オカルトアワー~都市伝説怪奇譚~

ユーカン

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第八話「ピコピコアワー~都市伝説遊戯譚~」

8-3.

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「……。これやってみようかな」
 駆人が選んだゲームは『スクリームファイター2』。対戦型格闘ゲームの元祖ともいえるゲームだ。現在にも最新作が出続けている大人気シリーズの二作目。出た当初にはあちらこちらで行列ができるほどの作品だった。
「それですか?人気の作品ですから何かしら都市伝説はありそうですけど」
「……」
 レバーを握る駆人の目は、先ほどまでとはまるで違い真剣なものになっている。
 アーケードモードは、コンピューター操作の相手と戦い、勝ちぬくモードだ。駆人が操るのは道着のキャラクター。パンチ、キック、必殺技を次々くりだし、危なげなく勝ち進む。
「へ~。なかなかお上手ですねえ。やったことあるんですか?」
「ああ。家庭用に移植されたのをね……。む!」
 戦っている最中、突如画面が暗転し、乱入者が入ってきたことを示すメッセージが現れる。
「乱入者?」
 格闘ゲームにはあまり詳しくない栞が首をかしげる。
「乱入者ってのは、他の同じゲームを遊んでいるプレイヤーさんと対戦できる機能ですね」
「へ~。インターネットで?」
「いやいや~。このゲームが稼働し始めたのは二十年以上前ですからそんなものは……。あっ!」
 そこまで言って気づく。今こそネット回線で世界中の人とさえ遊ぶことができるが、昔のゲームなら当然遊べるのは同じ店のつながっている筐体くらいだ。しかし、この寂れたレトロゲームコーナーに今いるのは三人だけ。乱入してくるプレイヤーなど存在しない。
 不穏な空気が立ち込める。つばを飲み込む音が、妙に響いて聞こえる。
「とりあえず戦うぞ」
 ラウンド1の開始を告げるボイスが流れる。相手のキャラクターは、駆人が操るキャラクターと同じだ。駆人は巧みなレバーさばきで、必殺技の飛び道具を交えつつ、堅実に攻めたてる。しかし相手も相手で、的確に攻撃をさばきながら、タイミングを見計らって確実に攻撃を仕掛ける。
 一進一退に見える攻防。しかし、駆人が一つの飛び道具の防御をミスすると、一気に形成は動いた。攻撃を受けてのけぞっている駆人のキャラクターに、相手はパンチやキックを連続できめる。そして、そのまま駆人はなすすべなく体力を削られ、ラウンドを取られてしまった。
 そのままラウンド2に移るも、やはり相手プレイヤーの攻勢は緩まず、一気に押し込まれ、遂には敗北してしまった。
「つ、強い」
 この対戦相手はただものではない。駆人も少々自信はあったのだが、まるで通用しなかった。
 敗北にうなだれていると、ゲームの画面にノイズが走る。そして、画面に人間の腕のようなものが表示されたと思った次の瞬間、その腕が画面から取り出して駆人の体をつかんだ!
「うわ!……、ってこの展開前もあったような……」
 駆人をつかんだ腕は、駆人の体ごとまた画面の中に引っ込み、連れ去ってしまった。
「ちょっと!七生クン!?」
 筐体の画面は腕が消えると共に元のゲームのタイトル画面に戻ってしまった。
「ど、どうなったの?どこに行ったの!?」
「今確かにゲームの画面に引っ張り込まれたように見えましたが……。あ!」
 駆人が消えた『スクリームファイター2』の画面が暗転し、文字が浮かんでいる。
【ここにはなにかかいきそんざいがいる。まけるとひっぱりこまれるっぽいので、うまいひとをよういしてつれてきてください。】
 画面に表示されきると、少しの間をおいて、元のデモ画面に戻ってしまった。
「今のって七生クン?」
「そのようですねえ。カルトさんは以前の事件で都市伝説に携帯電話の中に引っ張り込まれた際に、同じようにメッセージを外に送ったらしいですよ。大した根性ですねえ」
 真紀奈はうんうんと感心するようにうなずいている。
