高校生なのに娘ができちゃった!?

まったりさん

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黒歴史が暴露されちゃった!?

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「……で、どうして彼方さんがこんなところにいるの? 拉致?」
「本人目の前でよくそんな失礼なことが言えるなお前犯すぞ」
「その発言自体もうアウトだと思うのですが……」
 俺のボケにすかさず突っ込みを入れてくる彼方。うん、ボケだよ? 決して本意から出てるわけじゃないから勘違いしないでもらいたい。
「彼方はな、あー、何だ。ここに住むと言い張っているんだ。住む家もないらしいから俺はここに泊めてやることにした、以上! この話終わり!」
「終わりなわけないでしょ!?」
 強引に話を終了させたかったのだが、遠江が声を荒げてきたため失敗に終わった。
「何で!? どういうこと!? そもそも何で家がないの!?」
「……家が、ない理由ですか……ぐすっ。うぅ……聞きたいんですか……?」
「う……っ」
 目元をごしごしと擦りながら上目遣いで聞いてくる彼方に遠江はたじろぐ。
「……なら、話しましょう。あれは、十年前」
「ごめん! 言わなくていい! トラウマを思い出させちゃってごめん!」
「あ、はい。ぐじゅ……ありがとござます」
「だったらうちにくればいいのに。こんな奴のとこにいるところよりは安全よ?」
「身元がわからない奴をよく引き取れるな、お前」
「生徒が困ってるならそれを助けるのが生徒会長という役職よ」
 ふふん、と得意気に胸を反らす。同時にたゆんっ、たゆんっと豊満過ぎる胸が揺れに揺れ、思わず視線を逸らした。
「何目を逸らしてんのよ」
「聞かない方が、いいこともあるんだ」
 言ったら遠江は顔を真っ赤にして俺を殴るだろう。間違いない。こいつは都合が悪ければ即座にパンチを繰り出す暴君なのだから。
「ああ、大丈夫です、ママ。私はここでいいです」
「んー、でも駄目ね。生徒会長として男女の宿泊は流石に認められないわ。彼方さんが何で柚季に固執しているのかどうかは知らないけど、駄目なものは駄目。そもそも何で柚季は断らなかったのよ。普通アンタならそうするでしょ」
「いや、それにはマリアナ海溝並の深い事情があってだな……」
 俺が必死に言い訳をしようとすると、彼方が先に言葉を紡いだ。
「……聞きたいのですが、ママは私がここに住むというのは反対、ということですか?」
「当たり前よ。不純すぎるわ、そんなの」
 正論を言う遠江。
「へぇー、そうですか」
 彼方がそう言葉を零すと同時に、俺は先ほどにも感じた背筋が凍るような感覚を感じ取った。
 そう、この声色は俺がこいつの宿泊を断った際に聞いた、冷えに冷え切った声。
「まさか、お前……こいつの過去も」
「ええ、無論です。ママからは、酒を飲ましてべろんべろんになった時に聞きました。大層酔ってたんでしょうねぇ、覚え切れないくらいに聞かされましたよ」
「え? 何言ってるのよ。私、お酒なんて一口も飲んだことないわよ?」
「はい、承知しております。ママはまだ高校生です。飲めるはずないじゃないですか」
「よね、……というかそろそろそのママっていうのやめて欲しいんだけど」
 これから何が起きるのか全然わかっていない遠江は頭を抱えて唸っている。
「さて、それでは」
 こほんと、可愛らしい咳払いをして、彼方は語り始めた。
「そう、それは小学校三年生の夏の日でした。二人の姉妹はとある男の子を困らせるためある行動を取りました。それはわざと迷子になってその男の子に探しにきてもらうというものでした。姉妹はとことことわけのわからない道を歩き続け、適当な場所で男の子に連絡しようとしました」
 ですが、と一言言葉を置いてから彼方は続けた。
「しかし、姉妹はその時気づきました。携帯を持ってきていなかったのです。絶望的な状況でした、周りは知らない土地、知っている大人もいません。姉妹はわんわんと泣き始めました。しかし、泣き出したところで時間は非情にも過ぎていきます。やがて、日も傾き、帰るのは絶望的になった時、その男の子がやってきました。男の子は姉妹を説教した後、暗い夜道を歩いて……一緒に迷子になりましたとさ。お終いお終い」
「俺のワースト七の黒歴史がぁぁぁぁああ!?!?」
「ちょっと待って! 何で貴方が私の黒歴史を知ってるの!? あれは私たちだけの秘密――って、まさか柚季アンタ!」
「違う! マジで! これマジだから!」
「まだまだありますよ? ママ。聞きたいですか? それとも学校中に言いふらしましょうか?」
「……やめて、もう、本当に」
 ああ、哀れなる犠牲者がまた誕生した。
「では、ママ? 私はここに宿泊するということで、いいですか?」
「それは――」
「いいですね?」
「……わかったわ」
 弱みを握られている人間ほど弱いものはない、そう思った俺だった。
「柚季……もう一度言うけど……この子怖い」
「少なくとも俺よりは怖いだろうな、こいつは。脅迫することにまるで躊躇がない」
「んー? 何か言いました?」
「「何でもない」」
 視線を逸らしながら二人同時に答える。
「で、遠江。お前何しにここにきたんだ」
「夕食の食材持ってきたに決まってるじゃない。そもそも毎日きてるでしょうが」
 食材の入ったレジ袋をがさりと掲げながら遠江は当然のように言う。
「くる度に言ってるよな? 別にこなくていいって。俺は生活費に困ってるわけじゃない。お前ら家族が格安にしてくれてるお陰でな。わざわざくる必要なんてないんだよ」
「しょうがないでしょ。あの子から言わたのよ、アンタの世話をしてってね。やめるわけにはいかないのよ、あの子の頼みなんだから」
「ガキじゃあるめえしいいって言ってんのに……ったく」
 遠江からひったくるようにレジ袋を取り上げ、小さいキッチンでそれを広げる。
「あれ? ママが作るわけではないんですね」
「ああ、俺が禁止した。流石に遠江の料理を食うほど命知らずじゃないんでな」
「命知らず……? では、ママの料理は四字熟語で表したらどの言葉が当てはまりますか?」
「……阿鼻叫喚」
「最悪じゃないですか!? ママって高校時代って料理下手なんですね、初めて知りました」
「逆に彼方説があってんだとすれば、未来のこいつは料理得意なのか?」
「ええ、美味しかったと記憶しています。だけどまぁ……少し入れてる具材が特有と言えば特有でしたね。ですが美味しかったですよ、プロ並みに」
「何よアンタたち。未来やら何やらと、そんなこと言う暇があったらご飯作りなさい。今日柚季が帰ってくるのが遅かったからお腹減ってんのよ」
「毎度毎度お前もよく食うな。あっちの家で飯食ってこっちの家で飯食うとか。太るぞ」
「太らないからいいのよ」
「根拠のない説明だなおい」
 重たい息を吐きながら、俺は三人分の夕食を作るため手を動かすのだった。
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