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第九話「ミッシングアワー~都市伝説妖怪譚~」
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「むむむ、こっちか?」
二股に分かれているイヤホンは、複雑に絡み合い、どこがどうなってるかもわからない。
「姉さん。そっちじゃないですか?」
ほどける兆しすら見えてこない。よほど頑丈に結ばれているようだ。
しばらく奮闘していると、天子は窮屈さを覚えた。横に顔を向ければ、空子の顔がすぐそこだ。
「おい空子。ちょっと近寄りすぎじゃないか」
「姉さんこそ……。もうちょっと離れてください」
「そ、そうか?……。む?体が動かん……」
体に力を入れても、ほとんど体を動かすことができない。それどころか締め付けられるような感覚が強くなる。
「ああ!姉さん、イヤホンのコードが!」
「え?」
天子の手の上で絡まっているコードの端が、いつのまにか二人の体に巻き付いて、締め付けている。
「こ、これは『妖怪イヤホンコード絡ませ』じゃ!ほどくことに集中しているうちに不意を突かれたか!」
「そ、そんなことが。とにかく、早くほどいてください!」
天子はまだ何とか動く手を動かして、コードの絡みを取ろうと試みる。しかし、ほどこうとすればするほど、コードは複雑に絡みつき、動こうとすればするほど、コードの締め付けは増す。
ついには二人の体は肩から足の先まで、背中合わせにグルグル巻きになってしまった。最初のコードよりも、二人に巻き付いてる分は明らかに長く見える。これには何か怪奇現象が関わっているというのは確かだろう。
「う、動けん」
「どうするんですか!このままではどうにもなりませんよ!」
「むぐぐぐ……。あ!あそこにわしのケータイがある!あそこまで行って何とか助けを呼ぼう」
「……。わかりました」
その天子の携帯電話は、部屋の二人が今いる場所のちょうど反対側辺りにある。二人は全く手足を動かせない状況なので、転がって移動するしかない。
まずは空子が天子の上を乗り越える。
「ぐえ、重いぞ!さっさと向こう側に動け!」
「失礼な人ですね」
何とか乗り越え終わって、一歩携帯電話に近づく。次は同じように天子が乗り越える。
「ぎゅ。つ、潰れる……。は、はやく……」
「どっちが失礼じゃ!全く……」
また一歩近づく。それをなんども繰り返し、やっと携帯電話のもとにたどり着いた。
「やっとたどり着きましたね……。ん?この状態でどうやって電話をかけるんですか?」
手が全く動かせないのだから、電話の操作のしようがない。
「あ!い、いや。音声入力で……」
なんども携帯電話に向かって呼びかけるが、一向に反応を示さない。
「まさか電源が切れてるんじゃ」
「しまった!な、なんとかスイッチを……」
もぞもぞと体を動かすたびに、コードの締め付けが増してしまう。
「ぐええ。苦しくなってきたぞ……」
「それに暑いです……」
暑い部屋でここまで動くために運動したせいで、もはや二人は汗だく。その状態でくっついてすらいるのだから、少し意識がもうろうとして来ている。
「ま、まずいぞ。このままでは……」
最悪の事態すら覚悟したその時、ガララと玄関の戸が開く音がした。
「天子様~。妖怪が出たって本当ですか~?……、確かに何かおかしな気配がしますね」
先ほど連絡した駆人がやっと到着した。
「お、おい。空子、カルトが助けに来たぞ。まだ死ぬなよ」
「死にはしませんけど……。つらいです」
やっと希望の光が見えてきたが、空子の顔色は悪くなる一方だ。しかし、駆人はまだ玄関から動いていないようで、そこから声がする。
「あれ?買い物の荷物が置きっぱなしになってる。なにか急いでたのかな……」
駆人の足音は、廊下を通り抜け、居間ではなく台所の方へ行ってしまった。
