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自宅に着く。玄関のドアを開ける。靴脱場の後ろに母が立っていた。
「おかえりなさい」
「ただいま」
「優香ちゃん。ひさしぶりね」
「お久しぶりです」
二人は面識があるようだ。
僕たちはリビングに移動する。
僕はソファーに座る。
テーブルの両サイドにソファーが置かれている。僕の正面に母が座る。僕の隣に優香が座る。
「光。優香ちゃんの言うとおり、あなたには双子の兄弟がいるの。他人の空似ではなく、正真正銘の双子よ」
「DNA検査したの?」
「ええ。ごめんね。光に何も言わずに検査して。でも私はどうしても知りたかったの」
「別にいいよ。優香ちゃんの兄も僕と同じ名前なんだね」
「ええ。偶然よ。優香ちゃんのご両親と私達夫婦は偶然、自分の息子に光って名付けたの。名前わからなかったからね。なんの手がかりもない状態で置き去りにされていたのよ」
「そうなんだ。すごい偶然だね。拾ってくれた夫婦の名字がどちらも鮎川で、どちらの夫婦も拾った子供に光って名前を付けるなんて」
僕は薄く笑いながら言う。
「そうね」母がうなずく。「光に兄弟がいると知ることができたのは、優香ちゃんのおかげなの」
優香がうなずく。「小学生のとき、光さんを偶然、見掛けたんです。そのとき兄も一緒にいたんです。それで私と兄は母に聞いたんです。母は兄は自宅前に置き去りにされていたと答えました。それで母は陽子さんに連絡したんです」
陽子とは僕の母の名前だ。
「兄が言ったんです。あの人は僕の兄弟だって。だから母は連絡したんです」
優香は申し訳なさそうに言う。
「電話がかかってきたときは驚いたし、信じられなかった。光に同姓同名に兄弟がいるなんて簡単には信じられなかった。でも光くんに出会って、ああこの子は光の兄弟だって思ったわ。感覚的にそれがわかってしまったの」
「・・・どうして僕に双子の兄弟がいることを黙っていたの?」
「光くんに言わないでほしいと言われたの。僕の存在を知らないほうがいい。知れば息子さんが不幸になる気がするんです。だから言わないでほしい。そう言われたの。真剣な顔でね」
「兄はたぶん自分が将来病気になることを予感していたんだと思います」優香は言う。「それで光くんに迷惑をかけてしまう。だから知らないほうがいいって言ったんだと思います」
「そうかもしれないわね」
そんな未来予知みたいな能力があるわけないと否定できない。いくつもの非現実な経験をしてきた僕には否定できない。
「お兄ちゃんは私に絶対に光くんに連絡してはいけないって言ったんです。でも私はお兄ちゃんを助けたかった。光くんならお兄ちゃんを絶対助けられると思った。だから光くんに会いにきたんです。すいません。迷惑かけて」
「家族なら当然のことよ。私だって光が病気になったら優香ちゃんと同じ行動をすると思うわ」
「・・・」
優香が泣きそうな顔になる。
「光。どうするか決めるのはあなたよ。できるなら光くんを助けてあげてほしい。でも私はそれを強制しない。私は光が正しい道を選べると信じているからね」
「・・・僕には正しい道を選ぶ力なんてないよ。ドナーになることが正しいかもわからない」
里菜は妹のためにドナーになって骨髄を提供した。その結果、妹を失った。それを知っている僕には兄弟のドナーになることが正しいとは思えなかった。もしかしたら陽菜のように死んでしまうかもしれない。自分のせいで誰かが死ぬ・・・考えただけでも怖くなる。
母と優香に言いたかった。双子間の骨髄移植でも失敗することがあるという事実を。でもその事実を言うことが正しいのかどうかもわからない。僕には正しい道を選ぶ力なんてないと改めて思った。
「少し考えさせてくれないか?」
僕は疲れていた。何も考えたくないと思うほどに。
「わかったわ」
僕は部屋に行く。ベットに仰向けになる。すごく疲れている。眠りたいと思う。でも神経が高ぶっていて眠れそうにない。いろんな情報が頭の中を飛び交っている感じがして落ち着かない。何もする気がしない。なのに何かしなければ!という焦りを感じる。
