁だった。
昼を豪勢にするらしい。
厨房からはうまそうな匂いがしている。
なりあきさまは小林さんと庭で作業をしている。
田村様のお屋敷では、田村様ご家族とご親戚やお客様がわいわいと花見の宴を設けられた。
使用人たちもご馳走のおこぼれをいただいたが、食事の世話は切れることがなかったのでゆっくりする暇はなかった。
それにうまいものは年長者が先に食ってしまい、俺たちにはほとんど残っていないこともざらだった。
おおかた掃除が終わる頃、中川さんに呼ばれた。
「さあ、もうすぐお花見は始まります。
着替えをしましょう」
俺は驚いた。
が、伯爵様のお花見では身なりも整えるものなのかもしれない。
黙ってついていくと和室についた。
「今、藤代は忙しいですから私がお手伝いします」と畳紙から着物を取り出した。
きらきらした柔らかそうな生地だ。
紺色に見えるが光の加減で濃い緑色に変わる。
真っ白い足袋を履くと、中川さんがそれを俺に着つけていった。
帯はなにかよくわからないが紺色っぽい縞で、黄色っぽい白と臙脂が入っている。
それから着物と揃いの羽織を着せられた。
「旦那様の子どもの時分のものですよ。
キヨノさん、少し背が伸びたかもしれませんね」
「そうですか」
「はい。
そして、よくお似合いです」
「おかしくないですか」
「おかしくないですよ。
お花見を楽しみましょう、キヨノさん。
今年のお花見をご一緒できて、嬉しいです」
「お…わたしもです。
ありがとうございます、中川さん」
「いいえ。
では、参りましょうか」
中川さんがにっこり笑い、俺を先導して歩いていった。
俺は静かについていった。
用意されていた草履を履き、庭に回った。
あの桜は今、五分咲き。
初めての花が咲いたときはお屋敷のみんなと喜んだ。
桜の下には赤いふかふかした布が敷いてあり、周りは紅白の幕が張ってあった。
上座には和装のなりあきさまが座っていらっしゃる。
他のみなさんはすでに勢揃いしている。
俺が一番遅かったのか、と少し焦った。
が、そんなことが言えなくらい、静かで緊張した様子だった。
俺は中川さんに言われるがまま、なりあきさまの隣りに座ることになった。
そんなところに座れない、と断ろうとしたが、中川さんの眼力に圧倒され、俺は一言も口を利くことができなかった。
よく見ると、黒須様と白洲様もいらっしゃる。
「キヨノさん」
隣りのなりあきさまが太い、大きな声で俺の名前を呼んだ。
「はい」
「これから略式ではあるけれど、祝言を挙げたいと思います。
よろしいですか」
祝言!
よくわからなくてもいい、とおっしゃっていたけれど、夫婦になる儀式をしたい、となりあきさまは言っているのだ。
これで、俺は逃げられなくなる。
「はい」
声は震えていなかっただろうか。
俺はきちんと返事ができただろうか。
遊園地で感じた視線に耐えられるように。
ずっとなりあきさまとこの屋敷の人たちと過ごせるように。
これはけじめだ。
ちらりと見た、俺たちを囲む人たちの顔は喜びに溢れている。
厨房に入れなかった理由も、上等の着物に着替えた理由も、これでわかった。
「キヨノさん、形だけだと思ったから私は最初、反対したのです。
ですが、中川や他の者からも強く言われたのと、やっぱり貴方を私の伴侶である、とお天道様にもお見せしたくなりました」
「はい、けじめだと思います」
「よかった。
では、始めましょう」
シノさんとハナさんも今日は和装で、大中小の朱色の盃を重ねた三方と同じ朱色の屠蘇器の乗った三方を運んできた。
まず小さな盃からなりあきさまが注がれたお酒を三回で飲む。
そして空になった盃を渡され、俺も真似をする。
中くらいの。
一番大きいの。
盃が大きくなる。
量はそんなにないはずだが、初めてのお酒に俺はすぐに身体が熱くなっていった。
「キヨノさん、千の山も万の海も一緒に越えていきましょう」
「はい」
