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里菜との仲は確実に深まっていった。
毎日のように手を繋いだり、キスをしたりした。
でもキス以上の行為はしなかった。
今の里菜とキス以上の行為をしてはいけない気がしたからだ。
高校生で性的行為をするのは早い気がしたし、陽菜人格の里菜と性的行為をするのは抵抗があった。今の里菜と性行為するのは里菜の意思を無視して自分の性欲を満たす行為のような気がしたからだ。以上の理由で僕は里菜にキス以上の行為をしなかった。
もちろん、里菜は魅力的なので、僕の中に里菜と性行為をしたい気持ちはある。でも意思の力でその気持を我慢した。
でも、時々、里菜と一緒にいると性欲が刺激され、我慢するのが難しくなることがあった。今がその状態だった。
僕は今、里菜の自室にいる。部屋の中にいるのは僕と里菜だけ。他には誰もいない。部屋の外にも誰もいない。里菜の家族は出掛けているのだ。しかも里菜はミニスカートにニーソという僕好みの服装をしている。
この状況で性欲を我慢するのはかなり難しかった。でも、僕は意思の力で劣情を抑える。
「ねえ、光くん」
「なに?」
「私って魅力ないのかな?」
「魅力あるよ」
「じゃあ、どうして私にエッチなことしないの」
「・・・僕達、まだ高校生だからだよ」
「高校生の7割はエッチなことしてるって雑誌に書いてあったよ」
「僕はマイノリティーが好きなんだ」
「・・・でも私に魅力があったら我慢できなくなるよね?」
「さあ、僕にはわからないな」
「私に魅力があったら絶対我慢できなくなるはずだよ。でも光くんは我慢できてる。私に魅力がないから我慢できてるんだよ」
「陽菜。どうしたの?今日は変だよ」
「私はね、光くんとエッチしたいと思ってるの。我慢できなくなりそうなくらいエッチしたいと思ってるの」
「・・・冗談だよね?」
「冗談じゃないよ。本当だよ。私は本当に我慢できなくなりそうなくらいにエッチしたいと思ってるの。光くんと。証拠見せてあげよっか?」
「証拠?」
「私ね、大事なところが濡れてるの。すごく濡れてるの。それを見せてあげる」
里菜は立ち上がり、スカートの中に手を入れる。そしてパンツを脱ごうとする。
「やめろ」
僕は思わず言う。
里菜の動きが止まる。
「僕はまだそういうことはしたくないんだ」
里菜の目に涙が滲んでいく。「ごめんなさい」涙の量がどんどん増えていく。「ごめんなさい」
「いや、陽菜は悪くない。僕が意気地なしなだけだ」
「ううん。光くんの気持ちを無視してエッチなことしようとした私が悪いの。ごめんなさい」
里菜は涙を拭いながら言う。
僕は陽菜を抱きしめる。「陽菜は悪くないよ。だから泣かないで」
「私、怖かったの。光くんが他の女性を好きになったらと思うと怖かったの。だから早くエッチなことをしたいと思ったの」
「馬鹿だな。僕が里菜以外の女の子を好きになるわけないだろう」
里菜が僕から離れる。
「里菜って誰なの?」
・・・しまった。間違えてしまった。
「前にも里菜って私のこと呼んだよね?里菜って誰なの?」
「・・・小学生の頃の友達だよ」
僕は嘘をつく。
「嘘を言わないで。里菜って誰なの?教えて。光くんの初恋の人?」
「違うよ」
「初恋の人なのね」里菜は鋭い。「今もその女性が好きなのね」
「違うって言ってるだろ」
「好きなのね。すごく好きなのね」
「違うって言ってるじゃないか」
「じゃあ、私とエッチしてよ。その里菜って女の子が好きじゃないなら私とエッチできるでしょ」
「できないよ」
「どうしてよ?」
「僕達は高校生だからだよ」
「好きなら高校生でもエッチできるわ」
「陽菜のことが大事だからだよ」
「私がエッチしたいって言ってるのよ。私を大事に思うなら私の望みを叶えてよ」
「できないよ」
「酷い・・・私より初恋の女性のほうが好きだからできないんだ」
里菜はボロボロと泣きながら言う。
「違う」
「そうよ。私にはわかる。私よりも里菜って女性のほうが好きだって。私にはわかるの」
里菜の言葉は間違っていない。僕が好きなのは里菜なのだ。陽菜ではないのだ。
