それでも【運び屋】は剣を握る~ハズレ職を手に入れてしまった俺達だけど、努力と絆で最強パーティーへと成り上がる!~

一ノ瀬つむぎ

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第一章 その魔女はコーンスープが苦手

使いどころに困る贈り物。それと作戦

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「お兄さん、でしたか……」

 赤いほうの瓶を飲むと、すっかり元の体調に戻った。
 しかしこのレントという男、ラトナの兄だったとは……。全然似てねぇ。

「いやぁ、嘘を暴こうと試したら、まさか甘酸っぱい告白を聞くことになるとはね。あの薬、自分への嘘も暴くから」
「あの、忘れてください」

 本当に、あれは俺の本心だったのか? 俺が幸せにするとか、相当恥ずかしいこと言ってたが……。

「ラトナって、魔女だからさ。力を利用しようとする奴等って結構いるんだよ。もしかしたら君もそうなんじゃないかって思っちゃったけど、違った。君になら任せられそうだよ」
「まかせる?」

 先ほどまでとは打って変わって柔らかい雰囲気を纏い始めたレント。二杯目となったグラスを傾けると俺をまっすぐ見て言う。

「うん、魔女のパートナー。君なら任せられるよ」
「そ、それって……!?」
 付き合うってことですか!? とは出てこなかった。
「ほら、俺って家族だからさ。どれだけラトナを大切に思ってても、そういう関係にはなれないし。それに……」

 彼はそう言って左手につけた腕輪を見せてくる。金と翡翠でできた華奢な腕輪は、たしか遠方のエルフの国に伝わる婚約の腕輪だったはずだ。地理には疎い俺だが、物語で見たことはあった。

「結婚してるんですね」
「うん。今度子供も生まれるんだよ」

 君も見に来るかい?と笑う彼にやはりイケメンはうらやましいと思ってしまうが、彼はそんな内心を鋭く見抜いたのか、からかうような笑顔を見せた。

「君もそうなるかもしれないんだよ?」
「なっ!?あっちは俺のことなんて……」

 そういう目で見てない。そう言おうとするが、彼の手がそれを遮る。

「そんなことはないと思うよ?ラトナはよっぽど好きな相手にじゃないと、空竜機に乗せてくれないからね」
「そう、なんですか?」
「うん。俺も何回かお願いしてようやく乗れたんだから。あとは、君次第だと思うな」

 それだけ言うと、彼は席を立って会計を済ませてしまう。

 店の出口で振り返って、彼はこちらへ手を振った。

「じゃあまたね、ハル君。次会うときは嬉しい報告があると期待してるよ」
「あれ?名前言いましたっけ?」
「いいや。ラトナから呆れるほど聞いたからね」
「そうですか……」

 あいつ、俺のこと話してるのか……。

「とにかく、今日はいろいろごめんね?これ、お詫び」
「なんです?これ」

 渡されたのは体に悪そうな色の薬液が入ったアンプル。
 その不気味さに指先でつまみながらそう聞くと、彼は茶目っ気たっぷりの顔で言った。

「精力剤。じゃあねっ!」
「お、おい!?」

 いつ使えって言うんだこんなもの……!!

 ★

「今日も頑張ろうね」

 なんて言って笑うラトナだが、俺は彼女の姿を直視できない。
 だってそうだろ。昨日色々勝手に口が動いてくれたおかげでわかったんだが、俺はこいつのことが好きかもしれないのだ。
 よく考えたらこれまでの人生でちゃんと喋ったことのある女性なんてほとんどいなかった。だから、好きってなんだとか、正直分からない。
 だけど、ラトナはちょっと特別に感じたんだ。

「ああ。頑張ろう……」

 それは自分に向けての言葉でもあった。この気持ちに整理をつけようと、そんな意味を込めた言葉だっ0た。

 ★

「やっぱり来てくれたね」

 その日の帰りに図書館に寄ってエクスの元を尋ねると、彼は驚く様子もなく俺を迎えた。

「まるで来るって知ってたみたいだな」
「そりゃあ、青春してる顔してたからね。自覚はまるでなかったみたいだけど」

 エクスには、全てわかっていたようだ。当事者の俺ですら知らなかったのに……。

「でも、今は違うみたいだね。覚悟を決めたって感じがするよ」

 そう言ってこちらを眺めるエクスに、俺は強く頷く。

「おう。覚悟ならばっちりだ。まあ、アドバイスは必要なんだけどな」
「そっかそっか。で、どこまで進んだのかな?」

 そこからは、村にいたときに悪ガキたちがしてたコイバナ的な流れだった。
 どんな話をしたとか、どこに行ったとか……。

「うん……。あと一個、必要かな」

 話し終えると、エクスは紅茶を嗜みながらそんなことを言う。

「一個。それはなんだ?」
「例えば告白するとしてさ、ムードって大事じゃないか。いくら仲が良くても「おはよ。付き合おう」ってはならないでしょ?だから、告白にいたるまでのロマンチックなイベントが一個必要なんだよ」

 ああ、なるほど。と納得してしまう。彼の経験に元ずく説得力もそうだが、俺が読んでいた物語も、告白シーンの前には大きなイベントがあったものだ。

「でも、ラトナを祭りとかには連れていけないぞ?」 

 うっかり会場を滅ぼしかねない。
 しかしそんな俺の杞憂は意味をなさなかったようで。

「大丈夫。祭りなんかよりよっぽど安全で大規模なイベントが控えてるじゃん」

 彼はそう言って、壁にかけてあるカレンダーを指さす。

「四日後、この国は【巡回期】に入る。白竜の元で立てた誓いは破られないって、ハル君も聞いたことあるだろう?」
「ああ……。確かに、これ以上ない絶好の機会だな」

 巡回期。数年に一回めぐってくるこの時期は、この世界に生きるすべての人々にとって重要な意味を持つ。
 世界を見守る神々の目だと噂される【白竜】が、ゆっくりと空を巡回して、世界に異常がないかを見守るのだ。

 この日は結婚式を上げる新婚カップルや、店を立ち上げる商人。大博打に出るギャンブラー。とにかく一歩踏み出す者が多い。
 それだけめでたい日だし、何かと沸き立つ日なのだ。

 ダンジョンが活性化したり、魔物がおとなしくなったりと、魔力的に影響のある時期でもある。

「その日に、君がどこまで進むかは分からない。けれど、その日はこれ以上ない絶好の機会だと思うよ」

 そこに否定要素は一切なく、ただただ納得するばかり。俺は力強く拳を握った。

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