誰かが望んだ楽園の迷い人

AI異世界小説家

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第8章:鮮血の逃亡者と、勇者の憤怒

魔物たちの使命

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8-2
翌日。
セレニティを看病に残し、俺たちは森へ向かった。
作戦はシンプルだ。囮として、女の子だけのパーティの近くで護衛をしつつ、デーモンたちが現れたら即座に殲滅する。
周囲感知スキルを使いながら森に入ってしばらくすると、ボロボロの装備を身に着けた五人組の女性パーティを見つけた。
見習い戦士が三人、見習い魔法使いが二人。顔は泥だらけで、疲れ切っている。

「なあ、君たち」
「な、何よ? ナンパなら他を当たって! 見てわかんないの、今薬草採取で忙しいのよ!」
リーダー格らしい女性、グレースが手に持った麻の袋に入った薬草を見せながら言う。
男=関わるとろくなことがない。それが彼女たちの処世術なのだろう。
「いや、ナンパじゃない。これから薬草採取だろ? 手伝うよ。俺たちもちょうど……」
「はぁ? 意味わかんない。そんな上級装備した男が薬草採取だなんて、嘘よね。私たちにかまっても……え?」
そこまで言って、彼女の視線が俺の後ろにいるエリアとリリスに釘付けになった。
「え……? すっごい! ……なにあの人達、綺麗……」
今日のエリアは、朝シャン後に俺が気合を入れてセットしたシニヨンヘアだ。
後れ毛が色っぽく揺れ、太陽の光を受けてミスリルの鎧と肌が輝いている。
リリスも、妖精のような透明感を放っている。
「あの装備、ミスリル? 嘘でしょ……?」
「こんにちは。私はエリア。こっちはリリス。ごめんねナンパみたいに思っちゃうよね」
エリアが俺の方を見て少し苦い顔をして、すぐに女性たちににっこりと笑って前に出る。俺の初動の会話はまずかったようだ。しかしエリアの笑顔の破壊力に、グレースたちは完全に毒気を抜かれた。
「て、天使……? どこのお嬢様?」
「ふふっ、これ使ってるからかな?」
エリアたちは嬉しそうに、髪から香るシャンプーの匂いを嗅がせたり、俺が作った化粧品の話を始めた。
緊迫した森の中で、そこだけ女子会のような華やかな空気が流れる。
グレースたちは羨望の眼差しでエリアたちを見つめ、少しずつ警戒を解いていった。
その時だった。
「――来るぞ!!」
俺の索敵スキルが、強烈な殺気を捉えた。
上空から、空間を裂いて現れる黒い影。
「グギャギャギャ!」
茂みから飛び出してきたのは、十体以上のデーモン達だった。
昨日ミアたちを襲った連中だ。やつらはどいつもこいつも顔や体に焼けただれた跡がある。
俺が思っているよりもこいつらは何らかの制約があって襲ってきているのかも知れないとその時思った。
「わあっ!? なんなの、化け物!」
「キャアア! む、無理よ! あんなの勝てない!」
グレースたちが悲鳴を上げて腰を抜かす。

絶望に染まる彼女たちの前に、エリアとリリスが風のように躍り出た。
「下がってて、グレース! ここからは私たちの番よ!」
エリアがミスリルの剣を抜く。
刀身がエリアの魔力を感知し、青白い光を帯びて唸りを上げる。
「風よ、刃となりて敵を切り刻め! 『ストーム・エンチャント』!」
「え……魔法剣!? 戦士なのに魔法が使えるの!?ということは魔法剣士なの?」
グレースが目を見開く。
常識外れの光景。だが、驚くのはまだ早い。
「『闘志高揚(ブレイブ)』、『勇者の加護(シールド)』」
俺の補助魔法を受けたエリアは、ガーゴイルの鉤爪攻撃をものともせずに前に出る。
「はぁぁぁっ!!」
真空の刃を纏った剣が一閃されると、先頭にいたレッサーデーモンの首が、抵抗なく宙を舞った。
鮮血すら置き去りにする神速の斬撃。
「大地よ、我が意に従い巨人を成せ! 『サモン・ストーンゴーレム』!」
ドゴォォォン!!
俺は続けて魔法陣を展開させ、3メートルの岩の巨人を召喚。群がるレッサーデーモンをボウリングのピンのように吹き飛ばした。
「リリス、右翼のガーゴイルを頼む!」
「うん! ……闇よ、深淵より来たりて敵を穿て……『シャドー・ランス』!」
リリスの杖から放たれた無数の漆黒の槍が、自動追尾ミサイルのように空を舞い、ガーゴイルたちの心臓を次々と貫いていく。
「グギャッ……!?」
悲鳴を上げる間もなく、ガーゴイルたちは黒い霧となって消滅していく。
「すごい……魔法剣に、召喚魔法、暗黒魔法……? 本当に人間なの……?」
グレースたちが呆然と呟く中、俺は顔の焼けたガーゴイルの前に立ちはだかった。
奴は恐怖に顔を歪め、逃げようと背を向けた。
「逃がすかよ」
俺は『無限収納』から自作の武器――魔動ライフルを取り出し、照準を合わせた。
圧縮された魔力弾が、音速を超えて放たれる。
ドォォン!!
ガーゴイルの頭部が吹き飛び、その体は塵となって消えた。
戦闘終了まで、わずか三分。
「……信じられない。私たち、助かったの?」
静寂が戻った森で、グレースが震える足で立ち上がり、エリアに歩み寄った。
その瞳には、恐怖ではなく、圧倒的な「憧れ」が宿っていた。
「あなたたち、何者なの? こんな強い女性冒険者、聞いたことないわ……」
「私たちは『ブレイブ・ハート』。シンジが、私たちの呪いを解いてくれたの」
エリアが誇らしげに俺の横に並ぶ。
グレースたちは俺を、まるで伝説の勇者を見るような、そして少し熱っぽい瞳で見つめてきた。
「ありがとう……助けてくれて」
「当然のことをしただけさ」
その後、ギルドへ戻り報告を済ませると、俺たちは市場で大量の食材を買い込み、意気揚々とクリエイト・ハウスへ帰還した。
今日の夕食は、勝利と快復を祝しての特製焼肉パーティーだ。
リビングでは、デイジーたちも起き上がれるようになっていた。
鉄板の上でジュージューと焼けるフォレストボアの肉。焦げた醤油ダレの香ばしい匂いが、部屋中に充満する。
「さあ、みんなたくさん食べてくれ。体力つけないとな」
「いただきまーす!」
八人の美女に囲まれての食事。

自作の焼肉のタレをつけた肉を口に入れた瞬間、ミアたちが目を見開いて固まった。
「んんっ!? なにこれ、美味しいっ!!」
「お肉が口の中で溶けた……!?」
「このタレ、凄すぎる……ご飯が止まらないわ!」
全員が大満足の焼肉パーティー。
湯気と笑い声に包まれた空間で、俺はふと窓の外を見た。
何らかの脅威はまだ去っていない。あのガーゴイル達の火傷の跡が示す「何か」は、まだ闇の中に潜んでいる。
だが、今ここにある温もりだけは、何があっても守り抜く。
俺の皿に甲斐甲斐しく肉を乗せてくれるセレニティと、嫉妬してさらに大きな肉を乗せてくるエリアを見ながら、俺はそう心に誓った。
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