「酷いよ。光くん。酷いよ」
「陽菜」
「帰って」
「・・・」
「帰ってって言ってるでしょ!」
里菜はヒステリックに言う。
「わかった」
僕は里菜を傷つけてしまったという罪悪感を感じながら里菜の部屋を出た。
僕はこれからも何度も里菜のことを「里菜」と呼んでしまうと思った。里菜は「陽菜」ではなく「里菜」なのだ。「里菜」と呼ぶのが自然なのだ。だからどれだけ注意していても「里菜」と呼んでしまうと思った。「里菜」と呼ぶたびに里菜を傷つけてしまう。そう思うと暗い気持ちになった。
里菜は里菜なのに「里菜」と呼んだら里菜を傷つけてしまう。不条理だと思った。
里菜の自宅を出たところで、里菜の母親にメールする。『里菜を傷つけてしまいました』と。
里菜の母親が帰ってくるのをエントランスで待つ。里菜の母親がマンションに入ってきた。
「すいません」
「どうしたの?」
「僕が里菜と呼んでしまったんです。陽菜なのに。それで陽菜が里菜って誰よって怒って、私より里菜って子のほうが好きなんでしょって」
「そうだったの。ごめんね。迷惑かけて」
「いえ、僕が悪いんです」
「光くんは悪くないわ」
「・・・」
「あとは私に任せて」
「はい」
僕はマンションを出た。
そのとき、選択肢が現れた。
『①陽菜とセックスする(里菜否定)』
『②陽菜とセックスしない(里菜肯定)』
なんだよ、里菜否定と里菜肯定って・・・陽菜とセックスしたら里菜が消えてしまうってことか。
嫌だ。里菜が消えてしまうなんて。
あの子は里菜なんだ。陽菜ではないんだ。僕が好きなのは里菜なんだ。陽菜ではないんだ。
でも今の里菜はセックスをすれば喜ぶだろう。でも僕が喜んでほしいのは里菜なのだ。陽菜ではないのだ。
でもセックスをしないと里菜が傷つく。里菜はそれくらい僕は愛してくれている。
くそっ。なんなんだよ。どうして里菜を傷つける選択肢しかないんだよ。くそっ。
時間が経過し、カウントダウンが始まる。59、58・・・34、33・・・10、9、8、7・・・僕は選択肢②を選ぶ。
僕は里菜に消えてほしくない。僕が好きなのは里菜なのだから。
毎日のように手を繋いだり、キスをしたりした。
でもキス以上の行為はしなかった。
今の里菜とキス以上の行為をしてはいけない気がしたからだ。
高校生で性的行為をするのは早い気がしたし、陽菜人格の里菜と性的行為をするのは抵抗があった。今の里菜と性行為するのは里菜の意思を無視して自分の性欲を満たす行為のような気がしたからだ。以上の理由で僕は里菜にキス以上の行為をしなかった。
もちろん、里菜は魅力的なので、僕の中に里菜と性行為をしたい気持ちはある。でも意思の力でその気持を我慢した。
でも、時々、里菜と一緒にいると性欲が刺激され、我慢するのが難しくなることがあった。今がその状態だった。
僕は今、里菜の自室にいる。部屋の中にいるのは僕と里菜だけ。他には誰もいない。部屋の外にも誰もいない。里菜の家族は出掛けているのだ。しかも里菜はミニスカートにニーソという僕好みの服装をしている。
この状況で性欲を我慢するのはかなり難しかった。でも、僕は意思の力で劣情を抑える。
「ねえ、光くん」
「なに?」
「私って魅力ないのかな?」
「魅力あるよ」
「じゃあ、どうして私にエッチなことしないの」
「・・・僕達、まだ高校生だからだよ」
「高校生の7割はエッチなことしてるって雑誌に書いてあったよ」
「僕はマイノリティーが好きなんだ」
「・・・でも私に魅力があったら我慢できなくなるよね?」
「さあ、僕にはわからないな」
「私に魅力があったら絶対我慢できなくなるはずだよ。でも光くんは我慢できてる。私に魅力がないから我慢できてるんだよ」
「陽菜。どうしたの?今日は変だよ」
「私はね、光くんとエッチしたいと思ってるの。我慢できなくなりそうなくらいエッチしたいと思ってるの」
「・・・冗談だよね?」
「冗談じゃないよ。本当だよ。私は本当に我慢できなくなりそうなくらいにエッチしたいと思ってるの。光くんと。証拠見せてあげよっか?」
「証拠?」
「私ね、大事なところが濡れてるの。すごく濡れてるの。それを見せてあげる」