「カ、カルト……。こっちじゃ……。ぐえ」
大声を出して駆人の名を呼ぼうとするが、胸が締め付けられているせいで思うように声が出せない。もしも、家に誰もいないと勘違いしてそのまま帰られたらどうなるか分かったものではない。動かない体で何とかして、バタバタと音を出すくらいしかできない。
そのあと、台所から何度か冷蔵庫を開け閉めする音がした後、台所とつながる戸を開け、駆人が顔をのぞかせた。
「こちらにいらしたんですか……。って、なんて格好してるんですか。そういうアレですか」
駆人は黒いひもでがんじがらめになっている二人を見て少し引いている。確かに異様な光景なのは間違いないだろう。
「ゆうとる場合か!さっき連絡した妖怪の仕業じゃ!お主、これをほどけるか」
「ええ……。わ、空子さん顔色悪いですね。大丈夫ですか」
「ああ、ちょっと暑さに来たみたいでな。さっさと助けてくれ」
「はい。こういうのはコツがあるんですよ……」
駆人は二人のそばに座り、コードの端を見つけると、言葉通りにすいすいとほどき始めた。的確にあっちに通し、こっちに通し。締め付けもだんだん緩んできた。
「よし、これで最後ですよ」
最後の一結びをほどくと、やっと二人は完全に開放された。
「おお!流石じゃな。助かったぞ。おい、空子。大丈夫か?」
「ええ、なんとか。駆人君ありがとうございます。ああ、もうベタベタ……」
「お二人が無事で何よりです。……、ところで……」
駆人が近くに置いていた何かを持ち上げる。
「この家ではこんなものを冷やしてるんですか?」
そう言って、二人に見せたのは、ずっと探していた黒い長方形の……。
「そうなんじゃ~。チャンネルを回すときに冷えてると気持ちがいい……。ってそれは!」
駆人が持ってきたのは『テレビのリモコン』!
「お主、それをどこで見つけた!」
「冷蔵庫ですよ。買い物の荷物を入れている時に気付きまして」
「そ、そんなところに」
答えを聞いて、天子は記憶を巡らす。そういえば、昼寝をする前に冷蔵庫にお茶を取りに行った。あの時にリモコンをもって行ってしまい、冷蔵庫に置き忘れてしまったのだろう。
「なんてことじゃ。本当に意外な所に隠れてるもんじゃな」
リモコンを見つけると同時に、この家を取り巻いていた不穏な空気が取り払われたようだ。やはり、リモコンの喪失がこの異変の原因だったのだろう。
「はあ。で、妖怪はもう大丈夫なんですか」
「もう大丈夫じゃ。一言で言えばお主にはリモコンを探してもらいたかったのじゃからな」
「……?お役に立てたのなら何よりですが」
来たばかりで何があったか分からない駆人は、ただただ腑に落ちない表情で、解放されて喜ぶ姉妹を眺めるばかりであった。
その後、もう夕食の時間だという姉妹の好意に甘えて、駆人は姉妹と共にちゃぶ台を囲む。さっき読んでいた雑誌に載っていた料理を、空子が腕によりをかけて作ってくれた。料理が美味しければ、話も弾む。
「で、ですね。イヤホンを鞄に入れるときは、ちゃんとケースにまとめて入れたり、バンドで束ねたりすれば絡むことは少なくなるはずです」
「なるほどなあ」
話題はもっぱら妖怪の倒し方……、いや、日常生活の豆知識だ。
「じゃあリモコンをなくしたらどうしたらいいんですか?」
「リモコンは……。そもそもなくさないように同じ場所に戻すとかしてほしいですが……、なくしたときはその日の行動を逆にたどってみたりすれば大体見つかりますよ」
「へー。今回の騒動は姉さんが原因なんですから、ちゃんと気を付けてくださいね」
釘を刺す空子に、天子はヘラヘラと笑いながら返事をする。
「大丈夫じゃって、またなくしたときもカルトが見つけてくれるじゃろ」
「ちょっと。ちゃんと反省しないと駄目ですよ!」
「ひええ。妖怪おこりんぼじゃ」
「誰が妖怪ですって!」
食事中だというのに二人はドタドタとちゃぶ台の周りでおいかけっこを始める。
ガッ!
