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第十話「ビハインドアワー~都市伝説接近譚~」
10-2.
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話題はぽん吉たちが午前中追っていたという都市伝説の話に始まり、誠達が担当した怪奇現象犯罪の話、あるいはぽん吉の武勇伝、化け狐姉妹への陰口など話は盛り上がる。
「ところで~、コンビーフの缶の形がなんであんな形かと言いますとね……」
トゥルルル……。
真紀奈が話し始めたその時、電話の着信を示す音が響き渡る。四人が同時に自分の物を確認する。
「あ、俺だ」
その着信音は、果たしてぽん吉の携帯電話から響いていた。通話ボタンを押して通話を開始する。
「ん?非通知……。ちょっと失礼するぜ。もしもし」
「……ん。い……」
相手の音声にはノイズが混じり、うまく聞き取れない。
「電波が悪いのか。もしもーし」
プツッ。
結局何も聞こえないまま、通話は切れる。ぽん吉は訝し気に携帯電話を見つめて、ポケットにしまった。
「まあ、なんか重要な要件ならまたかけてくるだろ。で、真紀奈、コンビーフがなんだって?」
「ああ、ええと、どこまで話しましたっけ。そうそうコンビーフの缶の形……」
「っと、そろそろ戻らねえと時間がまずいな」
食べ終わった後もしばらくしゃべり続けていたが、誠が時計を見てそれなりに長い時間喋っていたことに気付く。思いのほか長いこと話し込んでいた。真紀奈のしゃべり好きもあるが、年の差はあっても案外気が合うのかもしれない。
「そうか、じゃあ俺たちも帰るか」
四人が立ち上がろうとした瞬間。
トゥルルル……。
またもぽん吉の携帯電話が着信音を鳴らした。
「俺か。また非通知だな。もしもし」
「私……さん。今、駅……の」
やはりノイズだらけ、しかし先ほどよりは少し声がはっきり聞こえる。
「おい、なんなんださっきから」
プツッ。
やはり相手から通話が切られる。
その音声を聞いていたのか、栞が不安そうに尋ねる。
「い、今のってなんか怪しくない?七生クンが前に携帯の都市伝説に連れ去られかけた、なんて話してたけど」
「俺達が解決した事件か。たしかあの時は電話の相手に質問をされて、それに答えると電話の中に引き込まれる、とかだったな」
駆人と天子が怪奇現象犯罪対策課の二人と共に解決した事件。都市伝説の名は『質問テレフォン』。しかしその都市伝説は天子の機転により解決、都市伝説は逮捕されている。
「ふむ。現状はなにもなさそうだが、気になるな」
ぽん吉は非通知の表示をにらみつつ、携帯電話をポケットに戻す。
「お二人は四葉町に帰るんですよね?」
「ああ。そのつもりだ」
「じゃあ署までは一緒の道ですから、とりあえずそこまでは一緒に行きましょう」
真紀奈の提案に従い、四人は途中まで共に行くことにした。駅前から入った時とは違い、四葉署方面に向かうなら公園を横切る方が近い。池のそばを通り、遊具が並んでいる所をぬけ、公園の反対側から道路に出る。そこから四葉署まではそれほど離れていない。
トゥルルル……。
ちょうど公園を出ようという時、三度ぽん吉の携帯電話が鳴り響く。
「またか。いよいよ怪しいな」
他の三人も、ぽん吉の携帯電話に顔を寄せ、耳を澄ます。
「あー。もしもし」
「……、メリーさ……。今、……駅のホームにいる……」
「おい、なんだってんだ。お前は誰……」
プツッ。
ぽん吉の問いかけもむなしく、通話は切れる。
「……。今、メリーさんって……」
顔を近づけていた栞が、その顔を青ざめさせてつぶやく。
「知っているのか、栞君」
「七生クンに聞いたことがある。『メリーさんの電話』という都市伝説を」
『メリーさんの電話』。メリーさんを名乗る人物から電話がかかってくるのだが、「私メリーさん、今○○にいるの」と、いったように名前を名乗りつつ、今いる場所を告げる。それが電話の回数を重ねるたびに段々電話を受けた人のいる場所に近づいていき……。
