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里菜先輩の過去が終わり、屋上のベンチに戻ったとき、僕は泣いていた。
双子なのに、適合率最高なのに、移植が失敗するなんて。酷すぎると思った。里菜先輩の心の傷を思うとやりきれない気持ちになる。
僕はこんな悲しい過去を背負った女の子を悲しませるかもしれないのだ。
そう思うと自己嫌悪を感じた。
杉浦さんに告白なんてしたくない。でももう告白するという選択肢を選んでしまった。僕は選択肢システムに強い憎しみを感じた。そんなシステムがある世界に僕を放り込んだ何者かにも強い憎しみを感じた。
でもどれだけ憎しみを感じてもどうすることもできない。くそっ。くそっ。くそっ。僕は自分の太腿を何度も殴った。無力な自分に腹が立つ。くそっ。
「光くん」
聞き慣れた声が聞こえてきた。
驚いて見ると里菜先輩がいた。心配そうな顔で僕を見ている。
「どうしたの?どうして泣いてるの?美晴に酷いこと言われたの?」
「違います。美晴先輩には先輩の病気のことを教えてもらっただけです」
「じゃあ、どうして泣きながら自分を責めるように太腿を殴ってるの?」
「・・・先輩が病気で苦しんでいるとき、何もしてあげられなかったからです」
「嘘」
「ホントです」
「どうして嘘をつくの。やっぱり美晴に酷いこと言われたから?」
「違います。本当に違います。美晴さんには本当に酷いこと言われてないんです」
「じゃあ、本当のこと教えてよ」
「・・・」
「私に言えないことなのね」
「僕は告白するって決めたんです。先輩を悲しませるかもしれないのに。先輩のこと大好きなのに。杉浦さんに告白するって決めたんです。そんな不誠実な自分に腹が立ったんです。だから殴っていたんです。情けなくて泣いていたんです」
「・・・」
「本当です。嘘じゃないです。僕は自分のクズさに腹が立って、情けなくて、泣いて、殴ったんです」
「光くん・・・ごめんね」里菜先輩は謝り始める。その声には罪悪感が色濃く混じっているように感じた。「私が女の武器を利用して誘惑したりしなければ、光くんは何の憂いもなく杉浦さんに告白できたのに・・・ごめんね」
妹の死に罪悪感を抱く里菜を思い出す。罪悪感に苦しむ里菜を思い出す。胸が痛む。僕のせいで里菜先輩が罪悪感を抱いている。さらに胸が痛む。
「止めてください。先輩は悪くありません。謝らないでください」
「ううん。私が悪いの。あんなこと私はするべきではなかったの。私はわかっていたの。あんなことすれば光くんが悩むって。優しい光くんなら悩むってわかっていたの。なのに私はあんなことをしたの。私は私の欲望を優先したの。光くんに愛されたい。そんな欲望を優先したの。光くんが悩むのわかっていながらね」
里菜先輩の声には涙が混じっている。でも里菜先輩は泣かない。涙を我慢している。まるで自分には泣く資格がないと思っているように。
僕は里菜先輩を抱きしめたいと思った。でも僕にそんな資格はないと思った。これから里菜先輩を深く悲しませるかもしれない行為をする僕にそんな資格があるとは思えなかった。
「ごめんね。光くん。ホントにごめんね」
聞きたくない。里菜先輩の謝罪の言葉なんて聞きたくない。耳を塞ぎたい。
「先輩・・・お願いだから謝らないでください」
「光くんは優しいね」
「僕は優しくないです」
「ううん。優しいよ。子供の頃と同じようにすごく優しい。優しくなかったら私のことでそんなに悩んだりしないよ」
「違う。先輩。僕は本当に優しくないんだ。先輩が思っているような男ではないんだ」
「光くんがどう思おうと私は光くんを優しい男の子だと思っている。そしてこれからもその思いは変わらない。絶対に」
「どうして・・・」
「光くんのことが好きだからよ」
違うよ。里菜先輩。里菜先輩は僕のことを好きではない。僕を好きなのは陽菜なんだ。里菜先輩ではないんだ。里菜先輩は僕を好きと錯覚しているだけなんだ。そう言いたかった。でも言えるわけなかった。そんなことを言えばさらに里菜先輩を傷つけてしまう。そんなの嫌だ。
「こんな僕のどこが好きなんですか?僕はゲームオタクなんですよ。女の子にキモいと言われるような男なんですよ。成績も平凡だし、運動神経も普通だし、自分勝手だし、友達少ないし、容姿も平凡だし・・・そんな僕のどこが好きなんですか?」
「すべてよ。私は平凡な光くんもゲームオタクな光くんも自分勝手な光くんも全部好きなの。大好きなの。本当だよ。もし光くんが私に死ねと言われたら私は喜んでその命令に従えるよ。それくらい私は光くんが大好きなの」
里菜先輩は笑顔でそう言った。
そのとき選択肢が現れる。
