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第八話「ピコピコアワー~都市伝説遊戯譚~」
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あちこち歩いてみたものの、やはり知っているゲームすら、見つからない。どうしたものかと思っていると、端っこにおいてあるゲームに目がついた。画面にはスコアランキングが流れている。そのランキングの一位の名前は、例のあの名前だ。これなら、このゲームなら何とかなるかもしれない。
栞は、そのゲーム筐体の前に立つ。
ゲームの名は、『ノック・イング・ドア』。パンチングマシーンだ。立てられた的を思いきり殴ると、その強さが数値で表示される。体感型を越えた実践型ゲーム。
このゲームには対戦モードが備えられており、交互にプレイすることで、その強さを競い合う。
硬貨を入れて、その対戦モードを選択する。まずはプレイヤー1、栞の番だ。
画面にはドアの絵が表示されていて、さらにその上に的を殴るように指示が出されている。それぞれ二回のチャレンジで、大きな数値を出した方の勝ちだ。
栞は備え付けのグローブを右手にはめ、思い切り腕を引き、足を踏ん張って思いきり殴った。
ドゴオ!!!!
かなりの勢いで的が倒れる。ゲーム画面では並べられたドアが何枚も壊れることで、その強力さを表す仕組みのようだ。
表示された数値は『90』。このゲーム内では相当上位のはずだ。
続いて、プレイヤー2の番だと表示される。栞はグローブを外し、元の場所に戻すと、そのグローブがひとりでに宙に浮き、先ほど栞がしたように、大きく引いてから、的に思いきりぶつかった。
バキャ!!!!!
表示された数値は『105』。やはり、この店にあるゲームをジャンル問わず、全て極めているのだろうか。
「やっぱり本気をださなくちゃ駄目か」
栞は、羽織っていた上着をから袖を外す。脱ぎ捨てられ上着は、ドサリと重苦しい音をたてて床に落ちた。
「特注の50キロの上着。これを外したからには、もう手加減はできないよ」
グローブを手にはめ、機械の前に立つ。
「コオオオオオォォォォ……」
特殊な呼吸法で、丹田に気を溜める。そのままに腰をひねり、腕を体の後ろに大きく引く。さらに足を浮かせたところで、一瞬体の動きを止める。
「でやああああああああああああああ!!!!!」
足を床が抜けんばかりに力強く踏み込み、体のすべての力をこめた拳で思い切り的を突く!
ドッビシャアアアア!!!!!!!!!!!
拳が直撃した的が倒れたのが見えた後、一瞬遅れてパンチの音が衝撃波となって辺りを突き抜けた!
表示された数値は『300』!筐体に書かれている説明文を見る限り、このゲームのMAXの数値は150のはずなのだが。
栞はグローブを外し、床の上着を、軽くほこりを払ってから羽織りなおした。
「ふう。次はあなたの番だよ」
謎のプレイヤーに次の挑戦を促すが、一向に次のパンチを放たない。それどころか、どこからか嗚咽が聞こえてくる。
「ちょっと、早くしてよ」
ドスの効いた低い声で促す。というかほとんど脅す。またもグローブがひとりでに動くが、明らかにおびえている。何とかグローブは的に向かって動くが、明らかに腰が入っていない。
ペチン。
表示された数値は『20』。プレイヤーを小ばかにするようなイラストが画面に表示されている。
「さ、これで私の勝ちだね」
ゲームの画面にはプレイヤー1の勝利の文字。敗北の対価が連れ去られることなら。勝利の対価としてそれを返してもらうのは必然だ。
先ほどの『くねくね痛』のゲーム筐体から、人が飛び出してきた。しかし、帰ってきたのは真紀奈だけ。
「……。もう一勝負する?」
その言葉を言い切るや否や、『スクリームファイター2』の方から駆人が飛び出す。
「いてて。あれ?綾香さんが勝ったの?」
「うん。パンチングマシーンでね。大丈夫?怪我とかない?」
「大丈夫。あのゲームチャンプも実際に体を動かすのは苦手だったってことか」
「……。そうかもね。あ、真紀奈ちゃんも大丈夫?」
真紀奈は飛び出した位置のまま、体が固まっている。
「え……。ああ!大丈夫です!ピンピン!」
