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1:アイゼン王国編(チュートリアル)
騎士として(ジークムンド)
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「戻ってきたということは、わたくしに仕える気持ちがあるということでいいのかしら。やり甲斐と俸給は保障するわよ」
ハイデマリー様にそう問われ、俺は彼女の前に膝をついた。
この方こそ、俺が生涯賭してお仕えするべき主だと、心にずんと落ちたのだ。
一目惚れと揶揄うならそれでもいい。
上手く表現できないが恋ではないことだけは確かだ。たしかにハイデマリー様は美しい女性だが、そんな浮ついた感情ではない。
「日が長いのだけは北辺のいいところね」
ハイデマリー様は言って、そばに積み上がっている荷箱に視線をやった。
こんなもの、あったか?
疑問に思ったが、ハイデマリー様は優美な笑みのままだ。
この流刑の旅までほとんど話をしたこともなかった方だが、いつも落ち着いていて、神秘的な雰囲気をお持ちなことは理解している。
「物資箱のうち食糧の印のあるものは小屋に運び入れて。他のものはわたくしが中身を確認します。今後のことは食事のときに詰めましょう」
「承知いたしました」
やるべきことがらを示された以上、動くしかない。
そもそも考えを中止して体を動かすことに慣れているのが騎士だ。俺はすぐに命令に従った。
荷物を片付けた次の日の夜。
干からびた死体と同居する気にはどうしてもならず、ハイデマリー様は馬を外した馬車で、俺はその側で野営して夜を過ごしていた。
北辺の夏の夜は白い。日が沈んでも空が完全に暗くなることはなく、薄暗い状態が続く。その白い夜も夜半にかかったと思われる頃、ハイデマリー様が馬車の扉を開けた。
「いかがなさいましたか」
「『石の家防衛戦』……敵襲よ。相手はならず者が六人。武装はしているけれど魔法軸は持ってない」
ハイデマリー様がはっきり言った。
馬車の中にいた貴婦人に何故そんなことがわかるのか。
きっと俺は不審を隠せなかったに違いない。
ハイデマリー様が笑んだ。
「賊は生け取りにしたいわ。わたくしの指示があるまで屋根の上で待機していて。気づかれないように」
騎士たる者、命じられたからにはその通りに動く。不承不承ながら俺は焚き火を踏み消して、速やかに石の小屋の屋根に登った。
いつものドレスの上に俺のマントを羽織ったハイデマリー様は小屋の戸口を背にして立った。
屋根の上に上がれば俺にも見えた。
白い夜、しかも凍てつく土地しかない辺境地だ。隠れようもなく忍び寄ってくる影は確かに六つあった。影たちは小屋の前のハイデマリー様に気付いたようで、勢いよく走ってきた。
「お前を殺したらご褒美がもらえるんだよ」
「死ぬ前に楽しませてやっからさ!」
頭目はいないようで、まずハイデマリー様に近づいた男がふたり、競って下品に笑った。驚いたことに顔も隠していない。その間に他の男たちもたどり着いてきた。確かに六人。汚いならず者どもだった。
「わたくしはこのエンダベルトの領主ハイデマリー・アデーレ。領主の権限に基づき、お前たちを徴発します」
ハイデマリー様は言い放った。堂々として響いた声には威厳があって、男たちは明らかに怯んだ。
細くて白い指先が上を指した。合図だ。
俺は男たちの真上に飛び降りた。
武装というほどでもないにしろ六人を一度に相手にしながらハイデマリー様を守るのは骨が折れる。だが、不意打ちなら俺の圧勝だ。
さっさとならず者たちの意識を刈り取って縛り上げた俺はハイデマリー様の足元に跪いた。
敵襲に気づいた慧眼。ならず者どもへの一喝。怯えもなく悠然とした態度。その姿の美しさ。
俺は得難き主を得たのだと、感動していた。
「ご苦労様。あなたに次の任務よ、ジークムンド卿」
艶然としたハイデマリー様は俺を労い、そして、
「できるだけ早く、この男たちを兵士に仕立て上げて。次は騎士がくるわよ」
と言った。
ハイデマリー様にそう問われ、俺は彼女の前に膝をついた。
この方こそ、俺が生涯賭してお仕えするべき主だと、心にずんと落ちたのだ。
一目惚れと揶揄うならそれでもいい。
上手く表現できないが恋ではないことだけは確かだ。たしかにハイデマリー様は美しい女性だが、そんな浮ついた感情ではない。
「日が長いのだけは北辺のいいところね」
ハイデマリー様は言って、そばに積み上がっている荷箱に視線をやった。
こんなもの、あったか?
