異世界は召喚魔法が主流です

ユーキ

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第十話

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「プゴオオオオオオ!!」
召喚されたワイルドボアが真っ直ぐ突進をしてくる。その横を追いかけるようにブラックウルフが走っている。しかし、毎日のようにモンスターと戦い、地球でも毎日修行している俺にとってはさほどの恐怖ではない。

「燃え盛る火炎よ、敵を焼き尽くせ!ファイヤーウォール!!」
突進してくるモンスターと同時にイサベルが火魔法を放ってくる。横の二人は召喚魔法で魔力が切れたのか、かなり顔色が悪い。こう考えるとイサベルはまぁまぁ魔力が高いのだろう。

「こ、これで終わりね。わたくしに歯向かうから、こうなるのよ!」
この程度の攻撃など、当たっても痛くはないし、すぐに回復することもできる。だがそれだけではあいつが絶望しないだろうから、もっと人間離れした攻撃を見せてやろう。

「おらぁ!」
「な、なに!?そん、な、馬鹿な……」
俺はモンスターと同時に魔法を殴り付けた。普通なら殴った拳の方が怪我する。だが俺は、拳に魔法破壊の付与魔法をかけてぶん殴ったのだ。こんなことをできるやつなんていないし、考えるやつもいない。しかも一瞬だ。

「これで実力差がわかっただろう?お前ごときじゃ相手にならないんだよ。二度とつっかかってくるな!」
俺はより絶望するように、屈辱で悶えるように上から目線でドスのきいた声で脅す。

「わたくしが、そんな……これは何かの間違いよ!きっとそうだわ!あなたはどんな卑怯な手を使ったのか、白状なさい!」
「ふざけているのか?俺がそんなことするはずがないだろう!!無詠唱も同時発動も使えねぇごみなんかには興味ねぇんだよ。さっさとうせろ!」
俺は普段使わない声と口調で脅す。俺はこういう自分勝手な奴は大嫌いだ。

「大丈夫か?怪我は無いか?」
俺はごみのことは無視をして、倒れている美少女に話しかける。
「はい、大丈夫です。一応回復魔法も使えますので」
これは珍しいな。回復魔法や光魔法を使える奴は聖神国ホーリストと呼ばれるところから勧誘が来て、半強制的に連れていかれるのだ。でも、田舎だったりと見つからないような理由があれば別だ。

「どうもありがとうございます。私はティナと言います」
丁寧にお辞儀までしてお礼をしてくれる。ただ俺は困っている女の子を助けただけなのに。

「俺はアルト・エルドラントだ。俺は貴族だが、普通にため口でしゃべってもらって構わない」
「貴族様に敬語を使わないなんてことは無礼にも程があります。」
「そ、そうか。そろそろ試験が始まるしそろそろ行くか」
「すみません。今友達を待っていますので」
俺はティナと学園のなかに行こうと思ったのに、友達がいたらしい。ちぇ、ちょっと悔しいな。

「ティナちゃんお待たせ。ごめんな、朝寝坊しちゃって!」
そう言いながら一人の女の子がこちらに走ってくる。「ううん、大丈夫だよ」
どうやら今来た女の子がティナの友達のようだ。すみれ色のショートヘアーで碧の眼。顔は少し男らしさがあるものの美人だ。スタイルは良く、胸はティナと違ってかなり大きい。メロンぐらいのサイズはあると思う。何をどうしたらあぁなるのやら。

「そうか、良かった。で、となりのこいつは誰?」
オレの方を指差しながら少し怪訝そうな顔をして話す。
「この人はさっき私の事を助けてくれたの」
「ふぅん。あたしはシャロンだ。一応よろしく」
「俺はアルト。アルト・エルドラントだ。よろしくな」
俺はそう言い握手を求めるが、シャロンの手が遠ざかってしまう。

「ごめんなさい、アルトさん。シャロンは男の人があまり好きじゃないんです」
ティナはこっそりと小さな声で教えてくれる。きっと男関係の何かトラブルがあったんだろう。俺は関係ないからどうでもいいけど。

「じゃあ、もう試験が始まるし試験会場に行こう」
「はい」
「ん、わかったよ」
低く鐘の音が鳴り響く。これが校門の開く合図だ。どの受験生も真剣な顔で足早に試験会場へと向かっていく。

「ちなみに何クラス狙ってんの?」
「Sクラスです」
「あたいもSクラスだ」
おぉ、ラッキー。同じクラスになれるかもしれないじゃん。

「てことは、無詠唱も同時発動もできるの?」
「当たり前じゃない!」
これは期待度がぐぐーんとアップしたな。もうほとんど同じクラスになったといっても過言じゃない。

「俺もSクラスに入る予定だから。よろしくねー!」
「良かった、うれしいです」
「ふぅーん・・・・・・そうなんだ」
ティナは喜んでくれたけど、シャロンは何か嫌そうだ。まぁそんなことは無視だな。

それから学園の中に入り、真っ白くシンプルだが豪華そうな廊下を通り抜け試験会場に到着する。

ここが筆記試験の会場だ。筆記試験はさほど重要な試験ではないが、悪ければ落ちてしまう。俺はSクラスに合格できる30点を目指している。召喚したモンスターに戦わせて、後から無詠唱の同時発動魔法。確かに強力だが、さすがに30点は無いだろ。30点は。

「じゃあな。試験、頑張ろうな」
「余裕で合格できるからね」
「全力を尽くします」
シャロンは少し嫌味のように言うが、オレの方が圧倒的に実力が上だし、そこまで腹はたたない。だけどティナはいい子だな。礼儀正しいし。俺も一応礼儀を教え込まれたけど、両親以外には適当な感じの態度だからな。嫌いなやつには残酷にするけど。

俺は自分の受験票の番号を確認し、その番号の席に座る。机は汚れてもいなく、清潔な感じがしている。

「では、これより問題用紙を配る!!開始の合図が出るまで裏向きにして字を書いてはいけない!試験が始まれば名前を書き、50分間、問題を解いてくれ!時間が経てば用紙を机に置いたままにして次の会場に向かってくれ!これで説明を終わる!」
大柄な筋肉質の体育教師のような男が大声で説明する。その説明が終わるとプリントが配られる。5分ほどして全員にプリントが行き渡ったようだ。

「では、筆記試験、開始!!」
その合図が出た瞬間、バサッ!とプリントをめくる音が至るところからして、次の瞬間にはカリカリとペンを走らせる音が聞こえる。高校受験をしたことがあるから、実質2回目の試験。それなりに頑張ろう。

まずは名前を書いてと。

第1問
この世界で最も素晴らしき魔法を答えよ。

ほう、かなり簡単な問題だな。答えは召喚魔法。ちなみに問題は全部で50問、1問2点だ。

その後もさくさくと進んでいく。逆に問題が簡単すぎてわからないという方が難しい感じだ。俺は適度に間違えて目立たない点数を狙う。今日でかなり目立っちゃったけど、できるだけ目立たないようにして、のんびりとしていきたい。

最後の問題を解いて終わりと。後は暇だからナビゲーターと会話したり、魔法のアイデアを考えたり、ボンヤリとしたりして時間を潰す。

「時間終了だ!次の会場に向かってくれ!」
20分ほどすると、先程の大柄な男が大声で叫ぶ。次は近接格闘術試験という、筆記試験より重要ではないが、評価が高いと、合格しやすくなる試験だ。

早速次の試験をやるとするか。目立たないように、合格できるように。

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