すぐに立ち上がるも、何か大げさに慌てている。
「そう、よかった。じゃあさっさとこんなところは退散しようか」
「そそそ、そうですね!みんな助かったことですし……」
真紀奈は見てしまった。パンチングマシーンに表示されるランキングを。
【一位 S.A 300】
三人は同ゲームセンター内の休憩スペースのベンチに座って休んでいた。自動販売機のアイスクリームを食べながら、今回の事件について話し合う。
「先ほど昔からここを知っている常連さんに話を聞いたところ、なんでもあのアーケードゲームが並んでいたところは、何年も前に改装でなくなっていたそうなんです」
真紀奈の言う通り、あのレトロゲームコーナーは、あの後外に出ると、何もない壁になってしまった。いわば、『ゲームセンターの幽霊』だったのだろう。
「それで、さらにその人から聞いた情報なんですが、この辺りにはとってもゲームが上手い人がいたんですって。でも、その人はゲームに熱中するあまり、長時間飲まず食わずでやったものだから、そのまま死んでしまった。という都市伝説があったそうなんですねえ」
「それがあの幽霊ゲーマーって訳か」
「はい。なんだかんだで寂しかったのかもしれませんねえ。それで挑戦者を引っ張り込むような真似をしたのかも」
「ま、それも綾香さんが機転でやっつけてくれたから、もう大丈夫ってことだよね」
「え!あああ、それはもう」
答える真紀奈の表情は、明らかに平常ではない。
「真紀奈ちゃん、どうしたの?」
笑顔の奥にプレッシャーを感じる。
「あは、あはは。とにかく、お二人とも都市伝説の検挙に協力していただき、ありがとうございます!」
ごまかすように、ビシリとポーズを決める。
「どういたしまして。それじゃあ記念に、三人で写真撮ろうよ。今度は最新式ので」
「いいですね~。早速撮りましょう!」
真紀奈は食べていたアイスのゴミを遠く離れたゴミ箱に見事投げ入れると、ぴょこぴょこと跳ねながら栞と共にプリントシール機のコーナーへ向かっていった。
そんな二人を眺めながら、駆人はポケットにしまい込んでいた写真を取り出す。
「カルトさ~ん!早くしないと二人で撮っちゃいますよ~!」
「はーい。すぐ行くよ」
謎の影が現れていた右下の写真には、それと変わって泣き顔の男がくっきりと浮かび上がっていた。
栞は、そのゲーム筐体の前に立つ。
ゲームの名は、『ノック・イング・ドア』。パンチングマシーンだ。立てられた的を思いきり殴ると、その強さが数値で表示される。体感型を越えた実践型ゲーム。
このゲームには対戦モードが備えられており、交互にプレイすることで、その強さを競い合う。
硬貨を入れて、その対戦モードを選択する。まずはプレイヤー1、栞の番だ。
画面にはドアの絵が表示されていて、さらにその上に的を殴るように指示が出されている。それぞれ二回のチャレンジで、大きな数値を出した方の勝ちだ。
栞は備え付けのグローブを右手にはめ、思い切り腕を引き、足を踏ん張って思いきり殴った。
ドゴオ!!!!
かなりの勢いで的が倒れる。ゲーム画面では並べられたドアが何枚も壊れることで、その強力さを表す仕組みのようだ。
表示された数値は『90』。このゲーム内では相当上位のはずだ。
続いて、プレイヤー2の番だと表示される。栞はグローブを外し、元の場所に戻すと、そのグローブがひとりでに宙に浮き、先ほど栞がしたように、大きく引いてから、的に思いきりぶつかった。
バキャ!!!!!
表示された数値は『105』。やはり、この店にあるゲームをジャンル問わず、全て極めているのだろうか。
「やっぱり本気をださなくちゃ駄目か」
栞は、羽織っていた上着をから袖を外す。脱ぎ捨てられ上着は、ドサリと重苦しい音をたてて床に落ちた。
「特注の50キロの上着。これを外したからには、もう手加減はできないよ」
グローブを手にはめ、機械の前に立つ。
「コオオオオオォォォォ……」
特殊な呼吸法で、丹田に気を溜める。そのままに腰をひねり、腕を体の後ろに大きく引く。さらに足を浮かせたところで、一瞬体の動きを止める。
「でやああああああああああああああ!!!!!」
足を床が抜けんばかりに力強く踏み込み、体のすべての力をこめた拳で思い切り的を突く!