「ああああああああ!!!」
何周かしたところで、前を走っていた天子がちゃぶ台に思いきり足の小指をぶつけた。
「あらあら。妖怪が一匹残ってましたね」
「痛いいいいいいいいい!!!」
そもそも二人は化け狐だから両方妖怪だろう。騒ぎの中でも食事をし続ける駆人に、その言葉を口に出す勇気はなかった。
二股に分かれているイヤホンは、複雑に絡み合い、どこがどうなってるかもわからない。
「姉さん。そっちじゃないですか?」
ほどける兆しすら見えてこない。よほど頑丈に結ばれているようだ。
しばらく奮闘していると、天子は窮屈さを覚えた。横に顔を向ければ、空子の顔がすぐそこだ。
「おい空子。ちょっと近寄りすぎじゃないか」
「姉さんこそ……。もうちょっと離れてください」
「そ、そうか?……。む?体が動かん……」
体に力を入れても、ほとんど体を動かすことができない。それどころか締め付けられるような感覚が強くなる。
「ああ!姉さん、イヤホンのコードが!」
「え?」
天子の手の上で絡まっているコードの端が、いつのまにか二人の体に巻き付いて、締め付けている。
「こ、これは『妖怪イヤホンコード絡ませ』じゃ!ほどくことに集中しているうちに不意を突かれたか!」
「そ、そんなことが。とにかく、早くほどいてください!」
天子はまだ何とか動く手を動かして、コードの絡みを取ろうと試みる。しかし、ほどこうとすればするほど、コードは複雑に絡みつき、動こうとすればするほど、コードの締め付けは増す。
ついには二人の体は肩から足の先まで、背中合わせにグルグル巻きになってしまった。最初のコードよりも、二人に巻き付いてる分は明らかに長く見える。これには何か怪奇現象が関わっているというのは確かだろう。
「う、動けん」
「どうするんですか!このままではどうにもなりませんよ!」
「むぐぐぐ……。あ!あそこにわしのケータイがある!あそこまで行って何とか助けを呼ぼう」
「……。わかりました」
その天子の携帯電話は、部屋の二人が今いる場所のちょうど反対側辺りにある。二人は全く手足を動かせない状況なので、転がって移動するしかない。
まずは空子が天子の上を乗り越える。
「ぐえ、重いぞ!さっさと向こう側に動け!」
「失礼な人ですね」
何とか乗り越え終わって、一歩携帯電話に近づく。次は同じように天子が乗り越える。
「ぎゅ。つ、潰れる……。は、はやく……」
「どっちが失礼じゃ!全く……」
また一歩近づく。それをなんども繰り返し、やっと携帯電話のもとにたどり着いた。
「やっとたどり着きましたね……。ん?この状態でどうやって電話をかけるんですか?」
手が全く動かせないのだから、電話の操作のしようがない。
「あ!い、いや。音声入力で……」
なんども携帯電話に向かって呼びかけるが、一向に反応を示さない。
「まさか電源が切れてるんじゃ」
「しまった!な、なんとかスイッチを……」
もぞもぞと体を動かすたびに、コードの締め付けが増してしまう。
「ぐええ。苦しくなってきたぞ……」
「それに暑いです……」
暑い部屋でここまで動くために運動したせいで、もはや二人は汗だく。その状態でくっついてすらいるのだから、少し意識がもうろうとして来ている。
「ま、まずいぞ。このままでは……」
最悪の事態すら覚悟したその時、ガララと玄関の戸が開く音がした。
「天子様~。妖怪が出たって本当ですか~?……、確かに何かおかしな気配がしますね」
先ほど連絡した駆人がやっと到着した。
「お、おい。空子、カルトが助けに来たぞ。まだ死ぬなよ」
「死にはしませんけど……。つらいです」
やっと希望の光が見えてきたが、空子の顔色は悪くなる一方だ。しかし、駆人はまだ玄関から動いていないようで、そこから声がする。
「あれ?買い物の荷物が置きっぱなしになってる。なにか急いでたのかな……」
