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昼休み。昼食を食べ、トイレに行く。
トイレから出てきたところで美晴先輩に声をかけられる。「鮎川くん。ちょっと一緒に来てくれないかしら?話したいことがあるの」
「はい」
美晴先輩が歩き出す。その後をついていく。そして別棟の屋上に来た。そこにはベンチがある。
「ベンチに座りましょう」
「はい」
僕たちはベンチに座る。
辺りには誰もいない。
「あの子は里菜よ。陽菜は死んだの。病気でね。白血病だったの」
前置きなしに美晴先輩は言った。
白血病・・・
「陽菜はね、ずっと鮎川くんのことが好きだったの。鮎川くんに会うまではぜったい死なないって頑張っていたの。本当に頑張っていたの。小さな体で。10歳の子供なのに頑張っていたの。里菜も一生懸命陽菜を支えていたわ。でも、陽菜は死んでしまった。里菜は泣いたわ。毎日のように泣いていたわ。自分を責めながらね」
自分を責めながら・・・
「双子なのに陽菜だけが病気になった。里菜は自分のせいで陽菜が病気になったと思っていたの。自分が病気になるはずだったのに病気にならなかった。そのせいで陽菜が病気になったと思っていたの」
自分を責める里菜先輩の姿が脳裏に浮かんだ。
「里菜の両親や私がいくら里菜のせいじゃないって言っても里菜は自分を責め続けた。責めて責めて責め続けて、そしてある日、里菜は自分を陽菜と思うようになったの。その日から里菜の中には里菜と陽菜の人格が共存するようになったの。あるときは里菜になり、あるときは陽菜になるようになったの。そんな状態がもう5年も続いているの」
多重人格、という言葉が浮かんだ。
「里菜はね、自分だけが生きているのは間違っていると思ったんだと思う。その間違いを正すために自分の中に陽菜を作り出したんだと思う。正確な理由はわからない。でも私はそう思ったの」
僕は美晴先輩の自論が正しい気がした。
「不思議なことにね、里菜には陽菜の記憶もあったの。陽菜が体験したことが里菜の記憶にはあったの。あるで自分が体験したことみたいに里菜は陽菜の体験を語ったわ」
双子には不思議な力がある、という説を思い出す。その力が働いたのだろうか?
「双子には不思議な力があるって聞いたことあるでしょ」
「はい」
「私は、その力が働いたんだと思う。そうとしか思えないの。だってその力がなかったら陽菜の体験を里菜が詳細に話せるわけないもの」
「はい」
「里菜はね、自分が病気で入院していたと思っているの。そして奇跡的に助かったと思っているの。里菜の中で陽菜の死はなかったことになっているのよ」
実の妹の死がなかったことになっている。そう思ったとき、胸に痛みを感じた。それはとても悲しいことのように思えた。
「あなたにこんなことを言っても意味はないかもしれない。でも、里菜はあなたのことを愛している。それは真実の愛ではないかもしれないけど、あなたのことを愛している。そんな里菜にあなたは関わっている。だからあなたには里菜のことを話しておくべきだと思ったの」
「・・・はい」
すごく重い話だ。でも僕は里菜先輩のことを知りたいと思っていた。だから美晴先輩が話してくれたことに感謝を感じている。
「美晴先輩。話してくれてありがとうございます」
「お礼なんていらないわ。私の望みは里菜の幸せだけ。里菜は、里菜と陽菜はね、私の恩人なの。私がクラスでいじめられていたとき、里菜と陽菜だけが私と仲良くしてくれたの。里菜と陽菜だけが私の味方になってくれたの。すごく嬉しかった。すごく救われた。だからね、里菜と陽菜には幸せになってほしかった。でも、陽菜は死んでしまった。だから里菜には陽菜の分まで幸せになってほしいの。私の望みはそれだけなの」
「はい」
「できるなら私自身の力で里菜を幸せにしてあげたい。でも、非力な私にはそれができそうにない。だから、あなたに期待してしまったの。里菜が愛しているあなたならって期待してしまったの。重荷になるってわかってるのにね」
「・・・」
「でもね、私には私の人生があり、里菜には里菜の人生があるように、あなたにはあなたの人生があるの。だから無理に私の期待に応えたり、里菜のためになる行動をしたりしなくてもいいからね。里菜も陽菜もそんなこと望んでいないから。わかった?」
「はい」
里菜先輩も陽菜先輩も美晴先輩もどうしてみんな良い人なんだろう。悲しいくらいに良い人過ぎる。
僕は里菜先輩のためになることをしたいと思っている。里菜先輩のことが好きだから。選択肢という特殊な経緯で好きになったのは事実だ。でもその選択肢によって生じた物語は僕の現実なのだ。現実ということは僕の人生なのだ。だから里菜先輩が好きという感情も現実なのだ。事実なのだ。
だから僕は里菜先輩のために何かしたい気持ちも事実なのだ。だから僕はその事実の気持ちに従おうと思った。
何ができるかわからない。でも、何かできることはあるはずだ。きっと・・・