そのとき、スマホが鳴った。画面を見る。里菜からだった。
「おかえりなさい」
「ただいま」
「優香ちゃん。ひさしぶりね」
「お久しぶりです」
二人は面識があるようだ。
僕たちはリビングに移動する。
僕はソファーに座る。
テーブルの両サイドにソファーが置かれている。僕の正面に母が座る。僕の隣に優香が座る。
「光。優香ちゃんの言うとおり、あなたには双子の兄弟がいるの。他人の空似ではなく、正真正銘の双子よ」
「DNA検査したの?」
「ええ。ごめんね。光に何も言わずに検査して。でも私はどうしても知りたかったの」
「別にいいよ。優香ちゃんの兄も僕と同じ名前なんだね」
「ええ。偶然よ。優香ちゃんのご両親と私達夫婦は偶然、自分の息子に光って名付けたの。名前わからなかったからね。なんの手がかりもない状態で置き去りにされていたのよ」
「そうなんだ。すごい偶然だね。拾ってくれた夫婦の名字がどちらも鮎川で、どちらの夫婦も拾った子供に光って名前を付けるなんて」
僕は薄く笑いながら言う。
「そうね」母がうなずく。「光に兄弟がいると知ることができたのは、優香ちゃんのおかげなの」
優香がうなずく。「小学生のとき、光さんを偶然、見掛けたんです。そのとき兄も一緒にいたんです。それで私と兄は母に聞いたんです。母は兄は自宅前に置き去りにされていたと答えました。それで母は陽子さんに連絡したんです」
陽子とは僕の母の名前だ。
「兄が言ったんです。あの人は僕の兄弟だって。だから母は連絡したんです」
優香は申し訳なさそうに言う。
「電話がかかってきたときは驚いたし、信じられなかった。光に同姓同名に兄弟がいるなんて簡単には信じられなかった。でも光くんに出会って、ああこの子は光の兄弟だって思ったわ。感覚的にそれがわかってしまったの」
「・・・どうして僕に双子の兄弟がいることを黙っていたの?」
「光くんに言わないでほしいと言われたの。僕の存在を知らないほうがいい。知れば息子さんが不幸になる気がするんです。だから言わないでほしい。そう言われたの。真剣な顔でね」
「兄はたぶん自分が将来病気になることを予感していたんだと思います」優香は言う。「それで光くんに迷惑をかけてしまう。だから知らないほうがいいって言ったんだと思います」
「そうかもしれないわね」
そんな未来予知みたいな能力があるわけないと否定できない。いくつもの非現実な経験をしてきた僕には否定できない。
「お兄ちゃんは私に絶対に光くんに連絡してはいけないって言ったんです。でも私はお兄ちゃんを助けたかった。光くんならお兄ちゃんを絶対助けられると思った。だから光くんに会いにきたんです。すいません。迷惑かけて」
「家族なら当然のことよ。私だって光が病気になったら優香ちゃんと同じ行動をすると思うわ」
「・・・」
優香が泣きそうな顔になる。
「光。どうするか決めるのはあなたよ。できるなら光くんを助けてあげてほしい。でも私はそれを強制しない。私は光が正しい道を選べると信じているからね」
「・・・僕には正しい道を選ぶ力なんてないよ。ドナーになることが正しいかもわからない」
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母と優香に言いたかった。双子間の骨髄移植でも失敗することがあるという事実を。でもその事実を言うことが正しいのかどうかもわからない。僕には正しい道を選ぶ力なんてないと改めて思った。
「少し考えさせてくれないか?」
僕は疲れていた。何も考えたくないと思うほどに。
「わかったわ」
僕は部屋に行く。ベットに仰向けになる。すごく疲れている。眠りたいと思う。でも神経が高ぶっていて眠れそうにない。いろんな情報が頭の中を飛び交っている感じがして落ち着かない。何もする気がしない。なのに何かしなければ!という焦りを感じる。
そのとき、スマホが鳴った。画面を見る。里菜からだった。
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