里菜は立ち上がり、スカートの中に手を入れる。そしてパンツを脱ごうとする。
「やめろ」
僕は思わず言う。
里菜の動きが止まる。
「僕はまだそういうことはしたくないんだ」
里菜の目に涙が滲んでいく。「ごめんなさい」涙の量がどんどん増えていく。「ごめんなさい」
「いや、陽菜は悪くない。僕が意気地なしなだけだ」
「ううん。光くんの気持ちを無視してエッチなことしようとした私が悪いの。ごめんなさい」
里菜は涙を拭いながら言う。
僕は陽菜を抱きしめる。「陽菜は悪くないよ。だから泣かないで」
「私、怖かったの。光くんが他の女性を好きになったらと思うと怖かったの。だから早くエッチなことをしたいと思ったの」
「馬鹿だな。僕が里菜以外の女の子を好きになるわけないだろう」
里菜が僕から離れる。
「里菜って誰なの?」
・・・しまった。間違えてしまった。
「前にも里菜って私のこと呼んだよね?里菜って誰なの?」
「・・・小学生の頃の友達だよ」
僕は嘘をつく。
「嘘を言わないで。里菜って誰なの?教えて。光くんの初恋の人?」
「違うよ」
「初恋の人なのね」里菜は鋭い。「今もその女性が好きなのね」
「違うって言ってるだろ」
「好きなのね。すごく好きなのね」
「違うって言ってるじゃないか」
「じゃあ、私とエッチしてよ。その里菜って女の子が好きじゃないなら私とエッチできるでしょ」
「できないよ」
「どうしてよ?」
「僕達は高校生だからだよ」
「好きなら高校生でもエッチできるわ」
「陽菜のことが大事だからだよ」
「私がエッチしたいって言ってるのよ。私を大事に思うなら私の望みを叶えてよ」
「できないよ」
「酷い・・・私より初恋の女性のほうが好きだからできないんだ」
里菜はボロボロと泣きながら言う。
「違う」
「そうよ。私にはわかる。私よりも里菜って女性のほうが好きだって。私にはわかるの」
里菜の言葉は間違っていない。僕が好きなのは里菜なのだ。陽菜ではないのだ。
「酷いよ。光くん。酷いよ」
「陽菜」
「帰って」
「・・・」
「帰ってって言ってるでしょ!」
里菜はヒステリックに言う。
「わかった」
僕は里菜を傷つけてしまったという罪悪感を感じながら里菜の部屋を出た。
僕はこれからも何度も里菜のことを「里菜」と呼んでしまうと思った。里菜は「陽菜」ではなく「里菜」なのだ。「里菜」と呼ぶのが自然なのだ。だからどれだけ注意していても「里菜」と呼んでしまうと思った。「里菜」と呼ぶたびに里菜を傷つけてしまう。そう思うと暗い気持ちになった。
里菜は里菜なのに「里菜」と呼んだら里菜を傷つけてしまう。不条理だと思った。
里菜の自宅を出たところで、里菜の母親にメールする。『里菜を傷つけてしまいました』と。
里菜の母親が帰ってくるのをエントランスで待つ。里菜の母親がマンションに入ってきた。
「すいません」
「どうしたの?」
「僕が里菜と呼んでしまったんです。陽菜なのに。それで陽菜が里菜って誰よって怒って、私より里菜って子のほうが好きなんでしょって」
「そうだったの。ごめんね。迷惑かけて」
「いえ、僕が悪いんです」
「光くんは悪くないわ」
「・・・」
「あとは私に任せて」
「はい」
僕はマンションを出た。
そのとき、選択肢が現れた。
『①陽菜とセックスする(里菜否定)』
『②陽菜とセックスしない(里菜肯定)』
なんだよ、里菜否定と里菜肯定って・・・陽菜とセックスしたら里菜が消えてしまうってことか。
嫌だ。里菜が消えてしまうなんて。
あの子は里菜なんだ。陽菜ではないんだ。僕が好きなのは里菜なんだ。陽菜ではないんだ。
でも今の里菜はセックスをすれば喜ぶだろう。でも僕が喜んでほしいのは里菜なのだ。陽菜ではないのだ。
でもセックスをしないと里菜が傷つく。里菜はそれくらい僕は愛してくれている。
くそっ。なんなんだよ。どうして里菜を傷つける選択肢しかないんだよ。くそっ。
時間が経過し、カウントダウンが始まる。59、58・・・34、33・・・10、9、8、7・・・僕は選択肢②を選ぶ。
僕は里菜に消えてほしくない。僕が好きなのは里菜なのだから。
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