高校生なのに娘ができちゃった!?

まったりさん

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彼方が深夜部屋に来て…?

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 結局遠江家に泊まることになってしまった俺は、自分の部屋にきていた。自分の部屋とはいっても、昔使っていた部屋だが。
 高校入学と同時にこの家を出て行ったが、部屋はかつてのままで埃っぽくもないためこまめに掃除されていたのだろう。正直ありがたかった。
 もうすでに時刻は二十四時を過ぎているため、感傷に浸ることもなく電灯を消して久しぶりに使うベッドに潜り込んだ。
 やはりベッドはいい。いつもいつも彼方に布団は譲って、押し入れで寝ているため体にも精神的にも優しい。……だがまぁ押し入れで寝ていてもいつもなぜか隣で寝られているんだが。
 まぁ今はそんなことどうだっていいか。今考えなきゃいけないのは明日の墓参りだ。
 先ほど隆弘さんが言っていた通り、俺は通夜にも葬式にも出てはいない。薄情な男だというのは自分自身でもわかっている。でも、認めたくなかった。光が死んだって事実を。
 多分、今もなお俺は光の死については半信半疑なのかもしれない。だって、心の奥底で世界のどこかでまだ光が生きているかもしれない、そんな淡い期待を抱いている自分がいるからだ。
 でも。そんなことは、絶対にありえない。何しろ――
 瞬間、脳裏にあの事故現場の図が蘇った。
「あ……あぁ……っ」
 頭を抱えた。ずきりずきりと頭痛がし、動悸が激しくなる。
 あの光景を思い出したらいつもこうだ。一種の錯乱状態になって何が何だかわからなくなる。
「がぁっ……!?」
 と、俺が獣のような呻き声を上げた瞬間だった。
 がちゃりと、俺の部屋のドアが開けられる音がした。その音で少し落ち着いた俺は、額を押さえながらもドアに視線を移した。
 廊下には電気がついていたらしく、一瞬閃光に視界が奪われたが、すぐに回復し、突然の来客を視認出来た。
「……どうか、したんですかパパ……」
 彼方だった。なぜか大事そうにピンク色の枕を抱えている。
「……彼方か。いや、何でもない」
 気がつけば頭痛はほとんど治まっていた。俺は体を持ち上げてからその場であぐらを掻いて質問した。
「お前こそどうしたんだ、彼方。今日は遠江の部屋で寝るんじゃなかったのか?」
「私が決めたことじゃありません。あれはママが勝手に言ったことです。だから言葉的には寝さされた、というのが正しいです」
 どうでもいいだろうそんなこと。
「つーか何だ? お前、まさかこんなとこでも俺のとこで寝るのか? 勘弁してくれ、明日起こしにきた遠江を相手にするのが面倒だ」
 ちなみに奇跡的にまだ遠江と鉢合わせたことがない。
「お願いします、今日はどうしてもパパと寝たいんです」
「…………」
 夕飯の時からそうだが、彼方はいつもに増して間違いなく元気というか覇気がない。何か事情があったのだろう。
 俺は大きくため息を吐いた。
「……どうなっても知らないからな。俺はもしばれてもお前のせいにする。それでいいんだったら別に寝てもいい」
「あ、ありがとうございますっ」
 嬉しそうな声を上げて、のそりのそりと彼方は俺のベッドに潜り込んできた。慣れってもんは怖いな。この行為にもう何の違和感も感じなくなっていた。
 寝返りを打つと、その背中にこつんと彼方の頭が置かれた。これもいつものこと。日常茶飯事だ。というかこれが日常茶飯事になりつつある俺の生活は異常なのだろう。
「…………」
「…………」
 無言だった。俺も彼方も、二人とも押し黙っていた。
 寝息は聞こえないところを見ると彼方はまだ寝てはいないのだろう。
 野暮なのかもしれない。迷惑になるのかもしれない。
 でも、俺はこんな空虚な彼方を見るのは耐え難かった。
 だから尋ねた。
「どうかしたのか、彼方」
「…………」
 すぐには返答はなかった。何秒、何分経ったのかはわからない。が、ようやく彼方の口から返答が出た。
「質問があるんです」
「……質問?」
 聞き返した。すると彼方は俺の着ているシャツを掴みながら、聞いてきた。
「ママの名前は、遠江瞬華で合っていますか?」
「ああ、そうだ。ママの名前は遠江瞬華だ。それがどうかしたのか?」
「いえ、別に何でもありません。ただの興味本位で聞いたことですから」
 くすっと、小さく笑う声が聞こえた。
「ほんと、パパって優しいですね」
「話題転換が唐突だな」
「わかっていたことでしょう、一緒にいたパパなら」
「まぁそうなんだがな」
 そういや、と俺はふとして思いついた質問をすることにした。
「最近お前帰ってくるの遅いけど何してんだ? 冬休みだからって遊んでばっかじゃ俺みたいになるぞ」
「自覚はしてるんですね」
「うっせえ。で、結局どうなんだよ」
「ふふ、秘密です。私の日常を知ろうとするなんて、まさかパパ私に惚れましたか?」
「いや、あるわけねえだろ」
「真顔で言われるのは流石に悲しいんですけど……」
「娘に恋とか普通ありえねえだろ」
 まぁこいつのことは娘とも思ってないんだが。
「それはそうと、本当にありがとうございます、パパ。今日は本当にパパといなきゃ心細かったので、とても助かりました」
 突然の出来事だった。俺は驚愕した。まさか彼方の口からお礼が出るなんて、明日は雨かもしれないな。
「珍しいな、お前の口からお礼の言葉が出てくるなんて。偉い偉い」
「…………」
「ごめん……流石に俺のキャラで偉い偉いなんて言うのは合ってなかったな」
「いえ、違います。そういうことじゃなくて……」
 彼方はくいっと俺のシャツを引っ張ると、
「――撫でないんですか? 私の頭を」
「は?」
「い、いやだって普通親が子供に偉い偉い言う時には必ず撫で撫でがセットでついてくるじゃないですか」
「いや知らねえよ」
「撫でて、くれないんですか?」
 多分、背中じゃ彼方がうるうると目を潤ませているのだろう。確証はないが、何かそういう気がする。
「……はぁ~」
 俺は重たい、とても重たいため息を吐いてから彼方に体を向けた。そして手を伸ばし、彼方の頭をわしゃわしゃと撫でてやる。
「わしゃぁぁ……」
 変な声を上げて昇天するんじゃないかとい思うほどに恍惚とした表情をする彼方。何か犬を撫でてるみたいだ。
「でさ、これいつまでやればいいんだよ」
「いつまでもで」
 結局、彼方を撫でる作業は一時間ほど続いた。筋肉痛になりそうだ。
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