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第十話「ビハインドアワー~都市伝説接近譚~」
10-3.
しおりを挟む「私メリーさん。今、駅前のクレープ屋『ビバ・クレープ』にいるの……」
プツッ。
「マキナ食べたことありますよ!クリームたっぷりでおいしかったです!」
「そうなんだ!あ、この騒動が一段落したら一緒に行かない?」
「いいですね~」
メリーさんの趣味はこの二人とことごとく一致しているらしい。
「そもそも電話に出ないってのはどうだろうか」
「……。試してみるか」
トゥルルル……。トゥルルル……。
「私メリーさん。今、大通りのコンビニ「フォーリーブ」にいるの……」
プツッ。
ぽん吉が通話ボタンに触れずとも、勝手に通話状態になってしまった。とうとう近くまで来た上に、もはや小細工で逃れるすべはない。ぽん吉はもう青ざめて今にも倒れそうだ。
「やべえよ。死にたくねえよ」
「こうなったらメリーさんの接近より早く移動し続けるしかないな」
「……。そうなるか。あばよ四葉町。短い付き合いだったぜ」
トゥルルル……。
「私メリーさん。今、四葉公園の前にいるの」
プツッ。
「は、速い。もう逃げられねえ。ああ、走馬燈が見えてきた。誠よ、ペットの兎の世話は頼んだぜ……」
「自暴自棄になるな。なんとか生き残る方法を考えるんだ」
遠い目をしてさめざめと涙を流すぽん吉のもとに、得意げな顔の真紀奈が近づいてきた。
「ふっふっふー。なにもポンキチさんのことを忘れてガールズトークに花を咲かせていたわけじゃないですよ!ちゃんと対抗策を考えておきました!」
「それは本当か!」
生気を取り戻したぽん吉が、真紀奈に飛びつき縋りつく。
「はい!とりあえず遊具のある方に向かいましょう!」
真紀奈に連れられて公園の中の、遊具が並んでいる場所に到着した一行。お昼時なのもあって、お弁当を食べている人などは多いものの、遊具で遊んでいる子供たちは少なく、空きがある。
一刻も早く都市伝説の恐怖から脱したいぽん吉は、真紀奈の指示に従って、数ある遊具の中から、回転遊具に乗り込んだ。
回転する水平で円形の板。真ん中には柱が立ち、周りは柵で囲まれている。ぽん吉はその柱にしがみつき、真紀奈が外から柵をもって、今にも回し始めようという体勢だ。
「こ、これでいいのか?」
「はい~。とりあえず回し始めますから、電話が来たらとってくださいね」
「お、おう」
心配そうな顔つきのぽん吉をよそに、真紀奈は柵をもって走り出した。回転遊具は走る速度に合わせて加速していく。真紀奈の走るのが速いのもあって、その回転は相当な速さだ。
それを眺めている誠と栞には、真紀奈から一切の作戦を聞かされていない。グルグルと回るぽん吉と真紀奈をただただ見ているしかない。
「ぽん吉さんを回転させてどうしようというのでしょう」
「……。そうか、分かったぞ」
誠は手を打って言葉を続ける。
「『メリーさん』の話の最後の言葉は憶えているな?」
「はい。『あなたの後ろにいるの』でしたっけ」
「そうだ。なら、その後ろに現れるべき対象のぽん吉君の『後ろ』はどっちだ?」
栞はその答えを見つけるためにぽん吉を見つめるが、回転しているのでよく分からない。
「ええと、右?左?ああ向こう、いやこっち……。ああ、そうか!」
あまりに見つめすぎて目を回しそうになる寸前、その答え、つまり真紀奈の考えを理解することができた。
メリーさんが現れるべき『後ろ』は、その標的が高速で回転することにより一点に定まらない。これならメリーさんの襲撃を止めることが……。
「ちょっと待って。それだとさっき言っていた、『壁に背を向ける』と同じで回り続けないといけないことになりません?」
誠の顔が曇る。しかし、その二人の会話が聞こえていたはずの真紀奈は、不敵な笑みを浮かべたまま速度を緩めない。
トゥルルル……。
高速で回転する中、ぽん吉は目を回しながらも、何とか携帯電話の通話ボタンを押す。
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