オカルトアワー~都市伝説怪奇譚~

ユーカン

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第八話「ピコピコアワー~都市伝説遊戯譚~」

8-2.

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 都市伝説の気配なんて言っても、さっきの二つは眉唾物の嘘テクニックみたいなものだ。それと同じものがオカルティックな感性で見つかるとも思えないが……。
「ここっていっぱいゲームがあるね。七生クンはこういうのってやったことあるの?」
「ゲームセンターには時々来るけど……、ここにあるのは僕たちが生まれる前に稼働し始めたゲームばっかりみたいだな。さすがにやったことないなあ」
「ふーん」
 どれもこれも二十年から三十年ほど前のゲームのようだ。今に続くシリーズの最初期の物もあるが、ほとんどは『レトロゲーム図鑑』みたいなものでしか見たことがないようなゲームばかり。
 駆人としてはレトロゲームには少し興味があるので、画面を眺めて歩く。こういったゲームにはスコアアタックの要素があるのが通例で、誰も遊んでいないとき、デモ画面の後にスコアランキングが流れる。
 いくつかのゲームを眺めてあることに気づいた。一位のプレイヤーの名前がどれも同じなのだ。スコアがきっちりした数字ではないから出荷状態のランキングではないのだろう。それに、違うメーカーのゲームでも、やはりその名前が一番にある。違う人が同じ名前を使ってランキングに登録していたのだろうか。それとも、同じ人が全てのゲームで好成績を残している?
 少々腑に落ちなさを感じて、考え込みながら歩いていると、栞が明るい声をあげたのでそちらに顔をあげる。
「あ、七生クン。アレやろうよ」
 栞が指さしたのは、プリントシール機だ。しかし、周りにあるゲーム筐体と同じく色あせて古いものに見える。こちらも最初に世に出たのは二十年以上前、その時代の物のようだ。
「入口の方に最新式のがあったでしょ。あっちの方がキレイに映るんじゃない」
「え~。でもこんな古いの見たことないし、記念に取ってみたいな」
 半ば強引に押し切られ、その機械の前に並んで立つ。
 最近の機械とは違い、完全にボックスになっていないどころか、軽い仕切りすらない。画面は小さく、その前にいくつかのボタンが並んでいる。
「え~とここにお金を入れて……。あ、もう撮るんだ。笑って笑って。はい、チーズ」
「チーズ」
 パシャリ。
「あとは……、フレームを選べるんだ。ハートにしちゃお」
 いくつか操作をすると、画面に印刷中の文字。しばらくすると、取り出し口に撮影された写真がいくつも並んだものが出てくる。
「うわあ。古いからどうかと思ったけど、結構よく撮れてる……、あれ?……、キャッ!」
 ニコニコとプリントされた写真を眺めていた栞が、突然その写真を投げ出す。
「おっと。どうしたの、急に」
 地面に落ちる前にサッとつかむ。栞の顔は青ざめきり、小刻みに体を震わせている。
「さ、最後の方……」
「最後?」
 駆人は手に持った写真を眺める。なるほど確かに古いにしてはよく撮れてる。だんだんと目線を上から下にずらしていく。そして最後の方、二列に並んだ写真の右下に目を向けると、なにやら写真の背景が完全に黒くなっており、人型にも見える白い影が写っている。
「なななななななおクン。それって、おば、おばけ……」
「なが多いよ。……。機械が機械だし、ちゃんとメンテナンスが行き届いてなかったのかもしれない。なにかの不具合でそうなったのが、たまたま人の形に見えるだけだよ、きっと」
「そ、そうかな」
「うん。そこだけ切り離せばいいんじゃない。まあ、気になるならこれは捨てて、それこそ最新の機械で撮り直そう」
「そう、かな。うん」
 その時、真紀奈が二人を呼ぶ声が店の中に響いた。問題の場面までたどり着いたのだろうか。栞が軽く返事をする。意識がそちらに向いて、もう気分も回復しているようで、軽い足取りで歩きだす。
 駆人はまだ難しい顔で写真を見つめている。もう一度呼ばれたところで、その写真をポケットにしまって、先ほどの場所に向かった。

 先ほどと同じ『カイキタンZ』の前に真紀奈は座っている。
「やあやあお二人さん。この面をクリアしたら、噂の26週目ですよ」
 真紀奈の動かすキャラクターが、単調な動きでボスキャラクターを叩きのめす。すると画面が切り替わり、主人公とヒロインが抱き合って『周回』終了だ。特に余韻もないまま、次の周回に移る。
「26週目スタートです~」
 少しキャラクターを動かすと、画面の端から敵が押し寄せる。都市伝説の通りならグラフィックがヒロインの物になっているはずだが……。
「さっきまでと変わらないね」
「そのようですね~。やっぱりこれもでたらめってことですか」
 特に落胆する様子もなく、操作をやめてミスになったゲームを放り出し、立ち上がる。
「さてさて~。次はどれで遊びましょうか」
「もしかして真紀奈ちゃん、サボってるだけなんじゃあ」
「ギクリ。いやいやいやいや。これもちゃんとパトロールの一環ですよ!」
 あたふたと手を振りながら否定する。
 駆人はそんな二人から離れ、一台のゲーム筐体の前に座った。
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