魔王軍の修繕師(リペアラー)

AI異世界小説家

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第9章:修繕師の「舞台(アリーナ)」

修繕師の「舞台(アリーナ)」

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 平原に、鉄と悲鳴の音が轟いた。  人間側の精鋭『聖騎士軍団』。白銀の鎧を纏った彼らが、正義の名のもとに剣を振るう。対するは、ザガンが「素材」として送り出した合成魔物たち。  かつて人間だった彼らは、理性を奪われ、異形の姿でかつての同胞へと牙を剥く。

「ハハハ! 見ろ、ゴズ。あれこそが究極の皮肉だ。自分たちが守ろうとしていた民に喉笛を食いちぎられる気分はどうかな?」

 後方の高台で、ザガンが優雅に扇子を仰ぐ。隣では、巨漢のオーガー、ゴズが涎を垂らして戦場を凝視していた。

「最高だぜザガン様! 人間同士が、中身が人間だと知らずに殺し合う……! これ以上の見せしめはねえ!」

 だが、彼らは気づいていない。  激戦の中、致命傷を負って倒れるはずの魔物たちの体に、淡い青色の光が走っていることに。

 戦場の隅、工兵部隊の天幕で、俺は【解析眼】を最大出力で維持していた。

「術式、全個体へ定着。――《自動修復(オート・リペア):気絶保護モード》起動」

 俺が彼らに仕込んだのは、強化魔法ではない。**「致命傷を回避し、強制的に仮死状態へ移行させる」**修繕プログラムだ。  魔物たちが倒れるたび、俺の魔力が傷口を瞬時に塞ぎ、魂が消失するのを繋ぎ止める。聖騎士たちは「倒した」と思い込んでいるが、死者は一人も出ていない。

「……さて。あいつらを『隔離』する時間だ」

 戦場が乱戦を極めた頃、ザガンが立ち上がった。

「よし、仕上げだ。頃合いを見計らって『白百合の砦』へ乗り込む。私が砦を陥落させる『英雄』として、教会の連中と握手をするシーンが必要だからな」

「了解ですだ! 人間どもの絶望面、近くで拝ませてもらうぜ!」

 二人は悠々と、砦へと続く石造りの回廊へと歩を進めた。  だが、その回廊は、俺の《迷宮建築(ダンジョン・ビルド)》によって、すでに本来の場所とは切り離されている。

「……おい。何だ、ここは」

 ザガンが立ち止まった。  砦の門をくぐったはずだった。だが、目の前に広がっていたのは、石壁も、叫び声を上げる兵士も、血の匂いもない、異様なほど清潔で広大な「白い空間」だった。

 上下左右、すべてがグリッド線で区切られた無機質な空間。  音一つしない、不気味なほどの静寂。

「砦にしては誰もいないではないか。枢機卿の案内と違うぞ。……ゴズ、どうなっている」

「わ、わからねえです……。さっきまで後ろに道があったはずなのに……!」

 困惑し、周囲を見渡すザガンの耳に、コツ、コツと規則正しい靴音が響いた。

「よく来たな。……歓迎するよ」

 空間の奥から現れたのは、質素な工兵服を着た俺――カイトだ。  そしてその背後には、かつての姿とは比較にならないほどの威圧感を放つ、完全武装の三人の少女が控えていた。

「貴様……管理係か!? なぜここにいる。ここはどこだ、砦はどうした!」

 ザガンが声を荒らげる。俺は冷ややかな目で、黄金の鎧を見つめた。

「『白百合の砦』なら、ここから数キロ先だ。お前たちがくぐったのは門じゃない。俺が即席で構築した空間転移の入り口(トラップ)だよ」

 俺は周囲の白い壁を指差した。

「ここは、お前たちのための**『特別実験場』**だ。ザガン……お前はいつも、命を素材だと言って笑っていたな。だから用意してやった。誰にも邪魔されず、お前が愛する『実験』の対象になれる場所を」

「な……!? 貴様、分を弁えろ! 魔物たちの役に立って大人しくしてれば良いものを、バカなやつだ、ゴズ、その不敬なネズミを叩き潰せ!」

 ザガンの命令に、ゴズが雄叫びを上げて突進してくる。

「ガアアアッ! まとめてミンチにしてやるぜええ!!」

 その巨躯が俺に届く直前。  一筋の桜色の閃光が、ゴズの視界を遮った。

「……汚い手で、カイトさんに触れないで」

 ロゼが液状化した刃で、ゴズの巨大な斧を真っ向から受け止める。  ベルの影が床から伸びてザガンの足を縛り、ルルの翼が風の断頭台を形成した。

「英雄ザガン。そして、残虐なゴズ」

 俺は結晶録音機を掲げ、不敵に笑った。

「お前たちが壊してきたすべての代償を、この『解体ショー』で払ってもらう。さあ、修繕(リペア)の時間の始まりだ」
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