『①◯◯夢を見る』
『②××夢を見る』
双子なのに、適合率最高なのに、移植が失敗するなんて。酷すぎると思った。里菜先輩の心の傷を思うとやりきれない気持ちになる。
僕はこんな悲しい過去を背負った女の子を悲しませるかもしれないのだ。
そう思うと自己嫌悪を感じた。
杉浦さんに告白なんてしたくない。でももう告白するという選択肢を選んでしまった。僕は選択肢システムに強い憎しみを感じた。そんなシステムがある世界に僕を放り込んだ何者かにも強い憎しみを感じた。
でもどれだけ憎しみを感じてもどうすることもできない。くそっ。くそっ。くそっ。僕は自分の太腿を何度も殴った。無力な自分に腹が立つ。くそっ。
「光くん」
聞き慣れた声が聞こえてきた。
驚いて見ると里菜先輩がいた。心配そうな顔で僕を見ている。
「どうしたの?どうして泣いてるの?美晴に酷いこと言われたの?」
「違います。美晴先輩には先輩の病気のことを教えてもらっただけです」
「じゃあ、どうして泣きながら自分を責めるように太腿を殴ってるの?」
「・・・先輩が病気で苦しんでいるとき、何もしてあげられなかったからです」
「嘘」
「ホントです」
「どうして嘘をつくの。やっぱり美晴に酷いこと言われたから?」
「違います。本当に違います。美晴さんには本当に酷いこと言われてないんです」
「じゃあ、本当のこと教えてよ」
「・・・」
「私に言えないことなのね」
「僕は告白するって決めたんです。先輩を悲しませるかもしれないのに。先輩のこと大好きなのに。杉浦さんに告白するって決めたんです。そんな不誠実な自分に腹が立ったんです。だから殴っていたんです。情けなくて泣いていたんです」
「・・・」
「本当です。嘘じゃないです。僕は自分のクズさに腹が立って、情けなくて、泣いて、殴ったんです」
「光くん・・・ごめんね」里菜先輩は謝り始める。その声には罪悪感が色濃く混じっているように感じた。「私が女の武器を利用して誘惑したりしなければ、光くんは何の憂いもなく杉浦さんに告白できたのに・・・ごめんね」
妹の死に罪悪感を抱く里菜を思い出す。罪悪感に苦しむ里菜を思い出す。胸が痛む。僕のせいで里菜先輩が罪悪感を抱いている。さらに胸が痛む。
「止めてください。先輩は悪くありません。謝らないでください」
「ううん。私が悪いの。あんなこと私はするべきではなかったの。私はわかっていたの。あんなことすれば光くんが悩むって。優しい光くんなら悩むってわかっていたの。なのに私はあんなことをしたの。私は私の欲望を優先したの。光くんに愛されたい。そんな欲望を優先したの。光くんが悩むのわかっていながらね」
里菜先輩の声には涙が混じっている。でも里菜先輩は泣かない。涙を我慢している。まるで自分には泣く資格がないと思っているように。
僕は里菜先輩を抱きしめたいと思った。でも僕にそんな資格はないと思った。これから里菜先輩を深く悲しませるかもしれない行為をする僕にそんな資格があるとは思えなかった。
「ごめんね。光くん。ホントにごめんね」
聞きたくない。里菜先輩の謝罪の言葉なんて聞きたくない。耳を塞ぎたい。
「先輩・・・お願いだから謝らないでください」
「光くんは優しいね」
「僕は優しくないです」
「ううん。優しいよ。子供の頃と同じようにすごく優しい。優しくなかったら私のことでそんなに悩んだりしないよ」
「違う。先輩。僕は本当に優しくないんだ。先輩が思っているような男ではないんだ」
「光くんがどう思おうと私は光くんを優しい男の子だと思っている。そしてこれからもその思いは変わらない。絶対に」
「どうして・・・」
「光くんのことが好きだからよ」
違うよ。里菜先輩。里菜先輩は僕のことを好きではない。僕を好きなのは陽菜なんだ。里菜先輩ではないんだ。里菜先輩は僕を好きと錯覚しているだけなんだ。そう言いたかった。でも言えるわけなかった。そんなことを言えばさらに里菜先輩を傷つけてしまう。そんなの嫌だ。
「こんな僕のどこが好きなんですか?僕はゲームオタクなんですよ。女の子にキモいと言われるような男なんですよ。成績も平凡だし、運動神経も普通だし、自分勝手だし、友達少ないし、容姿も平凡だし・・・そんな僕のどこが好きなんですか?」
「すべてよ。私は平凡な光くんもゲームオタクな光くんも自分勝手な光くんも全部好きなの。大好きなの。本当だよ。もし光くんが私に死ねと言われたら私は喜んでその命令に従えるよ。それくらい私は光くんが大好きなの」
里菜先輩は笑顔でそう言った。
そのとき選択肢が現れる。
『①◯◯夢を見る』
『②××夢を見る』
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