「最後には『私メリーさん、今あなたの後ろにいるの。』で終わる怪談都市伝説だね」
公園の出入り口の近くの花壇の縁に座りなおした一行。栞の話を三人は固唾を飲んで聞きいる。
「後ろにいて……、どうなるんだ」
電話がかかってきた当事者、ぽん吉はいつになく真剣な面持ちで尋ねる。
「話としてはそこで終わり。まあ都市伝説だからメリーさんに殺される、とか脅かされる、とかあるんだろうけど」
「脅かされる程度ですめばいいが……。殺されるとなったら大ごとだな。なにか対処法とかはないのか」
「そこまでは。私はあんまり都市伝説には詳しくないので」
トゥルルル……。
やはりぽん吉の携帯電話だ。おそるおそる通話ボタンを押す。
「……」
「私メリーさん。今、駅ビルの雑貨屋『カラフル』にいるの……」
プツッ。
「……。雑貨屋にいるんだとよ」
携帯電話をしまいながら、いくらか拍子のぬけた表情でぽん吉がつぶやく。
「雑貨屋『カラフル』。確かにさっきが駅のホームだから近づいてはいるけど」
「小物とか好きなんですかね~」
女性二人はその店を知っているようで、話を弾ませる。
「いや、いや。そんなことはどうでもいいんだよ。俺は生きるか死ぬかの瀬戸際なんだぜ」
「ふむ。じゃあ四葉署まで行くか?その後ろに出たところを多人数でとっ捕まえれば何とかなるかもしれん」
「最後まで待つのはちょっとこええな。超常的な力で殺されたりしたら、出現してからじゃ遅いかもしれないし」
トゥルルル……。
「またかよ。対策を考える暇もねえな」
「私メリーさん。今、駅ビルの服屋『ブロッサム』にいるの……」
プツッ。
「『ブロッサム』だって。私この前あそこでかわいい服を見たよ」
「ええ~。ほんとですか。今度一緒に見に行きましょう!」
またも女性陣はメリーさんチョイスのショッピングガイドに、都市伝説だということを忘れて楽しそうな声をあげる。
一方もはや死にそうな顔をしているのはぽん吉だ。
「ちくしょうあいつら他人事だと思って」
「とにかく対処法を考えよう。後ろにいる、で終わるなら壁を背にするのはどうだろうか」
「なるほど……。いや待てよ?それだとメリーさんが根負けするまで壁にはっついてなきゃいけなくねえか」
トゥルルル……。
「ところで~、コンビーフの缶の形がなんであんな形かと言いますとね……」
トゥルルル……。
真紀奈が話し始めたその時、電話の着信を示す音が響き渡る。四人が同時に自分の物を確認する。
「あ、俺だ」
その着信音は、果たしてぽん吉の携帯電話から響いていた。通話ボタンを押して通話を開始する。
「ん?非通知……。ちょっと失礼するぜ。もしもし」
「……ん。い……」
相手の音声にはノイズが混じり、うまく聞き取れない。
「電波が悪いのか。もしもーし」
プツッ。
結局何も聞こえないまま、通話は切れる。ぽん吉は訝し気に携帯電話を見つめて、ポケットにしまった。
「まあ、なんか重要な要件ならまたかけてくるだろ。で、真紀奈、コンビーフがなんだって?」
「ああ、ええと、どこまで話しましたっけ。そうそうコンビーフの缶の形……」
「っと、そろそろ戻らねえと時間がまずいな」
食べ終わった後もしばらくしゃべり続けていたが、誠が時計を見てそれなりに長い時間喋っていたことに気付く。思いのほか長いこと話し込んでいた。真紀奈のしゃべり好きもあるが、年の差はあっても案外気が合うのかもしれない。
「そうか、じゃあ俺たちも帰るか」
四人が立ち上がろうとした瞬間。
トゥルルル……。
またもぽん吉の携帯電話が着信音を鳴らした。
「俺か。また非通知だな。もしもし」
「私……さん。今、駅……の」
やはりノイズだらけ、しかし先ほどよりは少し声がはっきり聞こえる。
「おい、なんなんださっきから」
プツッ。
やはり相手から通話が切られる。
その音声を聞いていたのか、栞が不安そうに尋ねる。
「い、今のってなんか怪しくない?七生クンが前に携帯の都市伝説に連れ去られかけた、なんて話してたけど」
「俺達が解決した事件か。たしかあの時は電話の相手に質問をされて、それに答えると電話の中に引き込まれる、とかだったな」
