転生勇者の理想の王国~絶対的な縦社会~

AI異世界小説家

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第1章:理不尽な世界の目覚め

理不尽な世界の目覚め(上)

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その世界「エリュシオン」は、ある意味で極端な思想の人たちを具現化したような、歪んだ王国だった。だがエリュシオンがこの世界で大きく栄えたのもまた事実であった。誰もがその恩恵に預かったわけではなかったが。

空は高く、魔力という恩恵に満ちてはいるが、社会のルールは残酷なまでに単純だ。容姿端麗で強大な権力を持つ「富裕層」の男性貴族がすべての富と女性を独占し、それ以外の男性は「下級層」や「使用人」として家畜同然の労働に従事する。そして女性の地位は、それらよりもさらに低かった。

事の発端は百年前。この世界に転生した一人の女性勇者が、ある禁断の魔法をもたらしたことにある。
彼女は高位神官(ハイ・プリースト)であり、男性を介さずに「女性の子供」を授ける奇跡の術を有していた。それは、女性を「男性の道具」として管理していた特権階級の男たちにとって、自らの支配権を根底から揺るがす宣戦布告に他ならなかった。

「エリュシオンの貴族ども、私たちはエリュシオンから離れて命を繋げる」

その思想に共鳴した女性たちは「異端者」の烙印を押され、王国の外へと逃げ延びた。以来、エリュシオンの貴族たちは、彼女たちを「エリュシオンの歴史に従わない異端者」として扱うことにし、エリュシオン内では彼女たちのことを話すことは禁止され、危険な思想を正すということでエリュシオン貴族たちが武器を取り「異端者狩り」を定期的に行うようになった。

エリュシオンの貴族たちは、自分たちの価値観に従わない者を群れで叩き、再起不能に追い込むハイエナの群れのような社会システムを作り上げていた。

「……おい、起きろ。死んでるのか、エース?」

頭を割るような衝撃と、鼻を突く鉄錆の匂い。
東城絆(とうじょうきずな)が意識を取り戻したとき、最初に見えたのは、抜けるような青空と、自分を見下ろす「超絶イケメン」の顔だった。

(……ここ、どこだ……? 確か、俺は……)

絆の記憶は、連日のサービス残業と徹夜明けの駅のホームで途切れている。過労死――その三文字が脳裏をよぎる。だが、目の前の光景は現実味を帯びていた。

「ちっ、土魔法の石弾をまともに食らって生きてるとはな。運のいい奴だ」

そう吐き捨てたのは、この部隊の隊長であり、貴族の若造であるリオンだった。MMORPGの主人公にでもなれそうな整った顔立ちだが、その瞳には底知れない傲慢さが宿っている。

絆の頭の中に、見知らぬ少年の記憶が濁流のように流れ込んできた。
名前はエース、十六歳。この軍の最下層に位置する「使用人兵」だ。さっきの戦闘で石弾を頭に受け、本来のエースの意識はそこで死に、代わりに現代日本人の「きずな」が入り込んだのだ。

「ぼさっとするな。作戦は終了だ。ほら、今回の収穫を見てみろ」

リオンが顎で示した先には、縄で縛られ、泥にまみれた二人の女性がいた。

一人は、短い髪を逆立て、鋭い眼光でこちらを睨みつける戦士風の女性――ティリー。
もう一人は、ボロボロのローブを纏いながらも、知的な美しさを失っていない魔法使い――クロエ。

彼女たちは、エリュシオンの男たちが最も忌み嫌い、そして執着する「異端者」の生き残りだった。

「エース、お前に初仕事を与えてやる」

リオンが、嗜虐的な笑みを浮かべて絆……いや、エースの肩を叩く。

「その二人の女を、お前の部屋まで連れて行け。尋問して隠れ里の場所を吐かせろ。終わったら、娼館に売り払うか、使えそうになければその場で処刑して構わん。拷問の仕方は自由だぞ。若いお前にはいい経験になるだろう?」

「……えっ?」

エースの喉が、引き攣った音を立てた。
周囲の男たちが下卑た笑い声を上げる。

「よかったなエース! 異端者の女は気が強くて『使い甲斐』があるぞ!」
「殺すなら死体は街の外に捨てておけよ。狼の餌にぴったりだ」

冗談めかして語られるあまりに残酷な言葉。現代日本人としての倫理観が、エースの胃の底から激しい拒絶反応を引き起こした。

(何を言ってるんだ、この人たちは……。女性を捕まえて、拷問して、殺す……? それが当たり前だってのか?)

エースは拳を握りしめた。その時、視界の端に不思議なインターフェースが浮かび上がる。

【固有スキル:無限収納(インフィニティ・ストレージ)】
【固有スキル:料理作成(クッキング)】
【固有スキル:植物鑑定】
【パッシブスキル:超人的戦闘感覚】

(これ……まさか、ネット小説でよく見た「チート能力」ってやつか……?)

呆然とするエースの視線に、捕らえられたティリーとクロエの瞳がぶつかった。
そこにあるのは、純粋な「憎悪」と「絶望」。

「……殺せよ」

ティリーが、ひび割れた声で低く言った。

「あんたたちみたいな『卑怯者共』に屈するくらいなら、今ここで首を跳ねられたほうがマシだわ」

クロエもまた、瞳を冷たく凍らせてエースを射抜く。

その瞬間、エースの中で「きずな」としての心が決まった。
こんな狂った世界に従うつもりはない。俺は、俺のやり方でこの女性たちを守る。

「……分かりました、リオン様。この二人は俺が責任を持って『処理』します」

エースは、あえて感情を殺した声で答えた。何だこの状況は?誰かに説明してほしかったが、そうもいかないだろう。とにかく今は自分が東城絆だとバレることを避けなければならない。

同期の少年レオニスが「おい、一人俺にも分けてくれよ」と耳打ちしてきたが、エースはそれを冷たく振り払い、「これはリオン様の命令だ」と二人の女性を強めに自分の方に引き立てて歩き出した。
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