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第11章:曝け出された「将軍と枢機卿の茶番劇」
曝け出された「将軍と枢機卿の茶番劇」
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荒野に、地響きと共に「白」がせり上がった。 退却を始めていた聖騎士軍団と、意識を取り戻し始めた魔物たちのちょうど中心――そこに、広大な石造りの舞台が突如として出現したのだ。
「な、なんだ!? 舞台の上に……敵軍の将軍、ザガンがいるぞ!」 「待て、捕らえられているのか!? あの横にいるのは誰だ!」
聖騎士たちが困惑に揺れる中、空中に巨大な光の膜が投影された。俺が《迷宮建築》の術式を応用して作り上げた、即席の巨大スクリーンだ。 次の瞬間、荒野の隅々まで、一人の男の声が響き渡った。
『――弱い冒険者をたくさん寄越せ。俺の「名声」の餌にするからな』
戦場が凍りついた。紛れもない、英雄ザガンの声だ。 続いて、狡猾そうな老人の声が重なる。
『ほっほっほ。商談成立ですな、将軍閣下。こちらの「不要な新兵」もそちらの戦果として差し上げましょう。いつまでもこの戦争を続けて、お互いうまくやりましょうぞ』
「こ、この声は……聖教会の枢機卿(すうききょう)……様!?」
聖騎士団長の叫びが響く。 音声データは、彼らが裏で結託し、互いの地位と利益のために「八百長戦争」を演出していた事実を冷酷に暴いていく。兵士たちは自分たちが命を懸けていた戦いが、ただの「素材」や「実績」稼ぎのための舞台装置だったことを知ったのだ。
「……まだ信じられない人間の方々には、もう一つ証拠をお見せしましょう」
俺の声が拡声魔法で広がる。俺は空中に手を振った。 《収納魔法》の亜空間から、無数の「ガラクタ」が舞台の上へ、そして戦場へとバラバラに降り注いだ。
それは、錆びた剣、古びたロケットペンダント、色褪せた手紙、そして子供の玩具。
「これは、俺が直した魔物たちが、無意識に、あるいは死に際に握りしめていた遺留品です」
「そ、それは……僕が妹にあげたペンダントだ! どうして魔物がこれを持っているんだ!?」 「こっちは、半年前にいなくなった村の……」
悲鳴のような声が、聖騎士団のあちこちから上がる。俺は淡々と、逃げ場のない真実を告げた。
「ザガンは拉致した人間を禁忌の術で魔物に改造し、兵隊として使い潰していました。あなたがたが今殺そうとしている魔物……その中には、あなたがたが探し続けていた家族や友人が混ざっている」
聖騎士たちは剣を下ろし、震える手で地面に落ちた遺留品を拾い上げた。 気絶から回復した魔物たちも、自分たちがかつて持っていた「思い出」を見つめ、奪われていた記憶の断片に涙を流している。
「……元人間風情が、よくもやってくれたな!! カイトォォォ!!」
拘束を振り払おうとして無様にのたうち回るザガンが、錯乱したように懐を探り、真っ赤な『支配の宝珠』を取り出した。 今度は特定個人への命令ではない。全軍を強制的に操る、ザガンの最後の手札だ。
「言うことを聞けぇぇ! 雑魚ども! 俺を守れ! 人間を殺せ! 魔王軍の兵士たちよ、俺のしもべとなれぇぇぇ!!」
宝珠がどす黒い光を放ち、不快な精神波を撒き散らす。本来なら、知能の低い魔物たちはこれで自我を上書きされ、ただの殺戮兵器に戻るはずだった。 しかし。 俺は動かず、ロゼたちも哀れむような目でザガンを見ていた。 そして――魔王軍の兵士たちもまた、誰一人として動かなかった。
「な、なぜだ……!? なぜ動かん! 私の命令だぞ! 殺せ! 殺し合えッ!!」
ザガンが狂ったように宝珠を叩く。俺は一歩前に出て、静かに告げた。
「無駄ですよ」
俺は指先で、戦場全体を覆っている淡い青色の魔法陣を示した。
「この舞台に上がる前、広域に**《認識阻害解除(デバグ)》**のフィールドを展開しました。ここにいる魔物たちは今、あなたの洗脳から解放され、自分たちが何者で、誰に使い捨てられたのかを完全に理解している」
……一瞬の静寂の後、魔物たちが動いた。 だが、それは人間を襲うためではない。 一匹のオークが、自分の武器を岩に叩きつけてへし折った。
「ふざけやがって……! 俺たちは、あいつのオモチャじゃねえ!!」