駆人と天子が怪奇現象犯罪対策課の二人と共に解決した事件。都市伝説の名は『質問テレフォン』。しかしその都市伝説は天子の機転により解決、都市伝説は逮捕されている。
「ふむ。現状はなにもなさそうだが、気になるな」
ぽん吉は非通知の表示をにらみつつ、携帯電話をポケットに戻す。
「お二人は四葉町に帰るんですよね?」
「ああ。そのつもりだ」
「じゃあ署までは一緒の道ですから、とりあえずそこまでは一緒に行きましょう」
真紀奈の提案に従い、四人は途中まで共に行くことにした。駅前から入った時とは違い、四葉署方面に向かうなら公園を横切る方が近い。池のそばを通り、遊具が並んでいる所をぬけ、公園の反対側から道路に出る。そこから四葉署まではそれほど離れていない。
トゥルルル……。
ちょうど公園を出ようという時、三度ぽん吉の携帯電話が鳴り響く。
「またか。いよいよ怪しいな」
他の三人も、ぽん吉の携帯電話に顔を寄せ、耳を澄ます。
「あー。もしもし」
「……、メリーさ……。今、……駅のホームにいる……」
「おい、なんだってんだ。お前は誰……」
プツッ。
ぽん吉の問いかけもむなしく、通話は切れる。
「……。今、メリーさんって……」
顔を近づけていた栞が、その顔を青ざめさせてつぶやく。
「知っているのか、栞君」
「七生クンに聞いたことがある。『メリーさんの電話』という都市伝説を」
『メリーさんの電話』。メリーさんを名乗る人物から電話がかかってくるのだが、「私メリーさん、今○○にいるの」と、いったように名前を名乗りつつ、今いる場所を告げる。それが電話の回数を重ねるたびに段々電話を受けた人のいる場所に近づいていき……。
「最後には『私メリーさん、今あなたの後ろにいるの。』で終わる怪談都市伝説だね」
公園の出入り口の近くの花壇の縁に座りなおした一行。栞の話を三人は固唾を飲んで聞きいる。
「後ろにいて……、どうなるんだ」
電話がかかってきた当事者、ぽん吉はいつになく真剣な面持ちで尋ねる。
「話としてはそこで終わり。まあ都市伝説だからメリーさんに殺される、とか脅かされる、とかあるんだろうけど」
「脅かされる程度ですめばいいが……。殺されるとなったら大ごとだな。なにか対処法とかはないのか」
「そこまでは。私はあんまり都市伝説には詳しくないので」
トゥルルル……。
やはりぽん吉の携帯電話だ。おそるおそる通話ボタンを押す。
「……」
「私メリーさん。今、駅ビルの雑貨屋『カラフル』にいるの……」
プツッ。
「……。雑貨屋にいるんだとよ」
携帯電話をしまいながら、いくらか拍子のぬけた表情でぽん吉がつぶやく。
「雑貨屋『カラフル』。確かにさっきが駅のホームだから近づいてはいるけど」
「小物とか好きなんですかね~」
女性二人はその店を知っているようで、話を弾ませる。
「いや、いや。そんなことはどうでもいいんだよ。俺は生きるか死ぬかの瀬戸際なんだぜ」
「ふむ。じゃあ四葉署まで行くか?その後ろに出たところを多人数でとっ捕まえれば何とかなるかもしれん」
「最後まで待つのはちょっとこええな。超常的な力で殺されたりしたら、出現してからじゃ遅いかもしれないし」
トゥルルル……。
「またかよ。対策を考える暇もねえな」
「私メリーさん。今、駅ビルの服屋『ブロッサム』にいるの……」
プツッ。
「『ブロッサム』だって。私この前あそこでかわいい服を見たよ」
「ええ~。ほんとですか。今度一緒に見に行きましょう!」
またも女性陣はメリーさんチョイスのショッピングガイドに、都市伝説だということを忘れて楽しそうな声をあげる。
一方もはや死にそうな顔をしているのはぽん吉だ。
「ちくしょうあいつら他人事だと思って」
「とにかく対処法を考えよう。後ろにいる、で終わるなら壁を背にするのはどうだろうか」
「なるほど……。いや待てよ?それだとメリーさんが根負けするまで壁にはっついてなきゃいけなくねえか」
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