「ちょっと!七生クンがお化けに連れ去られちゃったんだよ!?どうにかしないと!」
「あわてなさんな~。負けたら連れ去られるなら、逆に勝てば引っ張り返せるということです!マキナ、こう見えてゲーム上手いんですよ!」
 確かに先ほど『カイキタンZ』を難なく周回している。それにロボットならゲームも得意……、なのだろうか。
「そうですねえ。じゃあマキナが幽霊さんに挑戦するゲームは……。はい、これにしましょう」
 真紀奈が選んだゲームは、落ち物パズルゲーム『くねくね痛(つう)』。こちらもシリーズ作品がずっと続く人気タイトルの初期作品だ。くねくねとしたブロックを積み上げ、法則に則って消す。単純かつ工夫のし甲斐があるシステムはのちのパズルゲームに大きな影響を与えた。
「さあ、お化けさん。勝負ですよ」
 硬貨を入れてアーケードモードをプレイする。すると先ほどよりも早いタイミングで乱入者の表示が現れた。
 このゲームは落ち物パズルだが、対戦ができる。ブロックを消すと、同時に遊ぶ相手の妨害ができる。たくさんのブロックを一度に消せば、その分の妨害ができるので、それで相手をゲームオーバーにすれば、自分の勝利だ。
「さ、始めますよ」
 ゲームが始まると、両者は落ちてくるブロックをあえて消さないように高く積み上げる。このゲームは画面いっぱいにブロックが積み上がり、それ以上ブロックの出る猶予がなくなれば負けになる。
「マキナちゃん。これ、大丈夫なの。いっぱいいっぱいに見えるけど」
「ふふふ~。マキナのスーパー演算能力をもってすれば、すべての選択肢から最高の形をくみ上げることができるのです!くらえ!」
 ギリギリまで積みあがったブロックの一端に新たなブロックを置くと、法則に従って次々にブロックが消えてゆく。画面上のほとんどのブロックが消えれば、相手のプレイヤーの画面の上部には、大量の妨害が行われることを示すサインがついた。
 しかし、相手もさるもので、同等の攻撃をし返す。だが……。
「あれ?マキナちゃんの方に妨害のマークが……」
 お互いに妨害しあうと、その数を比べ、差の分が下回っている方に降りかかる。
「!相手の方が上回っている……!?」
 その後も妨害の応酬を繰り広げる。しかし、ほんの少しだが、相手の方が上回っている。回数を重ねるうちにその差はだんだんと開いていく。
「ま、まずいですね。こうなったら!」
 真紀奈の体が突然光り輝く。更には体の各所から水蒸気が噴き出した。
「マキナ・マキシマムクロックモード!演算力を限界まで引き上げます!」
 真紀奈の手元の速さがグンとあがる。それと同時に少しだが、ゲームの中でも相手の妨害を押し返し始めた。
「すごい!これなら何とか勝てるかも」
「うおおおおおおおおおお!!!」
 ブロックを積み、消し。妨害が来ては、返し。攻防は止まらない。しかし。
「あ」
 急に真紀奈が動きを止める。力を失ったようにゲーム筐体に倒れ掛かってしまった。
「真紀奈ちゃん!大丈夫!?……、って、熱い!?」
 抱きかかえようとして、あまりの熱さに手を放す。
「熱の許容量の限界に達してしまいました……。すみません。シオリさん。後を、頼み……、ます……」
 キュウウ、と回転が止まるような音と共に、真紀奈の目の光が消える。そして、プレイヤーを失ったゲームは、相手の妨害によって画面を埋め尽くされ、敗北の表示がなされている。
 敗北したプレイヤーの末路は先ほどと同じだ。ゲームの画面から伸びた腕が真紀奈の体をつかみ取り、消える。
 栞は、一人残され立ち尽くす。後を頼むと言われても、この店にある中に得意だと言えるゲームはない。真紀奈の所属する警察の怪奇現象対策課に連絡すれば何とかなるだろうか。いや、あの真紀奈でも勝てなかった相手に勝てる人はそうそういないはずだ。そんな人を探している間、あの二人が無事だという保証はない。何とかできないだろうか、もう一度店の中を見渡す。
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