トイレから出てきたところで美晴先輩に声をかけられる。「鮎川くん。ちょっと一緒に来てくれないかしら?話したいことがあるの」
「はい」
美晴先輩が歩き出す。その後をついていく。そして別棟の屋上に来た。そこにはベンチがある。
「ベンチに座りましょう」
「はい」
僕たちはベンチに座る。
辺りには誰もいない。
「あの子は里菜よ。陽菜は死んだの。病気でね。白血病だったの」
前置きなしに美晴先輩は言った。
白血病・・・
「陽菜はね、ずっと鮎川くんのことが好きだったの。鮎川くんに会うまではぜったい死なないって頑張っていたの。本当に頑張っていたの。小さな体で。10歳の子供なのに頑張っていたの。里菜も一生懸命陽菜を支えていたわ。でも、陽菜は死んでしまった。里菜は泣いたわ。毎日のように泣いていたわ。自分を責めながらね」
自分を責めながら・・・
「双子なのに陽菜だけが病気になった。里菜は自分のせいで陽菜が病気になったと思っていたの。自分が病気になるはずだったのに病気にならなかった。そのせいで陽菜が病気になったと思っていたの」
自分を責める里菜先輩の姿が脳裏に浮かんだ。
「里菜の両親や私がいくら里菜のせいじゃないって言っても里菜は自分を責め続けた。責めて責めて責め続けて、そしてある日、里菜は自分を陽菜と思うようになったの。その日から里菜の中には里菜と陽菜の人格が共存するようになったの。あるときは里菜になり、あるときは陽菜になるようになったの。そんな状態がもう5年も続いているの」
多重人格、という言葉が浮かんだ。
「里菜はね、自分だけが生きているのは間違っていると思ったんだと思う。その間違いを正すために自分の中に陽菜を作り出したんだと思う。正確な理由はわからない。でも私はそう思ったの」
僕は美晴先輩の自論が正しい気がした。
「不思議なことにね、里菜には陽菜の記憶もあったの。陽菜が体験したことが里菜の記憶にはあったの。あるで自分が体験したことみたいに里菜は陽菜の体験を語ったわ」
双子には不思議な力がある、という説を思い出す。その力が働いたのだろうか?
「双子には不思議な力があるって聞いたことあるでしょ」
「はい」
「私は、その力が働いたんだと思う。そうとしか思えないの。だってその力がなかったら陽菜の体験を里菜が詳細に話せるわけないもの」
「はい」
「里菜はね、自分が病気で入院していたと思っているの。そして奇跡的に助かったと思っているの。里菜の中で陽菜の死はなかったことになっているのよ」
実の妹の死がなかったことになっている。そう思ったとき、胸に痛みを感じた。それはとても悲しいことのように思えた。
「あなたにこんなことを言っても意味はないかもしれない。でも、里菜はあなたのことを愛している。それは真実の愛ではないかもしれないけど、あなたのことを愛している。そんな里菜にあなたは関わっている。だからあなたには里菜のことを話しておくべきだと思ったの」
「・・・はい」
すごく重い話だ。でも僕は里菜先輩のことを知りたいと思っていた。だから美晴先輩が話してくれたことに感謝を感じている。
「美晴先輩。話してくれてありがとうございます」
「お礼なんていらないわ。私の望みは里菜の幸せだけ。里菜は、里菜と陽菜はね、私の恩人なの。私がクラスでいじめられていたとき、里菜と陽菜だけが私と仲良くしてくれたの。里菜と陽菜だけが私の味方になってくれたの。すごく嬉しかった。すごく救われた。だからね、里菜と陽菜には幸せになってほしかった。でも、陽菜は死んでしまった。だから里菜には陽菜の分まで幸せになってほしいの。私の望みはそれだけなの」
「はい」
「できるなら私自身の力で里菜を幸せにしてあげたい。でも、非力な私にはそれができそうにない。だから、あなたに期待してしまったの。里菜が愛しているあなたならって期待してしまったの。重荷になるってわかってるのにね」
「・・・」
「でもね、私には私の人生があり、里菜には里菜の人生があるように、あなたにはあなたの人生があるの。だから無理に私の期待に応えたり、里菜のためになる行動をしたりしなくてもいいからね。里菜も陽菜もそんなこと望んでいないから。わかった?」
「はい」
里菜先輩も陽菜先輩も美晴先輩もどうしてみんな良い人なんだろう。悲しいくらいに良い人過ぎる。
僕は里菜先輩のためになることをしたいと思っている。里菜先輩のことが好きだから。選択肢という特殊な経緯で好きになったのは事実だ。でもその選択肢によって生じた物語は僕の現実なのだ。現実ということは僕の人生なのだ。だから里菜先輩が好きという感情も現実なのだ。事実なのだ。
だから僕は里菜先輩のために何かしたい気持ちも事実なのだ。だから僕はその事実の気持ちに従おうと思った。
何ができるかわからない。でも、何かできることはあるはずだ。きっと・・・
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