駆人の足音は、廊下を通り抜け、居間ではなく台所の方へ行ってしまった。
「カ、カルト……。こっちじゃ……。ぐえ」
大声を出して駆人の名を呼ぼうとするが、胸が締め付けられているせいで思うように声が出せない。もしも、家に誰もいないと勘違いしてそのまま帰られたらどうなるか分かったものではない。動かない体で何とかして、バタバタと音を出すくらいしかできない。
そのあと、台所から何度か冷蔵庫を開け閉めする音がした後、台所とつながる戸を開け、駆人が顔をのぞかせた。
「こちらにいらしたんですか……。って、なんて格好してるんですか。そういうアレですか」
駆人は黒いひもでがんじがらめになっている二人を見て少し引いている。確かに異様な光景なのは間違いないだろう。
「ゆうとる場合か!さっき連絡した妖怪の仕業じゃ!お主、これをほどけるか」
「ええ……。わ、空子さん顔色悪いですね。大丈夫ですか」
「ああ、ちょっと暑さに来たみたいでな。さっさと助けてくれ」
「はい。こういうのはコツがあるんですよ……」
駆人は二人のそばに座り、コードの端を見つけると、言葉通りにすいすいとほどき始めた。的確にあっちに通し、こっちに通し。締め付けもだんだん緩んできた。
「よし、これで最後ですよ」
最後の一結びをほどくと、やっと二人は完全に開放された。
「おお!流石じゃな。助かったぞ。おい、空子。大丈夫か?」
「ええ、なんとか。駆人君ありがとうございます。ああ、もうベタベタ……」
「お二人が無事で何よりです。……、ところで……」
駆人が近くに置いていた何かを持ち上げる。
「この家ではこんなものを冷やしてるんですか?」
そう言って、二人に見せたのは、ずっと探していた黒い長方形の……。
「そうなんじゃ~。チャンネルを回すときに冷えてると気持ちがいい……。ってそれは!」
駆人が持ってきたのは『テレビのリモコン』!
「お主、それをどこで見つけた!」
「冷蔵庫ですよ。買い物の荷物を入れている時に気付きまして」
「そ、そんなところに」
答えを聞いて、天子は記憶を巡らす。そういえば、昼寝をする前に冷蔵庫にお茶を取りに行った。あの時にリモコンをもって行ってしまい、冷蔵庫に置き忘れてしまったのだろう。
「なんてことじゃ。本当に意外な所に隠れてるもんじゃな」
リモコンを見つけると同時に、この家を取り巻いていた不穏な空気が取り払われたようだ。やはり、リモコンの喪失がこの異変の原因だったのだろう。
「はあ。で、妖怪はもう大丈夫なんですか」
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その後、もう夕食の時間だという姉妹の好意に甘えて、駆人は姉妹と共にちゃぶ台を囲む。さっき読んでいた雑誌に載っていた料理を、空子が腕によりをかけて作ってくれた。料理が美味しければ、話も弾む。
「で、ですね。イヤホンを鞄に入れるときは、ちゃんとケースにまとめて入れたり、バンドで束ねたりすれば絡むことは少なくなるはずです」
「なるほどなあ」
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「リモコンは……。そもそもなくさないように同じ場所に戻すとかしてほしいですが……、なくしたときはその日の行動を逆にたどってみたりすれば大体見つかりますよ」
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「ちょっと。ちゃんと反省しないと駄目ですよ!」
「ひええ。妖怪おこりんぼじゃ」
「誰が妖怪ですって!」
食事中だというのに二人はドタドタとちゃぶ台の周りでおいかけっこを始める。
ガッ!
「ああああああああ!!!」
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