転生勇者の理想の王国~絶対的な縦社会~

AI異世界小説家

文字の大きさ
2 / 9
第1章:理不尽な世界の目覚め

理不尽な世界の目覚め(下)

しおりを挟む
「この部屋だ。……とりあえず、中に入ってくれ」

エース(絆)が案内したのは、屋敷の端にある薄暗く狭い使用人部屋だった。家具といえばガタついたベッドと机、小さな暖炉がある程度。
だが、連れてこられたティリーとクロエにとっては、そこは「処刑場」か「地獄の入り口」にしか見えていなかった。

第1章:理不尽な世界の目覚め(下)
「……さあ、始めなさいよ。服を脱げって言うの? それとも、まずは手足の指を切り落とすつもり?」

部屋に入るなり、戦士のティリーが低い声で言い放った。縄で縛られた状態でもその威圧感は凄まじく、本来の16歳のエースなら怯えていただろう。
だが、中身は25歳の現代日本人、東城絆だ。彼は深いため息をつくと、彼女たちの縄に手をかけた。

「まずはその縄を解くよ。痛かっただろ」

「は……?」

クロエが呆然とした声を漏らす。
解放された彼女たちは、すぐさまエースから距離を取り、獲物を狙う獣のような目で彼を凝視した。

「……何が狙い? 恩を売って、隠れ里の情報を聞き出そうっていう魂胆かしら」
「悪いけど、そんな安い手に乗るほど私たちは甘くないわよ、クソガキ」

クソガキ。そう、彼女たちの目には、エースは「エリュシオン貴族に媚を売る、ひ弱そうな下働きの少年」にしか映っていない。
しかし、エースは彼女たちの罵倒を無視し、おもむろに虚空から「何か」を取り出し始めた。

【固有スキル:無限収納(インフィニティ・ストレージ)】

何もない空間から、立派な肉、新鮮な野菜、そして見たこともない調律器具が次々と現れる。

「なっ……収納魔法!? しかもその容量……あんた、ただの使用人じゃないの?」

驚愕する二人をよそに、エースは**【料理作成】**スキルを発動させた。
現代日本のブラック企業で培った「時短・効率・味」の追求が、異世界のチート能力と融合する。香ばしい肉の焼ける匂いと、ハーブの香りが狭い部屋に充満した。

「ほら、食えよ。毒なんて入ってない。俺が作ったんだから」

差し出されたのは、エリュシオンの豪華客食すら凌駕する、黄金色のポタージュと肉厚なステーキ。
空腹だった二人の喉が、思わず鳴る。だが、彼女たちは「異端者」としてのプライドを捨ててはいなかった。

「余裕を見せるなんてバカね……死ねっ!!」

食卓についた瞬間、ティリーが隠し持っていた鋭い石の破片でエースの喉元を突いた。同時に、クロエがわずかな魔力を練り、土の拘束魔法を放つ。

(危ない――!)

絆の意識が反応するより早く、彼の「体」が動いた。

転生勇者には危険が身近に迫った時にオートで身を守るスキルがいくつかある

エースの体は、まるでスローモーションを見ているかのようにティリーの手首を掴み、最小限の力で彼女を床に組み伏せた。同時に、クロエが放った魔法の軌道を、ただ「歩く」だけで回避する。

「……えっ?」

ティリーは自分の手首を掴む少年の指先が、鉄万力のようにびくともしないことに戦慄した。
見た目は子供。魔力も感じられない。なのに、動きが「達人」を越えている。

「暴れても無駄だって言ったでしょ。食事を台無しにしたくないんだ」

冷徹なほどに落ち着いた声。エースの瞳には、16歳の少年にはあるまじき「深淵」のような静けさが宿っていた。

その夜。
二人はエースのベッドを占領し(エースは床で寝ると言った)、彼は部屋の隅で毛布に包まった。

深夜。時計の針が重なる頃、クロエとティリーは音もなく立ち上がった。
今度こそ、寝首をかく。さすがに寝ているときまで反応できるはずがない。

二人が手を取り合い、エースの心臓に狙いを定めて飛びかかった瞬間――。

「だから、無駄だって」

寝ていたはずのエースが、目を開けることすらなく二人を腕一本で押さえ込んでいた。
その動きには淀みも、迷いもない。まさに「守護者」としての防衛反応。

「バカな……完全に寝ていたはずよ。どうやって気がついたの!?」

ティリーが驚愕に目を見開く。
エース――絆は、ゆっくりと上体を起こし、困ったように頭をかいた。

「俺、寝つきはいいんだけど、殺気には敏感なんだ。……いい加減、信じてくれよ。俺はあんたたちを殺したくない。というか、この国のやり方に反吐が出てるんだ」

「……何ですって?」

「俺は、俺のやり方でこの世界のことを知っていきたいんだ。……まずは明日、リオンに『二人は処刑した』って嘘をつく。そこから、俺たちでどうするか考えていこうぜ」

16歳の少年の顔をした「今期の転生勇者」は、月明かりの中で不敵に微笑んだ。
ティリーとクロエは、自分たちを制圧するこの不思議な少年の腕の中に、今までに感じたことのない「未知の脅威」と、それ以上の「奇妙な安心感」を感じ始めていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

パパと娘の入れ替わり

廣瀬純七
ファンタジー
父親の健一と中学生の娘の結衣の体が入れ替わる話

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

【完結】俺が信長で、幼馴染が吉乃と濃姫!? ~転生幼馴染トリオ、本能寺フラグ回避して戦国スローライフ目指します

月影 流詩亜
ファンタジー
事故で転生したのは、まさかの織田信長!? しかも、隣にいたはずの可愛い幼馴染(双子)も、なぜか信長の側室「吉乃」と正室「濃姫」に! 史実の本能寺フラグを回避するため、うつけの仮面の下、三人は秘密の同盟を結ぶ。 現代知識と絆を武器に、戦国スローライフを目指すサバイバル開幕!

処理中です...