疑問に思ったが、ハイデマリー様は優美な笑みのままだ。
この流刑の旅までほとんど話をしたこともなかった方だが、いつも落ち着いていて、神秘的な雰囲気をお持ちなことは理解している。
「物資箱のうち食糧の印のあるものは小屋に運び入れて。他のものはわたくしが中身を確認します。今後のことは食事のときに詰めましょう」
「承知いたしました」
やるべきことがらを示された以上、動くしかない。
そもそも考えを中止して体を動かすことに慣れているのが騎士だ。俺はすぐに命令に従った。
荷物を片付けた次の日の夜。
干からびた死体と同居する気にはどうしてもならず、ハイデマリー様は馬を外した馬車で、俺はその側で野営して夜を過ごしていた。
北辺の夏の夜は白い。日が沈んでも空が完全に暗くなることはなく、薄暗い状態が続く。その白い夜も夜半にかかったと思われる頃、ハイデマリー様が馬車の扉を開けた。
「いかがなさいましたか」
「『石の家防衛戦』……敵襲よ。相手はならず者が六人。武装はしているけれど魔法軸は持ってない」
ハイデマリー様がはっきり言った。
馬車の中にいた貴婦人に何故そんなことがわかるのか。
きっと俺は不審を隠せなかったに違いない。
ハイデマリー様が笑んだ。
「賊は生け取りにしたいわ。わたくしの指示があるまで屋根の上で待機していて。気づかれないように」
騎士たる者、命じられたからにはその通りに動く。不承不承ながら俺は焚き火を踏み消して、速やかに石の小屋の屋根に登った。
いつものドレスの上に俺のマントを羽織ったハイデマリー様は小屋の戸口を背にして立った。
屋根の上に上がれば俺にも見えた。
白い夜、しかも凍てつく土地しかない辺境地だ。隠れようもなく忍び寄ってくる影は確かに六つあった。影たちは小屋の前のハイデマリー様に気付いたようで、勢いよく走ってきた。
「お前を殺したらご褒美がもらえるんだよ」
「死ぬ前に楽しませてやっからさ!」
頭目はいないようで、まずハイデマリー様に近づいた男がふたり、競って下品に笑った。驚いたことに顔も隠していない。その間に他の男たちもたどり着いてきた。確かに六人。汚いならず者どもだった。
「わたくしはこのエンダベルトの領主ハイデマリー・アデーレ。領主の権限に基づき、お前たちを徴発します」
ハイデマリー様は言い放った。堂々として響いた声には威厳があって、男たちは明らかに怯んだ。
細くて白い指先が上を指した。合図だ。
俺は男たちの真上に飛び降りた。
武装というほどでもないにしろ六人を一度に相手にしながらハイデマリー様を守るのは骨が折れる。だが、不意打ちなら俺の圧勝だ。
さっさとならず者たちの意識を刈り取って縛り上げた俺はハイデマリー様の足元に跪いた。
敵襲に気づいた慧眼。ならず者どもへの一喝。怯えもなく悠然とした態度。その姿の美しさ。
俺は得難き主を得たのだと、感動していた。
「ご苦労様。あなたに次の任務よ、ジークムンド卿」
艶然としたハイデマリー様は俺を労い、そして、
「できるだけ早く、この男たちを兵士に仕立て上げて。次は騎士がくるわよ」
と言った。
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