ドッビシャアアアア!!!!!!!!!!!
拳が直撃した的が倒れたのが見えた後、一瞬遅れてパンチの音が衝撃波となって辺りを突き抜けた!
表示された数値は『300』!筐体に書かれている説明文を見る限り、このゲームのMAXの数値は150のはずなのだが。
栞はグローブを外し、床の上着を、軽くほこりを払ってから羽織りなおした。
「ふう。次はあなたの番だよ」
謎のプレイヤーに次の挑戦を促すが、一向に次のパンチを放たない。それどころか、どこからか嗚咽が聞こえてくる。
「ちょっと、早くしてよ」
ドスの効いた低い声で促す。というかほとんど脅す。またもグローブがひとりでに動くが、明らかにおびえている。何とかグローブは的に向かって動くが、明らかに腰が入っていない。
ペチン。
表示された数値は『20』。プレイヤーを小ばかにするようなイラストが画面に表示されている。
「さ、これで私の勝ちだね」
ゲームの画面にはプレイヤー1の勝利の文字。敗北の対価が連れ去られることなら。勝利の対価としてそれを返してもらうのは必然だ。
先ほどの『くねくね痛』のゲーム筐体から、人が飛び出してきた。しかし、帰ってきたのは真紀奈だけ。
「……。もう一勝負する?」
その言葉を言い切るや否や、『スクリームファイター2』の方から駆人が飛び出す。
「いてて。あれ?綾香さんが勝ったの?」
「うん。パンチングマシーンでね。大丈夫?怪我とかない?」
「大丈夫。あのゲームチャンプも実際に体を動かすのは苦手だったってことか」
「……。そうかもね。あ、真紀奈ちゃんも大丈夫?」
真紀奈は飛び出した位置のまま、体が固まっている。
「え……。ああ!大丈夫です!ピンピン!」
すぐに立ち上がるも、何か大げさに慌てている。
「そう、よかった。じゃあさっさとこんなところは退散しようか」
「そそそ、そうですね!みんな助かったことですし……」
真紀奈は見てしまった。パンチングマシーンに表示されるランキングを。
【一位 S.A 300】
三人は同ゲームセンター内の休憩スペースのベンチに座って休んでいた。自動販売機のアイスクリームを食べながら、今回の事件について話し合う。
「先ほど昔からここを知っている常連さんに話を聞いたところ、なんでもあのアーケードゲームが並んでいたところは、何年も前に改装でなくなっていたそうなんです」
真紀奈の言う通り、あのレトロゲームコーナーは、あの後外に出ると、何もない壁になってしまった。いわば、『ゲームセンターの幽霊』だったのだろう。
「それで、さらにその人から聞いた情報なんですが、この辺りにはとってもゲームが上手い人がいたんですって。でも、その人はゲームに熱中するあまり、長時間飲まず食わずでやったものだから、そのまま死んでしまった。という都市伝説があったそうなんですねえ」
「それがあの幽霊ゲーマーって訳か」
「はい。なんだかんだで寂しかったのかもしれませんねえ。それで挑戦者を引っ張り込むような真似をしたのかも」
「ま、それも綾香さんが機転でやっつけてくれたから、もう大丈夫ってことだよね」
「え!あああ、それはもう」
答える真紀奈の表情は、明らかに平常ではない。
「真紀奈ちゃん、どうしたの?」
笑顔の奥にプレッシャーを感じる。
「あは、あはは。とにかく、お二人とも都市伝説の検挙に協力していただき、ありがとうございます!」
ごまかすように、ビシリとポーズを決める。
「どういたしまして。それじゃあ記念に、三人で写真撮ろうよ。今度は最新式ので」
「いいですね~。早速撮りましょう!」
真紀奈は食べていたアイスのゴミを遠く離れたゴミ箱に見事投げ入れると、ぴょこぴょこと跳ねながら栞と共にプリントシール機のコーナーへ向かっていった。
そんな二人を眺めながら、駆人はポケットにしまい込んでいた写真を取り出す。
「カルトさ~ん!早くしないと二人で撮っちゃいますよ~!」
「はーい。すぐ行くよ」
謎の影が現れていた右下の写真には、それと変わって泣き顔の男がくっきりと浮かび上がっていた。
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