怒号が、慟哭が、戦場を包み込む。 その巨大な怒りの奔流に押されるように、ザガンの手の中で『支配の宝珠』が音を立てて砕け散った。砕けた破片は黒い粉となって、風に攫われて消えていく。
それは、ザガンが築き上げた偽りの権威が、修繕師の手によって完全に「解体」された瞬間だった。
「な、なんだ!? 舞台の上に……敵軍の将軍、ザガンがいるぞ!」 「待て、捕らえられているのか!? あの横にいるのは誰だ!」
聖騎士たちが困惑に揺れる中、空中に巨大な光の膜が投影された。俺が《迷宮建築》の術式を応用して作り上げた、即席の巨大スクリーンだ。 次の瞬間、荒野の隅々まで、一人の男の声が響き渡った。
『――弱い冒険者をたくさん寄越せ。俺の「名声」の餌にするからな』
戦場が凍りついた。紛れもない、英雄ザガンの声だ。 続いて、狡猾そうな老人の声が重なる。
『ほっほっほ。商談成立ですな、将軍閣下。こちらの「不要な新兵」もそちらの戦果として差し上げましょう。いつまでもこの戦争を続けて、お互いうまくやりましょうぞ』
「こ、この声は……聖教会の枢機卿(すうききょう)……様!?」
聖騎士団長の叫びが響く。 音声データは、彼らが裏で結託し、互いの地位と利益のために「八百長戦争」を演出していた事実を冷酷に暴いていく。兵士たちは自分たちが命を懸けていた戦いが、ただの「素材」や「実績」稼ぎのための舞台装置だったことを知ったのだ。
「……まだ信じられない人間の方々には、もう一つ証拠をお見せしましょう」
俺の声が拡声魔法で広がる。俺は空中に手を振った。 《収納魔法》の亜空間から、無数の「ガラクタ」が舞台の上へ、そして戦場へとバラバラに降り注いだ。
それは、錆びた剣、古びたロケットペンダント、色褪せた手紙、そして子供の玩具。
「これは、俺が直した魔物たちが、無意識に、あるいは死に際に握りしめていた遺留品です」
「そ、それは……僕が妹にあげたペンダントだ! どうして魔物がこれを持っているんだ!?」 「こっちは、半年前にいなくなった村の……」
悲鳴のような声が、聖騎士団のあちこちから上がる。俺は淡々と、逃げ場のない真実を告げた。
「ザガンは拉致した人間を禁忌の術で魔物に改造し、兵隊として使い潰していました。あなたがたが今殺そうとしている魔物……その中には、あなたがたが探し続けていた家族や友人が混ざっている」
聖騎士たちは剣を下ろし、震える手で地面に落ちた遺留品を拾い上げた。 気絶から回復した魔物たちも、自分たちがかつて持っていた「思い出」を見つめ、奪われていた記憶の断片に涙を流している。
「……元人間風情が、よくもやってくれたな!! カイトォォォ!!」
拘束を振り払おうとして無様にのたうち回るザガンが、錯乱したように懐を探り、真っ赤な『支配の宝珠』を取り出した。 今度は特定個人への命令ではない。全軍を強制的に操る、ザガンの最後の手札だ。
「言うことを聞けぇぇ! 雑魚ども! 俺を守れ! 人間を殺せ! 魔王軍の兵士たちよ、俺のしもべとなれぇぇぇ!!」
宝珠がどす黒い光を放ち、不快な精神波を撒き散らす。本来なら、知能の低い魔物たちはこれで自我を上書きされ、ただの殺戮兵器に戻るはずだった。 しかし。 俺は動かず、ロゼたちも哀れむような目でザガンを見ていた。 そして――魔王軍の兵士たちもまた、誰一人として動かなかった。
「な、なぜだ……!? なぜ動かん! 私の命令だぞ! 殺せ! 殺し合えッ!!」
ザガンが狂ったように宝珠を叩く。俺は一歩前に出て、静かに告げた。
「無駄ですよ」
俺は指先で、戦場全体を覆っている淡い青色の魔法陣を示した。
「この舞台に上がる前、広域に**《認識阻害解除(デバグ)》**のフィールドを展開しました。ここにいる魔物たちは今、あなたの洗脳から解放され、自分たちが何者で、誰に使い捨てられたのかを完全に理解している」
……一瞬の静寂の後、魔物たちが動いた。 だが、それは人間を襲うためではない。 一匹のオークが、自分の武器を岩に叩きつけてへし折った。
「ふざけやがって……! 俺たちは、あいつのオモチャじゃねえ!!」
怒号が、慟哭が、戦場を包み込む。 その巨大な怒りの奔流に押されるように、ザガンの手の中で『支配の宝珠』が音を立てて砕け散った。砕けた破片は黒い粉となって、風に攫われて消えていく。
それは、ザガンが築き上げた偽りの権威が、修繕師の手によって完全に「解体」された瞬間だった。
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