ちらりと見たなりあきさまの目は熱かった。
そのせいか俺はますます熱くなった。
シノさんとハナさんが下がると、今度は紋付き袴姿の藤代さんが現れた。
「私たちを代表いたしまして、藤代が『高砂』を披露させていただきます」
中川さんがそう言い、藤代さんが手をついて頭を下げた。
なりあきさまがそっと「時間も場所も隔てていても変わらない夫婦の愛情を表した歌ですよ」と教えてくれた。
藤代さんは素敵な声で謡ってくれた。
こんなに真面目な藤代さんを見たことがなかった。
そういえば、一番近くで俺を支えていてくれた人だな、と思うと有難くて涙が浮かんでしまった。
なりあきさまが手ぬぐいでそっと涙を拭いてくれた。
歌が終わると俺は深々と頭を下げた。
そのあとは、なりあきさまの掛け声で花見が始まった。
「堅苦しかったでしょう。
さあ、ここからは気の置けない我が家の花見ですよ。
楽しく過ごしましょう。
川崎が腕によりをかけて料理を準備してくれましたよ」
並べられるお重は大層豪勢だった。
ちらし寿司にお赤飯もあった。
そして紅白のなますも。
なりあきさまが小皿にあれやこれやご馳走を取り分けてくれる。
「お……わたしは自分でできます」
「私にさせてください。
どれだけ嬉しいか、貴方にわかりますか。
なにかしていないと、どうにかなってしまいそうだ」
なりあきさまは興奮したお声で話していた。
そうこうしていると、「おめでとうございます」とみなさんが近づいてきてくださった。
「ありがとうございます。ありがとうございます」と俺はお礼を言った。
中川さんは泣き始めるし、川崎さんは「次は洋食でお祝いの料理を出します」と言うし、藤代さんは「急に『高砂』を謡えって中川さんから言われて、小林さんに特訓を受けていたんですよ」とお赤飯を食べながら話すし、シノさんとハナさんも泣き出すし、小林さんと佐伯さんは相当飲んで真っ赤な顔をしているし、わやくちゃだったが、とにかく祝ってくれている気持ちが嬉しくて、俺も泣いていた。
隣りでは黒須様と白洲様がなりあきさまに次から次へとお酒を飲ませていた。
今日は陽気がよく、桜は次々と開いていって、あっという間に八分咲きまでいってしまった。
「桜もお二人のことをお祝いしています」と、小林さんが言うので、くすぐったくなった。
黒須様は「櫻子さんから預かってきた」と、白洲様は「最近気に入っている店のものだ」と、桜餅を人数分、持ってきてくださってた。
黒須様のは桜色の薄い皮で餡子をくるんだ長命寺、白洲様のは桜色のつぶつぶしたものに餡子を包んだ道明寺、という違う種類の桜餅だった。
「櫻子さんがね、使用人のために塩大福を求めるキヨノさんに感動した、と言ってね」
「驚いているね、キヨノさん。
あまり使用人のために菓子を買って帰ることはないんだよ。
まぁ、三条院のところは人も少ないしね」
「『周りの者にも気を配るように』と教えられているのに、全然周りを見ていなかったと反省した、と櫻子さんは言っていたよ。
また会ってあげてください。
とても会いたがっていました」
「キヨノさんはキヨノさんの思う通りにやってください。
私はキヨノさんがキヨノさんでなくなるほうが嫌です。
さ、桜餅をいただきましょう」
なりあきさまが二つの桜餅が載った小皿を手渡してくれた。
もうお腹いっぱいだと思っていたのに、桜餅をぺろりと平らげてしまった。
お酒のせいか、陽気のせいか、俺はとろんとなってきてしまった。
気がつくとなりあきさまに抱きかかえられ、着物を脱がされ、寝巻きを着せられ、ベッドに寝かされていた。
「最近、あまり眠れていないでしょう。
しっかり寝てください。
起きても貴方は私の伴侶です」
なりあきさまは、おでこにキスをしたようだった。
俺は嬉しくなって、そのまま眠ってしまった。
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